『話題休閑・再会と別れ2後』




やや気まずい空気の中、夕食が始まる。
食事を口に運んでいたネスティは、屋敷を駆け抜けた魔力の波動に驚き動きを止めた。
同じくバルレルも動きを止める。

「「……」」
何故かバルレルと二人連れ立って居間を後にし、矢張り何故かバルレルとある扉の前で立ち止まる。

「おい、メガネ! 何だよ」
胡乱な瞳をネスティへ向けバルレルが悪態をつく。
「その言葉を君に返すよ」
応じてネスティも皮肉混じりの口調で返答を返した。

バルレルは盛大に舌打ちして予告なしに扉を開ける。
後にバルレル・ネスティ両名はこの時を振り返りこう語る。


 見なきゃ良かった、あの時(タイミングで)。と。


兎も角、バルレルが扉を開けると見知らぬ少女が涙を零して泣いていた。

二人は見知らぬ美しい少女を呆然と眺める。
正しくは、姿形が元に戻って泣いていた を、だ。

蒼い髪と蒼い瞳。
成長途中をうかがわせるしなやかな肢体。
床に座り込んだ姿勢のまま、髪も乱したままで泣いている。

青い光が少女を護るように周囲を漂う。
降り積もった清らかな雪色の肌。
淡く桃色に色づいた指先で涙を拭う仕草も美しい。

「……ネスティ? バルレル?」
扉の前で石化していた二人の名を、その少女が呼んだ。

澄んだ声が二人の名を呼べば、ネスティがバルレルを部屋へ押し込み。
急いで扉を閉める。

外界からこの少女を護るかのように。
彼女から感じる居心地の良い空気は、優しく二人を包み込んでいた。

「おい、まさかお前 ……なのか?」
少女の瞳を覗き込んだバルレルが驚愕の声を発する。

感じる魔力の波動。
まったくもって と同じ。
人が持つ魔力の波動はそれぞれに違い、同じものはまずない。
双子のように近い波動というのは存在したが。

「? ああ、封印が解けてしまっていたか」
ネスティとバルレルの様子がおかしい。
訝しく思っていた は己の姿に苦笑した。

「本当に、神、なのか? 君は」
手触りの良い蒼い髪。
一房手に取ってネスティが呆然と問いかける。

「やだなぁ、お二人の部屋はココじゃないですよねぇ?」
の神秘的な姿に圧倒されていると、真打登場。
バルレルとネスティの背中を冷たい汗が伝う。

それでも根性で背後を振り返れば、目がまったく笑っていないカノンが仁王立ちしていた。
仁王立ち、でである。

「まったく……油断も隙もありませんね。マグナさん同様、遺書の準備しておいて下さい。 さんの正体を今ばらしたら。確実にボクが殺しますよ?
真っ二つ縦に割って再生できないようにしますから♪」

 怖いなんてモンぢゃねぇよ。

バルレルは後にあの時の恐怖をこう語る。

カノンの凄まじい怒気に曝され成す術なし。
尻尾を捲いて引き下がるしかない。
カノンは別として、 の気配が心地良かったので当面は黙っておこうと。
決めた二人であった。



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 カノンさんは逞しくなりましたねぇ。主人公はちょっと可愛くなったかも(笑)ブラウザバックプリーズ