『話題休閑・波乱の港2後』




レルム村の静かな夜。
満天の星と輝く月を見上げ、カノンと (頭にガウム)はのんびり月見タイム。

ホットミルクが入ったマグカップを片手にのんびり寛ぐ。
アグラバインの家の前。
村を見下ろす小高い丘。

少々の肌寒さを無視すれば概ね過ごしやすい夜である。

「トリス達は港のある町に到達したようだ」
トリスにお守りだと告げて渡した髪を結ぶ紐。
一年前のサイジェントではショートボブだった の髪も肩下まで伸びている。

対になる紐を手に は離れたトリス達の状況を垣間見た。

「港町ですか、サイジェントやゼラムとは趣が違いそうですね〜。あれ? でも、本当はアメルさんのお祖母さんの村を訪ねるんじゃぁ……?」
の呟きに応じてカノンが口を開く。

事情を知った 達にはアメルの祖母の村が存在しないのは分っている。

だが知らないアメルはまだ見ぬ祖母を頼って村へ向かおうとしていたのだ。
あの夜、月明かりだけを頼りに。

「あの騒ぎで逃げたのだ。方向を間違えたのだろう。しかも金の派閥の本部がある町らしいな」

トリスの強大な魔力があるからこそ出来る映像の共有。
プライバシーまで覗く等、無粋な事はしないが。

目に飛び込む活気ある港町の風景に の気持ちも弾む。

「でも大丈夫ですよ。シオンさんがトリスさん達の後をついて行きましたし」
完全に蕎麦屋の大将になりきっているシオン。
薬屋とは違う商売を楽しんでいたシオンの横顔を脳裏に浮かべ。
カノンは笑う。

「キュ」
「そうだな、シオンの蕎麦も美味であった。ガウムが気に入ったお稲荷も海辺で食べれば各別かも知れぬ」
ハサハと同じでお稲荷さんを気に入ったガウム。
すかさず自分の意見を主張するガウムの意見を否定せず、 は海へと思いを馳せた。

海の比率が大きく暗闇の宇宙から見える地球を髣髴とさせる、海の青き水面へと。

「海、見てみたいですね」
カノンも多少は旅に対する余裕が出てきたか。
ちびちびホットミルクを口にしながら見た事のない海へ心を飛ばす。

「リューグがどう己の気持ちに折り合いつけるか分らぬが、アグラバインとの約束を違えるつもりは無い。次はその港町、だな」
「キュ、キュ、キュッ!」
この先を特に決めていなかった の、明確な意思表示。

アメルを守ると約束した、覚悟を決めた の表情に凛々しさが戻る。

「はい、 さん。魚料理も味見して帰ったらバノッサさんに作って上げましょうね」
今頃仏頂面で告発の剣亭辺りで食事を取っているであろう、バノッサを思い浮かべ。
カノンは表情を緩める。

「うむ、バノッサ兄上にも是非味わってもらわねば」
剣を振るう腕は繊細なのに、料理の腕はからきし。
兄を思い出し もガウムが頭上で跳ねる感触を味わいつつヘニャリと笑った。



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 心配してきたキールを酒で潰すのがスタウトで、呆れつつ助けないのがバノッサ。
 様子を見に来たカシスに怒られ兄ズは帰る。なんて光景が告発の剣亭で繰り広げられているでしょう。
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