「60歳定年延長と高齢者雇用」
平成16年6月に成立した改正高齢者雇用安定法で、現在60歳と定められている定年を、65歳まで段階的に延長することが決まっています。厚生年金の支給開始年齢が65歳のため、それまでの空白期間を埋めるものです。
しかし企業側にとって定年延長するということは、賃金・退職金・役職などのすべてに影響します。企業側の対応が気になるところです。
高年齢者の雇用確保は以下のスケジュールで段階的に定められています。
法律では現在の60歳定年が、平成18年4月1日以降62歳となり、それから段階的に65歳まで延長されます。企業としては、法律どおりのスケジュールで延長するのかを検討しなければなりません。
厚生労働省の平成16年雇用管理調査によると、 全体の9割が60歳定年である現在、この数年で高齢社員の働き方の見直し方をつきつけられた企業は、どのように考えるのでしょうか。
そして、我々はどう考えれば良いのでしょうか?
改正高齢者雇用安定法では、雇用の確保として3つの方法が限定されています。これらの方法の違いは何か見てみましょう。
どのような措置で対応するのかも検討しなければなりません。具体的には、以下の3つの方法のいずれかを講じる必要があります。
1.定年を65歳まで引き上げる
65歳まで引き上げるとすれば、その間の賃金額、退職金の基礎となる勤続年数への反映などに影響します。この方法で対応を検討する場合は、今後該当する労働者の人数や年齢などでシミュレーションが必要になるでしょう。
役職やそれに連動する権限も、年齢により増えていく仕組みでは組織としての秩序が保てませんので、再検討が必要になります
2.60歳定年後、65歳までの継続雇用制度を導入
高年齢労働者が希望したら、定年後も引き続いて雇用する制度のことです。定年延長と異なるのは、対象者を全員でなく、希望者や一定条件をクリアする労働者にすることが可能な点です。
条件を定める場合は労使協定が必要ですが、労使協定で協議が調わない場合、平成18年4月1日から大企業は3年間、中小企業は5年間、就業規則に定めることで導入できます。
3.定年制の廃止
定年制を廃止します。定年がないということは、死亡・労働者からの退職・解雇など会社都合退職以外の退職はありません。自社の退職率や流動化を踏まえたうえで検討することになります。
また、年々増加する賃金形態であれば再検討しなければなりませんし、退職金制度があれば、「退職金の意味」も含めた位置づけを整理する必要があるでしょう。
もちろん、役職や権限についても整理しなくてはなりません。
企業は高齢者を活用するために、何をすればよいのか。法律で決まってしまったから、という理由ではないアプローチ
独立行政法人 労働政策研究・研修機構の「中高年齢者の活躍の場についての将来展望」では、加齢と職業能力の関係について、以下のような考察を行っています。
65歳以上まで働けるとした事業所の割合は全体の77.3%。ちなみに「働ける」という定義は、加齢に伴う職種への影響を以下のように考える企業のこと。
●年齢とともに能力が上がる
●初めは上がるがあるときから水平になる
●ある年齢以降は能力が低下するが、65歳までは何らかの配慮で働ける
また、働けるための配慮として以下の内容が聞かれています。
○仕事の量を調整する
○職場内での仕事の分担を調整する
○勤務時間を調整する
○労働時間を短縮する
○休暇をとり易くする
○教育、助言をする
○作業環境を改善する
高齢者を活用するためには、働きやすい環境を整備しなければならず、それは仕事のやり方とも密接な関係を持っています。
現在は、少子化により若者の労働力も量的に減少しています。また働き方も多種多様になり、フリーターなどの流動的な雇用に流れていることも指摘されています。若くて優秀な人材の獲得は、熾烈な競争となり、おのずとコストも嵩んでくるでしょう。
そのような状況では、これまで高度成長時代を通して会社に一貫して在籍していた高齢者の労働力を活かそうとする方向は自然な流れと言えます。ただ、高齢者自身もゆとりある会社生活を望んでいますし、これまでの労働環境では満足度が低いのではないでしょうか。満足度が低ければ、仕事の質にも影響し、結果として高齢者に拒否される場合も多くなると思います。
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