30年前に堺屋太一氏は、ベビーブーマー世代を称して、「団塊の世代」と命名しました。語源は、鉱物学用語、ノジュール(nodule)です。
ノジュール(団塊)とは、堆積物中の珪酸や炭酸カルシウムなどが固まってできた硬くて丸い塊です。球を割ると、その中心にアンモナイトや三葉虫などの化石が入っていることがあります。
「50代からの『自分ライフ』を格好よく!」をキャッチフレーズとする本誌も、夢と希望と発見をたっぷり詰め込んでお届けてくれるようです。
「沖縄に来るとね、脳と心の空きの容量が一気に増加する感じがするんだよね。パソコンで例えれば、ハードディスクの空きが増えて、さくさく動く感じ」
Nさん(52歳)はそう語りながら泡盛をうまそうにあおった。泡盛は石垣島産の『白百合』、お店は那覇市久米にある居酒屋。いつもの酒にいつもの店である。
東京出身のNさんが初めて沖縄にやってきたのは復帰直後の75年。以来、31年間通い続け、その沖縄に対する思いは近年になってますます熱を帯びている。昨年の訪沖数はなんと年間20数回を数えるまでになった。すべてプライベートである。
「目的は脱力感を味わうため。沖縄の人たちの中にいると、自分自身を取り繕っている部分がいっぺんに削ぎ落とされるんだよね。この前もね、スナックに入ったら、オバァママがちょっと待っててと言って、客をほったらかしにして、店を出ちゃったの。で、戻ってきたら、スーパーの惣菜売り場で売ってる鯖味噌煮をビニールをめくってトレイのまま出すんだよね。まったく取り繕うなんてことしない。ほれ食べなさいだって。素のまんまなの」
一度の滞在日数は平均2泊3日だが、沖縄に行きたくなって、いてもたってもいられず日帰りしたこともある。
Nさんは観光はしない。滞在中は行きつけとなった店を巡回することだけを繰り返している。沖縄にくるたびに一夜のハシゴ酒は3軒以上は続く。帰京する前日は深夜までとことん飲む。素面で沖縄を離れるのがつらいから、酒が残るくらいまで飲むのががちょうどいいらしい。
Kさんが沖縄に通うのは2ヵ月に一度。昼間は那覇市内を散歩し、夜は知り合いの店に顔を出すだけ。
「いつもひとり旅ですが、必ず遊んでくれる友人がいるから全然寂しくありません。いまじゃソウルバーで朝まで話し込む仲になりました。地元では考えられないことを沖縄でやってますね(笑)」
2人にとって沖縄は糧であり、第二の故郷という言葉では足りないほどのかけがえのない土地になっている。
「何度通っても飽きない。沖縄は自分を楽チンにしてくれる脱力源なんだよ」
と、何杯目かの泡盛をあおるNさん。通ったからこそ得られたものを大切に育てているように思えた。