『話題休閑・屍人の砦2後』



あかなべのカウンター席(屋台なのでそれしかないのだが)に座り、ユエルは湯気を上げる蕎麦に苦戦中。
一生懸命に蕎麦を吹き冷まし口に運んでいる。
「はい、ガウムも」
「キュウ」
ユエルは時々ガウムへ蕎麦をわけ、ガウムからはお稲荷を貰う。
仲良しメイトルパ組をカノンと は微笑ましい顔で見た。

リューグは慣れない箸使いに悪戦苦闘。
ぎこちない手つきで蕎麦を摘みあげている。

「これを、サイジェントより預かってきました。イムラン殿の紹介状です」
にだけ届く声。
何気ない動作で の前に差し出される手紙。
シオンから受け取り、 は目を細めた。

「スルゼン砦に向かったトリスさん達が、怪しい屍使いに遭遇したようです。召喚師のようでしたが、死人を操る術を持っているとの事です」
続けて の耳元で囁くシオン。
リューグが顔を上げると素早い動きでカウンターの中へ納まる。

月見蕎麦を啜り、 は乱れているトリスの魔力に納得。

 ふむ。
 砦で出会った怪しい屍使いか……。
 恐らく、マグナもトリスもシオンの蕎麦を食べに来るだろう。

 その時に詳細をシオンへ探らせておくか。
 裏方に徹しようとしたため、情報が圧倒的に少なすぎる。
 我の慢心が招いたのなら、取り返すまで。
 取り返しが付かないと分るまでは諦めぬ。

一度だけ瞬きをして は懐へ手紙を仕舞う。
「ところでシオン、町が不思議な活気に包まれているようだが?」
 かの準備を始めていた店が目立っていた。
世間話ついでに がシオンへ尋ねる。

「ああ、近々お祭りがあるそうなんですよ。近々といっても暫くは先ですけどね」
小さな身体に似合わず大食漢。
お稲荷を平らげたガウムにお変わりを作りながら、笑顔でシオンは答える。
は気のない相槌を返した。

「余談ですが、カイナさんや、エルジンさん達がお近くに見えています。件(くだん)の事件を調べるために」
リューグに蕎麦湯を注いで、返す動作でシオンは情報を へ伝える。
下手に口を挟んでリューグに知られるのも薮蛇。
理解しているのでカノンはリューグやユエルにシルターンの風習を説明していた。

「懸念がこちらにもある故、手伝えぬが無理はするなと伝えてくれ」

信頼しているから、これだけで十分。
敢えて難儀なお節介を焼く を、きっとカイナ達は笑うだろう。

でもきっとお節介自体を否定はしない。
対象が異界の者だからといって、対応を変えたのが間違いだったのだ。
どちらも同じヒトではないか。

胸の澱が漸く抜け落ちて、軽くなった心で は考える。

「承知しました」
目礼するシオン。

その後は もカノンのシルターン談義に加わり。
途中は本物のシルターン出身者。
シオンの薀蓄なども混じり、知らない世界を聞きかじり楽しそうなユエルを肴に全員が夕飯を楽しんだのだった。



Created by DreamEditor                       次へ
 この時間軸でマグナ達は怪しい召喚師に襲われなんとか撃退して、戻ってきてモーリン宅で一息中。
 こっちはゆったりまったり。ほのぼの路線?? ブラウザバックプリーズ