『話題休閑・昔日の残照4後2』



「プハー!!! にゃは、にゃははははははは♪ 酒池酒林(←意味も文字も曲解)よぉ〜!! 飲むわよ〜」
豪快に酒をかっくらって早くも半分出来上がったメイメイの、壊れた笑い声がユクレス村の広場に響く。

前回の反省を活かしメイメイには酒だけが与えられている。
誰もメイメイに近づこうとはしない。酒を注がれて潰されてしまうからだ。

「十二分に反省したわ。もう二度と一人で悩んだりしないから、クノン。それから許してくれるでしょう?
項垂れたアルディラがクノンと、それから今回の首謀者である に頭を下げる。
「申し訳ありませんでした、ミスミ様、スバル様。それに 殿も……勘弁してください。この通りです」
キュウマも白装束のまま連行され、広場で土下座してミスミ達に謝っている。

ファリエルがアティを誘い出すべく遺跡で幽霊を鎮める場面を披露した。
蜘蛛の糸のように張り巡らされた の罠は巧妙で悪質で。
しかもアルディラとキュウマ、二人の行動が怪しかったから遺跡に纏わるetcと共に凡その情報を調べ上げた、 の手腕も末恐ろしい。

からこっそり二人にだけ、今回の件について全てを聞かされたアルディラとキュウマは改めて戦慄する。

この存在を敵に回してはならない、と。


アルディラとキュウマの改心? を見届けファリエルはヤッファと並んで笑い合った。
『不思議よ……兄さんが死んでね? 二度とこんな風に皆で楽しく笑ったり出来ないって思ってたの。でも先生が道を作って が道を固めて、また一つになれた』

騒動の後は仲直りの鍋。
ジルコーダ事件以来、周囲の結束を高めるべく は全員でつつける鍋を推奨している。

今回はオウキーニの手伝いもあり豪勢な鍋が設置されたテーブルの上に数個鎮座していた。

「どっちも救いようがねぇ、お人好しだからな」
賑やかな宴会の輪から離れヤッファは自分の杯の酒を口に含み、頭を掻く。

『でも先生は命を大切にしてくれる。 は、大人数で敵に立ち向かう事を臆病じゃないって教えてくれたわ。
アルディラ義姉さんもキュウマも、今の自分にとって何が大切かを見つけられたし』
から許されて安堵するアルディラとキュウマに噴出して。
何度か深呼吸をしてからファリエルはヤッファに言葉を返す。

「そういう嬢ちゃんは何か見つかったのか?」
ヤッファはファリエルの顔を覗きこみ茶化して質問した。

ファルゼンの正体を知り衝撃は受けたが、ヤッファが最初に呪ったのは自分の迂闊さである。
ヤッファはあのフレイズが副官を務める相手が誰か、詮索しなかった自分を叱咤した。

てっきり、死んでしまったファリエルの意思を引き継いでこの島に残ったのかと考えていたのだ。

『うん……今の段階で上手く言葉に出来ないけど。見つけたわ』
夕方降った雨雲の残り、薄雲の向こうに輝く星を見上げファリエルは顔を輝かせ言う。

かつてハイネルが生きていた頃のファリエルの表情と同じだ。
ヤッファは久しぶりに見たファリエルの生き生きとした表情に、自分の心も柄になく弾んでしまうのを自覚する。

「あ〜シマシマさん、ヨロイさん!! 二人だけでお喋りして!! マルルゥも仲間に入れて欲しいです〜」
そこへ輪から離れたヤッファとファリエルを発見したマルルゥが、文字通り飛んできた。

「僕も是非拝聴したいね。二人して何を喋ってるの?」
ウィルもほろ酔いのスカーレルとカイルの魔手から逃れヤッファとファリエルに近づく。

傍から見ていればバレバレのアティとウィルの恋心。
少しは進展させようとスカーレルとカイルが酔っ払いを装って散々アティとウィルをからかい始める。
辟易したウィルは二人の口撃を際どくかわし、アティの保護をベルフラウに依頼して自分は輪を離れたのだった。

『先生と は偉大だよね、って喋ってたの』
ファリエルがマルルゥとウィルにヤッファと喋っていた内容を明かした。

「先生さんは凄いです!! お勉強を何でも教えてくれるんです!! アオハネさんも凄いです!
美味しいご飯の作り方も知ってるし、戦い方も知ってるし。時々ヤンチャさんみたく意地悪ですけど」
マルルゥは自分が好きな二人を褒められて嬉しいのか。
ニコニコ笑ってファリエルの意見に賛同する。

最後に意地悪と付け加えたのはご愛嬌だろう。

「意地悪っていうか、 のあれは地だよ。地」
右手を左右にヒラヒラ振ってウィルが断言口調で告げる。

狙って意地悪をする部分もあるけれど、大抵は素。
は良くも悪くも自分に正直な性格をしているのだ。
一緒の家に暮らしていてそれが良く分かる。

「じ?」
言葉の意味が理解できなかったマルルゥが怪訝そうな顔で、ウィルに問い返す。

「元々 がそういう性格をしているって意味さ」
伊達に青空教室の副委員長はしていない。
マルルゥの性格を把握しているウィルが、嫌な顔一つせずにマルルゥへ意味を教えた。

「それは言えてるかもしれないですねぇ」
矢鱈偉そうに踏ん反り返って、マルルゥ本人は威厳を持って発言すると。
ウィルは口元に手を当てて慌てて何かを堪える。

『うーん』
根が真面目なファリエルは、 の意地悪は地か否かについて真剣に考え始めて。
「ふっ」
ヤッファに至っては否定も肯定もせず、鼻で笑うだけ。
どちらに転んでも受け流せる見事な処世術といえよう。

「地が意地悪でもアオハネさんには感謝してます。マルルゥは皆さんの笑顔が元に戻って嬉しいんです。最近の皆さんは怖い顔ばかりしていてマルルゥは嫌でした」
しみじみ喋ってマルルゥは仲間に囲まれ笑う の揺れる髪を凝視する。


「悔しいけど のお陰、なんだよね?」
多くは問えない。
けれど、 が抱える秘密はまだ何かありそうな気がする。

ウィルは何かを知っていそうなファリエルへ内容を省き確認の意味合いが濃い問いを放つ。

『ええ、そうなの。 のお陰よ』
ファリエルは取り戻した自分の笑顔を顔に浮かべ、ウィルに返したのだった。



Created by DreamEditor                       次へ
 ストーリーの流れ上仕方なかったのでしょう。
 でも、フレイズがファリエルの護衛召喚獣だったのは護人の方々とか知ってたんですよね???
 本来なら。知らなかったら怖いなぁ。ブラウザバックプリーズ