年金もらい忘れご用心 時効で権利消滅も

 公的な年金をもらう権利があるのにもらっていない。そんな人が意外に多い。「60歳を過ぎても働いているので年金はもらえないと思い込んでいた」など、原因は様々だが、共通するのは年金についての知識不足や誤解がある点だ。公的年金のもらい忘れを防ぐ対策を探った。

 埼玉県に住む坂上信夫さん(仮名、61)は1949年2月生まれ。60歳になった2009年2月に勤めていた会社を定年退職し、仲間と会社を設立した。

 坂上さんのもとには08年末に、年金の受給手続きをするための書類である請求書(当時の名称は裁定請求書、現在は年金請求書)が当時の社会保険庁(現・日本年金機構)から送付されていた。60歳になれば年金をもらう権利(受給権)が確定し、年金をもらい始められるからだ。

 ところが、坂上さんは年金を請求しなかった。「60歳以降も給料をもらっている場合には老齢年金はもらえない」と思い込んでいたためだ。だが、1月に訪れた金融機関の年金相談会で社会保険労務士から「月5万円の年金がもらえる」と指摘され、驚いた。さっそく請求し、もらい忘れていた年金1年分(60万円)は4月にも支給される。

 公的年金は本人が請求をしないともらえないのが原則だ。日本年金機構は年金のもらい忘れを防ぐため、公的な老齢年金をもらう上で加入しなければならない期間(受給資格期間、原則25年以上)をクリアしている60歳または65歳の人に年金加入記録を印字した年金請求書を誕生月の3カ月前に送付している。

 年金の請求書やはがきは06年度から08年度までの3年間で合計約695万人に送付したが、実際に新たに請求を済ませたのは同じ期間に約625万人。この差約70万人がただちに請求漏れとはいえないが、坂上さんのように誤解などから請求していない人は数十万人規模でいるとみられる。

 実際、年金相談の現場では「8〜10人に1人は請求漏れがみつかる」(社労士の鈴木ひろみさん)。日本年金機構が送付した請求書を使って実際に請求してくる人は「7割前後にとどまる」(首都圏の複数の年金事務所)という。

 年金事務所、年金相談センターや社労士らへの取材などをもとに、表Aに老齢年金の請求漏れ、もらい忘れの主な原因をまとめた。社労士の河内よしいさんは「年金についての知識不足、誤解がもらい忘れの原因の大半」という。

 親の年金ついても確認してみてください。勿論自分の年金についてもチェックしてください。