親の見守りサービス多彩
 離れて暮らす親の無事を確認するためのサービスが多彩になってきた。湯沸かしポットや携帯電話などの電機製品を確認ツールに使うサービスや、住宅そのもの、住宅機器に住人の動きを感知する機能を持たせる新商品も登場。自治体やガス会社が水道やガスの使用状況を手がかりにする取り組みも始まった。

 象印マホービンの「みまもりほっとライン」は、「高齢者はお茶が好き」という日本風の生活習慣に着目した。お湯を沸かす電気ポットを、インターネットにつなぎ、お年寄りがポットを使うと、離れて暮らす家族の携帯電話に電子メールで知らせる仕組みだ。お茶を飲むという行為を無事の目印にした発想が光る。

 通信機を内蔵したポットを置くだけだから、工事は不要。ほぼ全国で使える。ポットはレンタルで提供される。iポット1台につき、契約料は5250円、利用料は月額3150円。

 湯沸かし同様、調理や入浴などに欠かせない水の使用量も、生活パターンをうかがい知るデータになりうる。東京都水道局は3月から1年間、水道の利用状況を手がかりに、利用者の無事を確認する「みまもりサービス」の実地試験を始める。水道メーターから使用量を把握して、PHSで水道局に知らせ、水道局から利用者の携帯電話やパソコンにメールで利用量の動きを報告する。

 ガスを目安にするのが、NTTグループの自動検針サービス会社、NTTテレコンの「あんしんテレちゃん」。ガス使用量をメールで報告するサービスだ。ガスの使用を、炊事や入浴などの生活が普段通り営まれているかどうかの確認ツールに用いている。電話回線ガスメーターに専用装置を接続して使う。
 

 住人の挙動を、もっと細かく感知する仕組みも現れた。松下電工ロケーションシステムズ(旧ナイス・ロケーションシステムズ)の「みまもりネット」サービスはリビングやトイレ、寝室などに置いた赤外線センサーで高齢者の動きをつかむ。住人が室内で動くと、センサーが感知。普段と比べた動きの量をチェックする。

 住人が体調を崩すと、室内での移動頻度が下がり、いつもと様子が違うことが読み取れる。移動量データは契約者の携帯電話やパソコンにメールで届く。メール文にはセンサーが感知した部屋名と時間が書き込まれているので、住人の動きがリアルに分かる。月額料金は、最新の様子を問い合わせできる機能が付いていて、毎日2回の定時メールが届く「きっちりみまもりプラン」が3990円。最初に支払う契約料が別に5250円かかる。

 いつもと異なる行動パターンを感知したら、メールで通報してくれるのが、NTTマーケティングアクトの「ACTOSみまもりeye」サービス。室内の各エリアに取り付けたセンサーが住人の動きを感知して、パソコンや携帯電話にメールで知らせる機能のほか、異常を自動的に判断して知らせる機能もある。例えば、起床時間が過ぎても起きてこない、長い時間、トイレに入ったまま出ない、浴室に入ったが、脱衣所へ戻る気配がない、いつもの散歩時間が過ぎても帰ってきた様子がないといったケースを「異常」と判断して知らせてくれる。

 パラマウントベッドの軽度介護者向け「楽匠〜自立促進シリーズ」は、ベッドの利用状況を確認できる通信サービスを備えている。ベッドが使われているかどうかを、離れた場所から確認できる。

携帯電話を持つ高齢者が増える中、携帯電話を利用した遠隔見守りサービスもある。NTTドコモの通話専用携帯電話「らくらくホン シンプル」は、本体を充電器に置くと、あらかじめ登録済みのユーザーの携帯電話宛てに自動的にメールを送る機能を備えた。

 住宅そのものに見守り機能を持たせる試みも始まっている。東京都の「あんしん入居制度」は見守りサービスを用意している。高齢者が住む室内に検知器を置いて、住人の動きが20時間以上も感じられない場合には自動的にセンターに通報が届き、センターから電話や訪問で安否を確認する。

 山梨県早川町はIP(インターネット・プロトコル)テレビ電話システムを使った「顔の見える」住民サービスの実験を、3月末までの期間限定で実施中だ。高齢者や児童のいる家庭などにテレビ電話を導入。町役場や福祉施設などと結んだ。1人暮らしの高齢者の見守りや安否確認、健康相談にも役立てているという。 テレビ電話を使った見守りサービスは、岐阜県郡上市も2006年11月から実施している。

 見守りサービスの多くは、異常や変化を知らせてくれるが、どんな状況下までは即座に理解しにくい。その点、映像は頼りになる。ロボット関連メーカー、テムザックの留守番ロボ「ROBORIOR(ロボリア)」(29万4000円)は携帯電話のテレビ電話機能を使って、リアルタイムの動画と音声を伝えてくれる。室内の様子が映像でつかめるので、事態を把握しやすい。

 気ままに海外旅行を楽しんだり、移住、ロングステイを計画する際、心配になるのが、「家族に万一の事態が起きはしないか」という心配だ。せっかく時間的なゆとりができても、気がかりがあっては家を離れにくい。遠出をしないにしても、親と離れて暮らす世帯にとって、日々の無事を確認するツールは「安心料」を支払っても手に入れる価値があるだろう。機器やサービスが増えているだけに、自分たちが求める機能を見極めて選びたい。

 合わせて食事を宅配してくれる業者も見守りサービスを行っている。見守りサービスの費用は、250前後だが宅配を頼む場合は、弁当550円前後にサービスが含まれる場合が多い。見守りサービスが多彩となり消費者には大変有り難い。ライフスタイルに合わせて賢く選択したいですね。