雇われず、縛られず…「IC」って?

 個人がプロジェクトごとに企業と請負契約を結んで仕事をする独立業務請負人(インディペンデント・コントラクター=IC)が、新しい働き方として注目されている。組織に縛られず働けるのが魅力だ。反面、仕事を得るための人脈や確かな専門技術が必要で、だれでも成功するとは限らない。(清岡央)


契約先の会議室で打ち合わせをする深谷行弘さん(右)(東京都江東区の大興運輸倉庫で)=川口正峰撮影


勤務、休暇は自己責任…契約はプロジェクトごと

〜ISO事務

 ICとして働く深谷行弘さん(40)は、東京都江東区の運送会社「大興運輸倉庫」で、企業の品質管理や環境対応を認証する国際規格ISOに関する事務を任されている。

 「今年はISO更新の時期です。7月中旬にも審査を受ける必要があります」

 3月上旬、会議室で更新の手続きなどを説明すると、会社の幹部らが真剣に聞き入った。

 深谷さんはそのほか、経営計画づくりや新入社員の採用、教育研修などにも協力している。

 深谷さんは2つのコンサルティング会社で計約8年、勤務した。その経験を生かし、ICとして企業の経営管理や人事部門のお手伝いをする。シニア産業カウンセラーの資格も持っており、働く側の視点も取り入れる。

 現在、深谷さんは同社のほかに中小企業3社と年間の直接契約を結んでいる。さらに別の会社から随時、社員研修を請け負う。社員教育専門の会社から仕事を発注されることもある。

 独立して約8年半。最初の年の収入は会社員時代の6割に落ちたが、今は独立前を上回る。

 都内の自宅マンションの隣に借りた部屋が事務所だ。昼間は得意先との打ち合わせなど人に会う仕事に充てる。書類作成などは夜や早朝に行う。複数の得意先の仕事が重なれば、1日20時間働く日もある。

 一方、いつ休みを取るかも自分の判断次第だ。平日に都電荒川線の1日乗車券を買い、気になる駅で降りては散策を楽しむこともある。「働く時間もオフも自分の責任で決める。自分の力で生きている充実感がある」という。

〜システム保守管理


契約先からシステムの保守管理を請け負う藤井俊勝さん(右)

 ICの藤井俊勝さん(30)は週に3日、東京都品川区の機械部品メーカーに出勤する。そこでコンピューターシステムの保守管理を請け負っている。

 この会社には、大手コンピューター会社のSE(システムエンジニア)も常駐しているが、細かいシステム変更などは藤井さんの仕事だ。「大手は、わずかな作業でも見積もりを出したり、人を集めたりと時間がかかる。ICはすぐに仕事に取りかかれるのが評価されている」という。

 大学卒業後、横浜市内のシステム開発会社に勤め、鉄道や発電所を管理するシステム作りにかかわった。そこでSEの技術を身につけた。仕事は充実していたが、「人生のレールは自分で敷きたい」と3年前に独立した。

 当初は仕事がなく、実家から生活費を借りることもあった。しかし、今は契約も増え、順調に収入を伸ばしている。

人脈、専門技術が必要…独立支援するNPOも

 ICの情報交換や独立を支援するためのNPO(非営利組織)も誕生している。2003年に設立された「インディペンデント・コントラクター協会」には、現在約200人が登録する。協会の岩松祥典専務理事は「ICは働き方の一つの選択肢として定着しつつある。今後は、経験を生かして独立する団塊世代も増えるだろう」と話す。

 だが、独立は決して甘くはない。会社勤めの経験がないまま独立すると、成功が難しいという。仕事を取るには、会社で培った人脈と技術が大切だからだ。 藤井さんは独立して間もないころ、駅前でチラシを配った。しかし、全く契約につながらなかった。他のIC仲間や知人から仕事の紹介を受けるようになったが、質の高い仕事をしないと紹介者にも迷惑がかかる。藤井さんは「会社員時代に得た技術があるからこそ、契約先が納得する仕事ができる」と強調する。

 収入の保証もない。深谷さんは「独立して一度も生活に安心感を持ったことはない」と打ち明ける。大口の契約を失えば収入が激減する。「退職金も企業年金もない。75歳までは働く覚悟をしている」と話す。

 岩松専務理事は「会社に雇われ組織の中で働くことが向いている人もいれば、自分で会社を興す方が向いている人もいる。ICも人によって向き不向きがある」と指摘している。
 定年退職後の働き方として、自分でも充分に研究したいと思います。
定年準備として、社内や社外に人脈を作る事も重要になってきますので、その事を意識しながら定年後の独立業務請負人を目指します。

 

定年後は独立業務請負人になろう