『話題休閑・祭りの夜3後』




姿を封印して戻った を待ち構えるのは、仁王立ちしたカノン。

カノンの迫力に肝を冷やすリューグを無視した形で説教は始まった。

「いいですか!?  さんは強いですけど、狙われやすいんですよ。あれ程無断で行動しないとボクに約束したじゃないですか!」
正座した の真正面に同じく正座。
カノンはバツの悪そうな に詰め寄る。

「し、しかしカノ」
「言い訳は無用です。これ以上秘密裏に行動なさるつもりなら、ボクだってバノッサさんを呼ばざる得ない状況になるんですよ。分ってますね?」
の言い訳など無視。
額に青筋を浮かべて説教するカノンを宥められる人物はここには居ない。

ガウムなどはすっかり諦め、体を丸めて眠る体勢に入っていた。

「バノッサ兄上を呼んだら、大量殺戮となるやも知れぬではないか!!! 丸く収まるものも斬って捨てられるぞ」

バノッサ(兄)の事だ。
事情を聞いたら速攻でレイムを屠り、次に怪しい召喚師達を闇へと送るだろう。

次は黒の旅団とマグナ一行。

殺しはしないだろうが、極限まで彼等をバノッサが追い詰めるのは目に見えている。

下手をしたら金の派閥も蒼の派閥も壊滅的な打撃を受けるかもしれない。
被害が拡大すれば、デグレアを含む旧王国と聖王国もターゲットに含まれる筈だ。

一気に顔から血の気が引く を見て、リューグは珍しいモンを見たと。
呑気に考えた。

さんの行動を見る限りでは、そうしたいとしか考えられませんけど?
バノッサさんに連絡が行ったらクラレットさんだって、トウヤさんだって黙っていないでしょう。キールさんとカシスさんは幾分冷静かもしれませんが?」

挑発的にカノンが言えば、 は勢い良く頭を左右に振って否定する。

「サイジェントから兄上や姉上……最凶破壊集団を呼ぶでない!!! 我等の悪名だけがリィンバウムに轟いてしまうではないか!!!」
両手で頬を押さえ悲鳴をあげる の台詞内容は穏やかでない。

「そうですねぇ……下手したら未来永劫恨まれますね」
他人事のように言うカノンだって関係者だろうに。
涼しい顔で惨事が起こると を脅しに掛かる。

カノンの背後を漂う黒いものを目撃してリューグは頬を引き攣らせた。

「ボクだってそんな事態を招きたくないですよ、正直言いますと。ですが さんに」
「分かった! 分かった。我が悪かった。この通りだ、カノン」
畳み掛けるカノンの言葉を今回は が遮り、ひたすらにカノンを拝み倒す。

の縋るような視線を受けカノンは嘆息した。

元よりこの庇護者を苛めるつもりもないのだが、灸を据えておかなくては際限なく暴走される。
カノンの気持ちを理解しているのか、していないのか。
上目遣いにカノンの顔色を伺うはリプレに叱られた時と同じ顔だ。

「分りました。今日はこれでお終いにしましょう」
カノンだって今晩の説教は本意ではない。
の頭を撫でてこの件はこれにて終わり。

 最凶破壊集団ってどんな兄姉なんだよ……。
 こいつ等の謎は果てがねぇな。

とカノンの会話を聞き流し、リューグは当事者ではないのに冷や汗を掻いていた。



Created by DreamEditor                       次へ
 主人公が本来の姿で祭りに行ったのはマグナ達に偶然あったときのカモフラージュ。
 魔力は極力封印してます。誤算はカノンに説教された事でしょうか。ブラウザバックプリーズ