『話題休閑・自分の居場所2後2』
大量のキノコ? 基、メイトルパの召喚獣・プチトードスの群れがタケシーを襲う。
プチトードスもタケシーも外観が人型から大きく外れているので、二つの種族がぶつかり合う様はシュールである。
落ち着き払って説得に当たるフレイズだが、プチトードスはお構いなし。
フレイズ目掛けて攻撃を仕掛けてきた。
天使といっても多勢に無勢。
レベルが低いプチトードスも束になればフレイズを追い詰める事が出来る。
窮鼠猫を噛むというか、一寸の虫にも五分の魂と評するべきか。
苦悶に歪むフレイズを助ける第三者の声。
おなじみお人好し度ナンバーワンを誇る、碧の賢帝の主と愉快な仲間達。
助太刀に入ったまでは流れ的に自然でもその後が拙かった。
「キ、キリがないよ〜!!!」
ソノラが悲鳴混じりに投具を放つ。
「ったく、ちくしょうがっ!!!」
最前線ではカイルが拳を振るいプチトードスを凹ませて、その斜め横から颯爽とスカーレルがトドメを刺していく。
ヤードもアティも召喚術を操り攻撃に回復にと大忙し。
アルディラも完全攻撃型のロレイラル召喚術を使用してプチトードスを減らしていた。
「キノコ相手に大奮闘、か。まあ、構わぬな」
場違いなのほほんとした口調がしたかと思えば、ヤードとアティとアルディラの間を黒い影が走り抜ける。
草むらに生えたキノコを飛び越え軽やかに飛翔。
ついでにカイルへ回し蹴りを放ち無理矢理居場所を後退すると、白刃を煌かせプチトードスを討つ。
「ギャ」
断末魔の悲鳴をあげる間もない。
プチトードスは萎れてその場から掻き消えた。
はポニーテールに結った長い髪を揺らしスカーレルにアイコンタクト。
眼球だけを動かしソノラを示す。
スカーレルも戦闘中だけあって集中力が高まっていて無口である。
の合図に瞬き一つ返し移動を開始した。
「
さん……どうして……」
意表をつく人物の登場にフレイズは目を丸くする。
彼女ほど高貴な存在が自分達のような存在を気にかけるとは想像できないフレイズ。
機敏な動きでプチトードスを蹴散らす
とスカーレルの連携攻撃にも度肝を抜かれていた。
「性格はアレですけど、なんだかんだ言って彼女は仲間想いなんですよ」
目を回したカイルの治療に当たるヤードが苦笑いを浮かべる。
ジャキーニ一家を前に臆する素振りもなく自分達を助けてくれた彼女。
彼女からすれば自分達を助ける理由がないのに。
ヤードもフレイズと同じ戸惑いを感じつつも、幼馴染のスカーレルの『 ってアタシ達が考えてるほど穿った性格してないわよ。結構単純だと思うわ』という意見を信じた。
実際問題として彼女の思考回路は本当に単純、というよりシンプルだとヤードは理解し始めている。
「にゃはははは♪ そ〜ゆ〜コトよ、 はね? 自分が友達だと感じた相手を助けるのに躊躇ないからね〜。良かったじゃない?
カイルもそろそろ体力の限界っぽかったし、
に蹴飛ばされて休めて御の字でしょ」
腰から下げた瓢箪に満たされた酒。
かっくらって召喚術を発動するへべれけ店主は、ニヤニヤ笑いながらカイルにちょっかいをかける。
登場一番、ミョージンを召喚したメイメイは物理攻撃をミョージンに任せ、自分は後方支援の召喚術のみを発動していた。
「俺は嫌われてるとしか思えねーけどなぁ」
カイルは後頭部を擦り納得できない表情で、戦う
の揺れる髪を盗み見る。
「あらあら、あれもきっと愛情表現よ………多分」
に意図的な気持ちは無かったにせよ、カイルの持つ真っ直ぐさに比例する単純さが本能的に気に入らないのかもしれない。
さり気に貧乏籤を引くカイルの末路は決定か?
