自宅を終の棲家にする
 住み慣れた自宅を、終の棲家(ついのすみか)にしたいという。そんな希望を持つ人は多い。しかし、一人暮らしであれば家にこもりがちになることもある。

 介護が必要になった時などに、安心して暮らせるかどうかも不安だ。どうすれば豊かな老いを迎えられるか、自宅にこだわり、試行錯誤を続ける人たちがいる。

 自宅を交流拠点として、自宅の空き部屋を提供して、地域のたまり場となっている、山本さん(82)の家は月に一回「おばあちゃんきたよ」と皆が集まってくる。

 懐メロを歌ったり健康チェックをしたりとテーマは様々、未就学児から90代の高齢者がテーブルを囲み、20畳の程の空間がにぎやかな話し声で満たされるという。

 山本さんは、7年前に夫を亡くしてから一人暮らしをで、娘も2人も遠方に住む。築50年の自宅は何部屋も空いていてもったいないと思っていたところに、市民団体が地域交流に使える空き家を探していると聞き、すぐに手をあげたそうだ。

 挨拶程度だった近所の住民とも、「たまり場」を通じてすっかり仲良しになった。「古い家だけど思い出たっぷり。やはり施設よりここに居続けたい」そんな山本さんにとって困った時に呼べる人間関係が近くに出来たことが心強い。

 内閣府の08年調査によると、介護が必要になった場合、自宅での介護を希望するのは男性49%、女性35%。さらに自宅で最期を迎えたい人は男女計55%に達した。慣れ親しんだ家や地域への愛着は深いようだ。

 高齢者のライフスタイルに詳しい、御茶ノ水大学の教授は「住まいを考える上ではハード面だけでなく人とのつながりも重要な要素。家族との絆が希薄化した現在、地域社会との関係を見つめなおす事も大切だ」と指摘する。

 しかし、最期まで自宅で過ごすには、医療面でのバックアップも需要だ。福祉医療機構の福祉・保険・医療の総合情報サイトで近所に24時間対応可能な「在宅医療支援診療所」があるかどうか調べてみてください。