親と子世帯「近居」に注目

 最近は、2世帯同居という暮らし方から、近居という暮らし方が注目を集めている。近居は、親と子、兄弟姉妹の家族の家が、同じ町内、同じ市内になど、それぞれの家族が楽に行き来できる距離に暮らす住まい方です。

 なかでも30分から1時間程度で行き来ができる場所で暮らす家族が増えているようです。「スープの冷めない距離」といいますが、これは、親と子がつかず離れずのほどよい距離で暮らすことをたとえています。

 近居は、同居や隣居と違い、各々の間に少し距離があるので、それぞれの家族が自立して暮らしながら、協力が必要な時には助け合うことができるという「自立と協力」の両方をもつ住まい方といえます。

 ふだんはそれぞれの家族の生活を自分たちだけで営み、万一の時は、頼れる家族が近くにいるという安心感があります。日常的に互いの顔が見えるわけではありませんが、本当に困ったとき、緊急に支援が必要になったときには、安心して助けや協力を頼むことができます。

 また、親にとっても気軽に子や孫の顔を見ることができる距離。それほど近くはないけど、気軽に行ける距離がほどよい関係につながります。それぞれの家族の独立心や自立心を保ちながら、心のつながりをもって支え合う、「ゆるやかな関係の大家族」と呼べるような「家族のかたち」です。

 そして、共働きの子夫婦の場合は、近くに住む親世帯に保育園へのお迎えを頼んでいたりするようだ。親としては、体力的には大変だが子世帯を支援する形が整いつつあるようです。

 親の介護も近居が理想的かもしれないですね。野村総合研究所が「東京都内の子世帯(既婚)とその親世帯の居住距離」を調査した結果、近居率(片道1時間以内)は、10年間で28%(1997年)から41%(2006年)へ増えている。

 支え合う内容も、孫の面倒を見るといったことだけだなく、外食や買い物代を親世帯が払うなどの経済的な支援も見られる。専門家は、「生活が緩やかにつながり、支え合うの近居。親子の世帯は別々ではあるが、実際には『見えない大家族』のような役割を果たしているのではないかと」指摘している。