保険料を年金から天引き

　第１に、保険料です。厚生労働省の試算では年金収入２１０万円のひとり暮らしで、月平均６、２００円（年７４、４００円）。年収が多ければもっと高くなります。県ごとに差があり、福岡県では２割増しの試算も。高齢者のひとり暮らし世帯では年収２００万円以下が７割、２５０万円以下が８割。女性ではいっそう低く、保険料が生活を破壊しかねません。

　さらに月１５、０００円以上の年金受給者は、保険料が天引きされます。

　保険料が月６、２００円なら、介護保険料とあわせて１０，０００円以上引かれることになります。
　これまで保険料負担がなかった扶養家族にも新たに保険料が掛かります。世帯ごとだった保険料徴収が個人ごとへと変わるからです。後期高齢者１、３００万人のうち、扶養家族は２００万人です。年金受給者（年収７９万円）で子ども（年収３９０万円、政府管掌健康保険）の扶養家族だと、月平均３、１００円（最初の二年間は１，５００円）という試算です。
　夫・７６歳で健康保険本人、妻は７４歳で扶養家族のケースではどうなるか。夫は後期高齢者医療制度に加入。すると７５歳未満の妻は国保に強制加入となり、新たに保険料が徴収されます。
　保険料は市町村が徴収し、都道府県ごとにつくる「広域連合」に集められます。広域連合は一般財源がなく、自治体の一般財源を減免にあてることも禁止。保険財政が赤字になると国の交付金が減らされる場合も。

　広域連合の会議は半年に１回程度で、保険料値下げなどの住民の声が伝わらないことも危惧されます。
　今回の制度導入にあわせ、さらにとんでもないことが。６５歳〜７４歳の年金生活者も国保料が年金から天引きに。７０歳〜７４歳の患者負担が１割から２割、「現役並み所得者」は３割になります。

厚労省は診療報酬の「包括払い」で高齢者の医療を差別し、制限することを検討しています。診療報酬とは病院や診療所などでおこなう医療に対する医療保険上の支払い額。

　「何をやっても同じ額」というのが包括払いで、病院や診療所から見れば検査、処置などをやればやるほど赤字になります。
　深刻なのは長期の治療が必要な慢性疾患です。高齢者に多く、「包括払い」になれば病院から敬遠されかねません。とくに入院はいまでも病院経営は赤字。高齢患者の入院はますます困難になります。
　

　２００５年、「終末期の適切な評価」とは何かと聞かれて厚労省の医療課長は「家で死ねっていうこと」「病院に連れてくるな」と語っています。

　入院患者を追い出せば、医療費は安くすむはずだという考えが現れています。
　将来は人工透析や、糖尿病のインシュリン注射などが制限される可能性も。
　全国腎臓病患者協議会は、高齢者の透析の受け入れ先がなくなり、透析医療が危機に陥るのでないかと懸念を強めています。透析患者にとって透析は命綱です。
　年齢で医療に差別を持ち込む制度は、世界にも例がありません。

保険証の取り上げも

　国保では７０歳以上には禁止されてきた資格証明書が発行されるようになります。１年間保険料を滞納すれば、資格書や短期保険証に。しかし、わずかな年金から保険料を払うことはたいへんです。

　国民年金は４０年間おさめ続けた人でも月６６，０００円にしかなりません。受給額は平均で４万円台。年金保険料の支払いが受給資格が発生する２５年間に及ばず無年金、という人も６０万人から７０万人もいるといわれています。
　資格証明書を発行されると、保険が効かなくなり、いったん全額自費で払う必要があります。

　病気で医療機関にかかる医療費がかかって保険料が払えない。そして資格書を出されてさらに医療が遠のくという悪循環を生みます。
　
　さらに国保組合・健保組合に健診が義務づけられる一方、自治体の基本健診はなくなり、７５歳以上は健診からはずされる予定です。後期高齢者には健診はムダだという考えです。