知って負担減、社会保障費 介護施設利用料「世帯」同一かどうかで差

 介護施設の利用料には「施設サービス費」「居住費・食費」などがある。「施設サービス費」は介護保険の本人負担のことで、所得にかかわらず利用者が等しく1割相当を負担する。蓮田さんに影響のあったのは「居住費・食費」だ。

 介護保険法の改正で2005年10月以降、施設を利用する際の「居住費・食費」は自己負担となったが、この負担額は世帯収入によって変わる。利用者本人の収入でなく「世帯」収入であることが注意点だ。

 蓮田さんの場合、両親が住民票上で同世帯になっていたときは、蓮田さんの給与と両親の年金の合計が世帯収入となり、それを基準に「居住費・食費」が決まっていた。世帯を分けた後は、母親の世帯収入は年金のみ。結果として自己負担額が半減したわけだ。

 世帯収入によって負担が変わるのは、介護施設の利用料に限らない。65歳以上の高齢者が年金から天引きされている「介護保険料」にも世帯収入が関係する。

 収入800万円の息子夫婦と年金収入75万円の母親が同世帯か別世帯かで、介護保険料や介護施設に入った場合の負担が大きく変わることがわかる。さらに、介護保険では月間の自己負担額が一定額を超えると、「高額介護サービス費」が支給されるが、その自己負担の上限額も世帯収入によって決まる。

 離れて暮らす高齢の親が一人暮らしでは不安だとして同居するといった場合。「住民票を同じ世帯とするか否かで親の負担が大きく変わることは認識しておきたい」とファイナンシャルプランナーの紀平正幸さんはいう。

 「税制上の扶養控除を受けたいから親を同じ世帯にしている」という人がいるが、これは誤り。図Bのように、所得税や住民税の「扶養控除」や健康保険の「被扶養者」の条件は原則、「生計を一にする」親族であることだ。必ずしも住民票で同じ世帯でなくてもかまわない。

 父親が妻子を自宅に残して単身赴任する場合、住民票では別世帯になるが、配偶者控除や扶養控除を使えなくなったり、妻子が健康保険の被扶養者から外れたりするわけではないのを考えると理解しやすい。離れて暮らす親でも、所得など一定の条件を満たせば、子どもが親を「扶養」して所得税・住民税の扶養控除を受けられる。

 一方、住民票の世帯の要件である「生計を共にする」には明快な線引きがあるわけでない。同居する親でも生計を共にしていないとして市区町村に「世帯異動届」を提出すれば、世帯を分けることができる。もちろん「役所に世帯を分ける理由を聞かれて、社会保障費負担を減らすためというのは本末転倒」(社会保障に詳しい杉並区議の太田哲二さん)なのは当然だ。

 08年4月に「高額医療・介護合算療養費制度」がスタートした。同一世帯内で高額の医療費や介護費がかかった場合に、所得に応じて上限を超えた分が給付される制度だが、この制度を利用する条件として、住民票の世帯が一緒である必要はない。

 ここでいう「世帯」とは同じ公的医療保険に属している世帯という意味だからだ。別居でも母親が息子の健康保険組合や協会けんぽの被扶養者になっているなら、同一世帯になる。逆に、住民票で同じ世帯に入っていても、75歳以上は後期高齢者医療制度の加入者になるため、医療費や介護費用を合算できない。

 介護費用を賢く節約しましょう。