『話題休閑・すれ違う想い5後』




夜更け、ウィルを訪ねてきたアティに小屋を明け渡し。

はヤッファにふかーい眠りの召喚魔法を出会い頭に放ち、マルルゥもついでに眠らせ。なまけものの庵にてクノン・メイメイ・バノッサ・イオスと密談中である。

「…… 様」
流石に冷静なクノンも眉を顰めて彼等を見る。

彼等とは床に敷いた敷物に寝ころがされているヤッファ&マルルゥの二人だ。
すやすや眠る二人の表情は穏やかである。

「ヤッファまでは巻き込めぬ。どうやらヤッファは遺跡の何かに誓約をかけられておるようでな?
しかもその誓約に逆らっておる故、体力の消耗が激しいのだ。こうでもしなければ碌に休みもしまい」
の返答にメイメイが苦笑い。

もっと普通に労われば良いものをこうやってこっそり影から当人に分からないよう、世話を焼く。
誰に感謝されるわけでもないのに。

『後ろめたさからの無茶だろうが、感心できねぇのは事実。ヤッファはアティ達と行動を共にしてるんだ、強制的に休ませておいて損はない』
片や の兄、バノッサも飄々とした態度を崩さず堂々と付け加える。

腕組みし、壁に寄りかかったまま立った姿勢で。

この妹にしてこの兄ありなのか、この兄にしてこの妹ありなのか。
クノンが助けを求めるべく常識人らしいイオスへ顔を向けた。

「慣れるしかないさ、悪気があってやってるわけじゃないからな」
諦めきった口調でイオスに宥められてしまえばクノンはもう反論できない。

「まぁまぁまぁ、気にしない♪ 気にしない、ね?」
珍しく酒っ気のないメイメイがクノンの肩を気休め程度に叩いた。

「クノンには事実を手早く話そう。汝は他者より理解力が優れておるからな……比較的公平な判断も下せ、しかも曲者でもない」
曲者と が発言した時、 がメイメイを横目で捉える。
「え!? なんでそこでメイメイさんを見るの??」
の視線に気づいたメイメイがわざとらしく驚き、上半身を仰け反らせ自分を人差し指で示す。
メイメイの訴えに誰もフォローの言葉を入れず、口を閉ざす。

「メイメイさんは占い師兼雑貨屋店主よ〜」
長引きそうな沈黙に、プクーと頬を膨らませメイメイは一応の主張を試みた。

「いや、酔いどれ店主だろう?」
ゼラムでもファナンでも、何処でも。
酒瓶が友達、三度の飯より酒が好き。
未来のメイメイを厭という程堪能したイオスがボソリと漏らし。

『酒依存症と見せかけた油断ならない相手』
バノッサに至ってはメイメイの底の深さをある程度理解してのこの一言。
外見がフニャけた酔っ払いにしか見えないメイメイだが、彼女の力は計り知れない。

「クノン〜!! 達がメイメイさんをいじめるの〜」
メイメイは上着の裾で目元を拭う仕草をつけ哀れさを演出。
よよよ、と泣き真似までしてクノンへ切々と訴えかけた。が。

「事情の説明から御願いします、 様」
メイメイに助けを求められたクノン、きっぱりしっかりメイメイを無視した。
「うむ」
はクノンの真剣な面持ちを受け止め真摯に頷いて返す。

「メイメイさんを無視しないでぇ〜」
事情を説明し始めた に訴えるも無視され、バノッサとイオスもメイメイを視野から外して が紡ぐ説明に耳を傾けている。

口先を尖らせたメイメイは腹いせにヤッファ秘蔵の酒を捜すべく隣の調理場へ姿を消した。


の口から飛び出すクノンにとっては俄に信じがたい未来。
だが確定しなければ無関係の人間二人が命を失う。
しかも と同じ世界からやって来た誓約者二人が死ぬ。

となると運命の糸は解れ平和を取り戻したリィンバウムの平和そのものが崩れるかもしれない。

不確定要素とリスクが大きすぎる定めを変えるべく乗り込んで来た……建前は別として。

ハヤトとトウヤ、二人の兄を救いたい純粋な願いを持った の姿にクノンは胸の回路がショートしてしまいそうな。
そんな錯覚さえ抱き改めてこの少女の『凄さ』に感動する。
表情に乏しいクノンにそれが表れることはなくとも。

「事情は大体把握しました。 様はハヤト様、トウヤ様、即ちリィンバウムにおける兄兼誓約者を救う為に過去のこの島へ召喚されたのですね。ハイネル様に誘われて」
何度か瞬きをしてから、クノンは自分なりに咀嚼した顛末を改めて口に出した。

「実も蓋もないがその通りだ。リィンバウムの行末も気にしておるが第一は兄上達の命。それを護る為に我はこの島へ来た」
飾り気のないクノンの要約に はなんともいえない表情になる。

美辞麗句で飾り立てても結局は の都合。
島の意思・ハイネルの都合も含まれているがそれは現在を生きる島の者達の都合ではない。

「勘違いなさらないで下さい。わたしは 様のその気持ちに共感できると感じています。
もし 様の兄上様方がアルディラ様で、わたしが 様の立場であったなら、わたしも間違いなく 様と同じ行動を取ります」

淡々と紡ぐクノンの声に変化はない。
でも彼女が を非難していないのは分かる。

「クノンにはアルディラの監視、違うな、保護を頼みたい。当面は帝国相手に戦う事となろう。アルディラも帝国が腰を据えている今動こうとはしないだろう?
だが下準備はしておるはずだ。アティを新たな部品として遺跡を復活させる手筈を」

クノンの反応を受けて はクノンにしか出来ない仕事を頼んだ。
クノンは数秒間考え、表情を引き締め首を縦に振る。

「確かにねぇ。なんてったって融機人で護人なんだから。その能力をフルに活用されたら、鍵である剣もあることだし遺跡なんて簡単に復活させちゃうかもね〜」
そこへ何本かの瓶を抱えたメイメイが部屋へ戻ってきた。

これまでの会話を少々聞きかじっていたらしく堂々と割って入る。

護人となった事で強大な力を得た四人。
召喚術を遺跡から学び、現在まで島の秩序を維持してきた四人。
その一人であり頭脳明晰なアルディラが本気になればその程度は実行しそうである。
場面を互いに想像しメイメイ・クノンを除いた三人は小さく唸る。

「三竦みの現在だ、様子を見る余裕も必要であろう」
卓上の議論を重ねても現実には追いつかない。
が密談の最後をこう締め括った。



Created by DreamEditor                       次へ
 結局クノンも仲間入り〜。実際のゲームでは余り使いませんでしたが、可愛い外見がお気に入りv
 いずれLV50まで育てて一軍入りさせたいですね。ブラウザバックプリーズ