老人下宿は、終の棲家になりえるのか?

 老人下宿ってご存知ですか?老人ホームとは違います。北海道にある老人下宿に住んでいた人が、運営会社社長等3人に「多額の金を騙し取られたとして」刑事告訴した。弁護人によれば「信頼していた人に裏切られたという気持ちで許せないと、責任を追及したいと」「捜査をした上で、真実を明らかにして欲しい」という告訴内容である。

 告訴した女性(82)は老人下宿「絆」に,昨年10月から半年間入居。2800万円をだまし取られたという。この女性は「高齢者向けの専門の民間マンションということで、食事も出してくれるし、介護の設備も整っている。身の回りの世話もしてくれる」というのでこの老人下宿を選んだという。

 しかし下宿とマンションではずい分と違ったイメージを持ってしまう。それは食事や身の回りの世話もしてくれるということで、昔の下宿のイメージのようで言われているようだ。地域によって「老人下宿」「老人アパート」「シルバーマンション」などと呼ばれてる。

  民間の賃貸住宅が高齢者向けのサービスを付け加えた有料老人ホームで、食事の提供や必要に応じて介護サービスも行っている。老人下宿は入居時に多額の一時金がかからないため誰もが気軽に住むことができる。しかし,その一方危険な一面があるという。老人下宿には、全く基準とか決まりが一切ないんです。

 老人下宿は認可性ではないため届け出をすれば誰でも自由に運営できる。今回閉鎖した老人下宿「絆」で問題になったのは,そのずさんな金銭管理だった。あるお年よりによると「預金通帳から何から事務所の方で管理していた」という。よくよく調べると、「通帳と印鑑」を施設が管理し、施設が閉鎖して戻ってきた通帳を見て驚いた。

 毎月支給される生活保護費のほとんど全額が運営者によって差し引かれていた。疑うことを知らないお年寄りに付け入った悪質な行為である。ある入居者は、一生面倒みますからといわれて社長や介護福祉士と一緒に銀行へ行き多額の現金を下ろした。その後もお金を下ろし総額2800万円を会社の運営に流用していたという。しかし、数ヵ月後、施設は突然閉鎖され、その直後に会社は破産した。

 そして老人が老後のために貯めておいた大切な金は消えた。一生面倒みてもらえるはずの施設が閉鎖され、お金もなくなった。そして、閉鎖された会社の社長は破産の数日後自ら命を絶った。

 入居者たちは怒りの矛先もなくなってしまった。9月18日破産した会社の債権者集会が開かれたが、回収予定がある金額は700万円程度だという。「絆」の破産で多くの老人を受け入れた老人下宿も、また経営難から閉鎖した。相次ぐ施設の閉鎖。一人の老人は6回目の引越しだという。これはもう引っ越しというより、たらい回しというべきか。

 ここ数年,特に北海道で多いという。老人下宿は「入居金などの一時金を抑え,月払いで利用(絆の場合11万円/月)できるメリットが大きいという。公的に支える機関があまりにも少ないため,多くの老人は先行き不安なまま終の棲家を探している。