『話題休閑・誰がための剣2後』




リューグとロッカに呼び出され、 はモーリンの道場の屋根に座っていた。

「色々、勘違いしてたみたいなんだ。ごめん、
ロッカが申し訳ない顔で に謝る。

話を聞きつけたシャムロックとルウも加わって、中々賑やかな屋根の上。
ロッカの謝罪に心当たりが無い。

は何度も瞬きをした。

「あのね? って言動がシルターンの人みたいじゃない? 行動も大胆だし……だからルウ達、 の事を男の子だって思ってたの」
ルウが一気に捲くし立てて へ説明する。
「ああ、そんな事か」
気まずい顔の四人を前に、のほほんと が呟く。

基本的に無性別。
けれどそれでは拙いとクラレットによって決定された の正式性別。
性別で行動を変える ではないので、実質問題は無い。

「そんな事、じゃないだろう!!!」
ここで何故か逆切れするのがリューグで、怖い顔をした。

「そうですよ さん。わたしだって最初は さんを少年だと思ってましたから」
恥ずかしそうに申告するシャムロックは項垂れる。

騎士として誇りを、名誉を、礼節を重んじるシャムロックとしては己の勘違いが恥ずかしい。
さっきミニスに説明を受けて、ユエルと一緒に絶叫したのはシャムロックとミニスとユエルだけの秘密だが。
兎も角、義理堅いシャムロックは へ謝罪しておきたかった。

「幾ら強いからって は女の子なのよ? 大怪我とかしたら、カノンに申し訳ないじゃない。それにサイジェントって街にはお兄さんやお姉さんも居るんでしょう?」

家族が居る少女を戦いに借り出した挙句、怪我をさせてしまったら元も子もない。
強いからといっても相手は軍隊。
油断して良い相手でもないのだ。

ルウが咎める口調で言って の前髪を乱暴に乱す。

種族が人でない であっても、性別が少女となればルウだって扱いがこうも変化してしまう。

 こうやって無駄に心配されるから。
 だから嫌だったというのもあるのだがな……。

深く関わったマグナ達へは説明したが、まだ の正体を知らない者も居る。

そんな中で自分が女の子だと認知されれば何かと面倒だ。
考えた はだからこそ黙っていたのに。

 ええい!
 パッフェルもミニスを使って我の性別をバラすなど、味な真似を!!
 カイナもカイナだ。パッフェルと一緒になって動きおって。

ほくそえむパッフェルにしてやられた であったが、真剣に叱ってくれるルウやシャムロック、ロッカ&リューグの言葉は嬉しい。

「わざと隠しておったわけではないが、矢張り性別によって差別されるのは嫌なのだ。この世界には男女平等という精神が根付いておらぬからな」
嬉しさを隠してついつい照れ隠しに悪態をついてみる。

 ぷぅ。

子供らしく頬を膨らませ拗ねる の表情は、言われて見れば少女らしい、かもしれない。
自覚するどころか無頓着な発言に、 を除いた全員がため息をついた。

 今時女性だから、とか、男性だからとか古いぞ考えが。
 金の派閥とてファミィが議長を務めておるではないか!!
 しかし何故大事になるのだ???
 ミニスとて我と同い年くらいの少女であろう???
 我の外見年齢と比較するなら。

「ミニスは と違って弁えてるから心配は少ないんだよ」
の浮かべる不思議そうな顔に、ロッカが苦笑いを浮かべて疑問に応じる。

「では」

 ユエルとて豪胆ではないか!!
 年齢からすれば我の外見年齢と同じほどであろう。

等と考えて は口を開く。

「ユエルは幼いながらも、やって良い事と悪い事を教わってますからね。
貴女みたいに、自分が手痛く扱われると分っていて罠に飛び込んだりはしません。我々の意見にも耳を傾ける余裕を持っています」

言いかける を制してシャムロックが先手を封じた。

 むぅ……!!!
 これでは一昔前のサイジェントと変わりがない!!!


すっかり臍を曲げた が口先を尖らせそっぽを向く。

兄バノッサの家に住んでいてもそうだったし、告発の剣亭へ遊びに行ってもそうだったし。
フラットのメンバーと花見や祭りのイベントを楽しんでいてもそうだった。

腕に覚えがある の身の安全など気にする必要が無いのに、悉く言われる言葉が『危なっかしい』である。

唯一の味方に近いガゼルも辟易するくらいの過保護集団と化す家族と仲間。
治安も安定してきたサイジェントで騒ぐのもアレだったので、憂さ晴らしに地球で暴れていた だったりする。

 我は神だし、サイジェントの皆も認めておる筈なのに、何故信用されぬのだ???

一重にそれは自身の行動が奇天烈だから、なのだが。
生憎ツッコミ役のハヤトやジンガが不在のファナンの夜空。
星と月だけが を優しく照らし出す。


って器用貧乏すぎるのよ。見ていて危なっかしいって思うもの」
機嫌を急降下させた から少し距離を置き、ルウが小さな声で三人に言う。
「ああ、分ります! 小さい頃のアメルを見てるようでハラハラしますね」
小さく手を打ってロッカが何度も頷いてみせる。

聖女と呼ばれる前の村の少女だったアメル。
兄代わりとして何度心臓の止まる思いをしたことか。
昔から血の気の多いリューグと御転婆のアメルに囲まれて苦労してきたロッカである。

「フォルテさ……フォルテの幼い頃にも似ていて……目が離せません」

身分に反比例する豪快っぷり。
の、フォルテに似ているし、しかもフォルテとあれだけ打ち解けているのだ。

シャムロックも違った意味で を案じ始めていた。

「はっ、結局 が自覚できないから問題なんだろ」

付き合いの長さはこの面子の中で一番。
それでも掴みきれない の個性。

総括してリューグが締め括れば残りの三人が渋い顔をする。

「んな事より、一緒に月見してやれよ。ああ見えて案外寂しがり屋なんだぜ」
リューグが続いて三人に声を潜めて言う。

三人から少し距離を置いて月を眺める の横顔には寂しさが混じっていた。

体育座りをして膝に顎を乗せた
夜風が前髪を揺らす。

まずはルウとロッカが笑いつつ の両隣に座った。
シャムロックが目線でリューグに合図を送り、 達の背後に陣取ってファナンの星図を講釈し始める。


「お、俺も混ざりたい」
「駄目ですよ〜、マグナさん♪ 明日の晩、自力で さんを誘ってくださいね」
屋根の下では恨めしい顔のマグナと、笑顔のパッフェルの姿が見受けられたそうな。


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 徐々に色々打ち解ける主人公。でも心配しかされない……。ブラウザバックプリーズ