メイメイはフォローになってない台詞を無責任に吐いた。
案の定、カイルはジト目でメイメイを見上げてくる。
「きっと仲間を心配しての行動よ。にゃは、にゃはははははは♪」
誤魔化して微笑み、誤魔化しついでに召喚術を放つメイメイ。
メイメイの魔力は高いらしくギョロメが放つ一撃はプチトードスにかなりのダメージを与えている。
グピグピ酒を飲み干すメイメイにマトモなツッコミを入れてもマトモな返答は望めない。
考えて、カイルは項垂れヤードは笑いを噛み殺した。
「でも
の事だからきっと、そうね、頑張ってねフレイズ」
そこへ自分の担当していた敵を倒し終えたアルディラが合流。
なんだか悟りを開いた顔つきでフレイズへ労わりの言葉を投げかけた。
「何を、ですか?」
キョトンとするフレイズと肩を竦めるアルディラ。
フレイズの末路を想像して首を竦めたカイルに、乾いた笑みを漏らすヤード。
メイメイだけは酒焼けした顔を少々引き締めて鼻歌混じりに召喚術を放っている。
その間も黙々と戦うファルゼンと
、スカーレルの獅子奮迅とも暴走ともいえる戦いぶりのお陰で、まもなく戦闘は終了した。
ばっちーん。
「うひゃぁ」
戦闘が終わるや否や繰り出されるお約束の一撃。
フレイズは地面とキスをして、硬直。
アティは変な叫び声を上げて手近にいたアルディラにしがみ付く。
「フレイズ、汝は天使だ。確かに他の種族とは違い頑丈に出来ている。だからといって単独で行動し危険がないとは誰も申してはおらぬ。何故仲間を頼らぬのだ」
頭上にイオスを載せたまま踏ん反り返る の姿だけは愛らしい。
眦を吊り上げ怒る顔にもはっきりいって迫力はない。
噴出しかけたソノラの口を慌ててカイルが塞いだ。
「す、すみません。
様」
美しい金色の髪も整った顔立ちも泥まみれ。
萎れた様子のフレイズは、常の居丈高な態度を引っ込め捨てられた子犬のような態度をみせる。
ただ一人だけに。
「汝の立場からいっても汝が怪我をすれば狭間の領域の者者が不安になる。それだけではない。
我やファルゼンを筆頭とした島の者。それにアティ達だって当然汝を心配せねばならぬのだぞ。過信した力を振るうなど言語道断、己の慢心を恥じよ」
口先を尖らせフレイズの顔を覗きこむ の姿はやっぱり可愛いだけ。
真剣なのは とフレイズだけで、カイル・ソノラ・ヤードは笑いを堪え。
アティ・アルディラ・ヤードは微笑ましいものを見る顔つきで胸を温かくし。
ファルゼンだけは常と変わらぬ無口を貫いている。
(ファリエルは、よく言ってくれたわ! 有難う、
!! 等という気持ちであるらしい)
「はい、以後気をつけます」
「分かれば良いのだ」
素直に謝罪の気持ちを込めて返事をしたフレイズに、 は偉そうに応じた。
この戦いがタケシーとプチトードスの揉め事? を発端にしているだけに、アティ達の心に緊張感は漂っていない。
逆に真剣に叱られるフレイズを目撃した事の方が衝撃である。
その後、アルディラとファルゼンの取り成しがあってお咎めなしとなったフレイズであるが。
益々 の気質に惚れたのは確実で、 の頭上のイオスが矢鱈と不機嫌そうだった。
フレイズを助けた帰り道、途中でアルディラとも分かれた森の小道を歩く。
「天使ってもっと近寄りがたいのかと思った。良い意味で先入観が崩れたかな」
帰り道、何気なく言ったソノラに「そうね」なんてスカーレルが同意する。
「でも大切な島の仲間です。困った時はお互い様、助け合うのが当然でしょう?」
先頭をカイルと歩いていたアティが、器用に後ろ向きに歩きながらソノラへ反論した。
自然にフレイズ達を仲間と認識するアティの発言にヤードと
、メイメイは表情を緩ませる。
「突然の嵐で不本意に流れ着いた島であっても、今は汝等の生活の場だ。先住民と良好な関係を保ち共存するのは必要な心構えであろう?」
が皮肉交じりにチクリと釘を刺すと、ヤードが情けない顔つきになった。
召喚師として生きてきたヤードや、海賊生活が長いカイル達はどうも島に馴染めないで居たからだ。
しっかりと
に見抜かれていると悟り、ついヤードの顔色に本音が浮かび上がる。
「いがみ合うより仲良くしていた方が楽しいもんね〜。お酒も美味しいしv」
へらり、と笑ったメイメイの真意はどこにあるか不明でも。
ヤード達には島の人間が自分達をどう見ているか知らしめるには十分な一言である。
「人それぞれに適応力は違うからな。汝等のペースで彼等と分かり合っていけば良い。自分達とは立場の違う者達との会話は視野を広げる。損はないぞ」
つまみ食いの現場を目撃された子供みたいな顔をするカイル一家の面々。
見かねて
はこう最後に付け加えた。
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