『話題休閑・聖女の横顔2後』




夕暮れの王都ゼラム。
ギブソン・ミモザ邸二階。
テラスで、 は二人から貰った未契約のサモナイト石を手に意識を集中。

「護衛召喚獣、なんて には要らないんじゃないの?」
テラスの柱に背を預けたミモザが傍らのギブソンに耳打ちする。
には なりの考えがあるんだよ。それよりも、手紙の用意をしてあげないとね。早くしないとリィンバウムが大変かもしれない」
懐疑的なミモザの様子に苦笑してギブソンが背筋を正す。
「そうねぇ…… の保護者達は怖いわよねぇ。本気で怒らせる前に連絡取った方がいいかもしれないわ」
頬に手を当ててミモザは遠い目をした。
丁度そのタイミングで が何かを召喚した光がテラスに溢れる。

「あれ? ここは? あっ! さん! 突然消えたからバノッサさんが心配してましたよ……??? ミモザさんにギブソンさん?」

光の向こう。
姿を見せたカノンが へ小言を言いかけ、背後の二人に気がつく。

「キュー、キュキュウ!!」
茶色の物体も身体を震わせて、心配と喜びと驚きを表現している。

「カノン君とガウム?」
珍妙な取り合わせだ。
考え、ミモザは へ問いかける視線を送った。

「旅の始めには丁度良い役割分担であろう? マルチの我に、攻撃役のカノン。対召喚師役のガウム。バランスは良い」
胸を張る にギブソンは乾いた笑いを零すだけ。
こうして の旅のお供、カノンとガウムが新たにサイジェントから姿を消したのだった。



夜。
に出会い気持ちを揺らす何人かの思惑が重なる運命の闇。

 まっとうなどではない。

助けを求め涙する老女を斬り捨て、男は自嘲した。
長閑な村を襲う紅蓮の炎は確実に村人を追い詰め、滅ぼしていく。

「将ヨ、如何シマシタカ?」
傍らで戦う機械兵士が動きの止まった男へ声をかける。

「……いや、なんでもない」
怯えた村人の瞳に映った己と。
あの子供の瞳に映った己の姿がかけ離れていて。
正反対に思えて男は仮面の奥、一瞬だけ瞳を閉じた。

 まっとうなどではない。
 こうして……罪も無い者を殺しているのだから。


男と相対しながらマグナは己の浅はかさを呪っていた。
自分から見捨てておいてこの場にあの子が居たなら、なんて調子の良い事を考える自分に。

 自業自得じゃないか、俺。
 でも……ここで死にたくない。

激しい炎に怯える聖女を背に庇い、額を伝う冷や汗を拭う。
マグナは奥歯を噛み締める。

 神様……なんて、居やしない。
 信じられるのはこの手にある俺が持ってる力だけ。

戦うマグナの隣で戦っていたバルレルが、薄く笑った。



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 マグナもトリスもルヴァイドも。それぞれに苦悩を抱えてるって事で。ブラウザバックプリーズ