年金保険の相続・贈与の優遇廃止へ
 2010年の度の税制大綱が保険業界に波紋を広げている。成長分野の年金保険で、相続税・贈与税の優遇措置の廃止が盛り込まれていたからだ。

 「話しが違うじゃないか」と栃木県在住の歯科医は、保険代理店に説明を求めた。歯科医師は、運用期間20年以上の長期の年金保険に加入している。自分が契約途中に亡くなれば、子供に毎年一定額のお金が支払われ、総額1億円を相続できるようにしていた。

 年金保険は支払い期間に応じて相続税や贈与税が3割〜8割減額される措置がある。相続税は最小で1200万程度で済むはずだった。だが、税制が変わると相続税は5000万円程度に跳ね上がるかもしれないという。

 現在は、年金の受け取り期間に応じて、課税対象額が減額される仕組みがある。例えば1億円を25年間かけて年400万円ずつ受け取とる年金方式にすると、相続税の課税対象は4000万円。残りの6000万円には相続税がかからない。

 「年金保険を使えば、相続税を減らせますよ」と年金保険の主力販路として成長してきた銀行窓口では、富裕層にこのメリットを強調して、保険金1億円以上の大口契約を獲得してきた。

 銀行としては、優遇税制の廃止の抜け道として、今年3月末までに加入している年金保険を1年以内にお金の支払いが始まる短期保険に切り替え、子供を受け取り人に指定し、生前贈与に切り替える手法だ。

 途中で契約を変更するため損をする場合もあるが、優遇措置が廃止されるのは来年4月以降なので、税は従来通り減免されるという。

 だが、頭がいたいのが、生保が契約者に契約の切り替えを強く勧めると、監督当局から「課税逃れを促した」との指摘を受けかねない。しかし、そのままにしておくと、大クレームになりかねない。

 生保の多くは、制度変更が正式に決まってから、既契約者への説明を始める方針だ。