『番長繋がりの賜物2』


ペースに包まれるスマル・プリズン。
均衡を破るのは の裡に住むペルソナ達である。

《適切な対応を。遊ばずに》
麒麟が至極冷たい声音で言い放つ。

《何事も平和的解決は素晴らしいですわ!! 争いを起こす前に、争いを諌める。とても大切なことですもの》
と、パチパチ拍手しながらフォースが。

《低レベルな争い治めて天狗になるのもどうかと思うけどね》
そしてフォースの日和見発言にルーが直ぐ反発し。

《あー、 ? まずは克哉の説明をきちんとしてあげたら?》
最後に。咳払い込みでソルレオンが に忠言した。

「分りにくかったか。克兄はメット頭のお兄さん。んで、バイト帰りのわたしを補導しようとした大胆掲示(刑事)〜!!」
再度言い直した の顔を、驚きと驚愕を持って観察し始める達哉。
あの兄をあだ名? らしき愛称で呼び、しかも。

 掲示じゃないだろう? 刑事だろう???

不思議系なのかこの少女。
はしゃぐ のつむじを見下ろし、達哉は密かに自問自答。

「……余計なお世話だろうけどな、メット頭って周防のあだ名か?」
言い難そうに栄吉が挙手して発言する。
は満面の笑みを湛えてヘラリと笑う。

「ズパリなあだ名でしょ! それか候補としては周防弟だけど、どっちがいい??」
突如名指しされ達哉はたじろぐ。
「若しくはメッティー」
どっかの金融CMに出てきそうな、小型犬に似た瞳。
期待に満ちた の目線を避け、達哉は無表情のまま悩む。

『どれも駄目だ』こう言い出せずに、ほとほと困り果てて。

「二代目さん。周防さんは七姉妹の有名人です。貴女にその気がなくても、彼のファンが貴女を謝って認識するかもしれない。周防さんの品位を貶める下品な女だと」
黙って成り行きを見守っていたブチョーがここで口を挟む。

「ここは一つ、周防弟が一番無難な呼び名かと」
ふっくらした頬で形作るブチョーの笑みは人を安心させる。
付け加え、妙な説得力を発揮して は思わずうなずいた。

「彼女は、リサ=シルバーマン。七姉妹学園の二年生ですよ」
魂を半分飛ばして一人悶えるリサを目線で示し、ブチョーが尚も言葉を加える。

「ほえ〜、わたしよりお姉さんか〜」
背も高いし、雰囲気も少し大人びている。
リサを一瞬だけ羨ましそうに眺め、 は思ったことを正直に言った。

「なーんか、話しズレたね〜」

 はっ。

なんて雰囲気で が横道に逸れた話の軌道修正をすれば、 を除く全員(恍惚としているリサも除く)が肩を落とす。

 その不思議っ子オーラのせいだっ!!!

内心考えたことは口には出さない。
が、内心では始めて遭遇した面々が に対して同じ感想を抱いていた。

「コホン」
口元に手を当ててブチョーが咳払いをする。
ともすれば、 の言葉一つで流れそうな場の雰囲気を引き締めるためだ。

「噂が現実になる。奇妙な助言を頂いての現在。真相を確かめる価値はあります」
この面子の中では一番の識者で常識人。
ブチョーの提案に全員が互いに顔を見合わせる。

「噂の現実かぁ……あっ! そうだ! ジョーカー様、やってみない?」
口を尖らせて考え込んでいたリサが目を輝かす。

視線の先には達哉が居て、リサが達哉に好意を抱いているのが一目瞭然。
顔を引き攣らせる栄吉と苦笑するブチョー。
ほうほう、なんて短くうなずき納得する
ついていけない栄吉の子分達。

「理想を叶えてくれるんでしょ!? 駄目元でやってみない??」
チラっと達哉を見詰めるリサに。
その視線から必死で逃げる達哉。
静かなる攻防を興味深く見守るブチョー&

、遊ばない。困ってるじゃないか、周防弟》
咎めるルーの指摘に我に返って はリサを凝視する。

「あ、メンバーはわたしと??」
言い出したのが自分なのでリサは自分を指差し全員を見た。
すると、栄吉の二人の子分がおずおずと挙手する。

そんなこんなで、ラジオでも噂の『ジョーカー様』は決行された。

リサと子分達が次々に手順を踏んでいく。
遠巻きに見詰めながら、 は達哉から刺す様な視線を頂戴していた。

 あ、あれれ??? わたし、何かしたっけ???

キョトンとした顔で達哉を見返す

本人は悪気はないが、変なあだ名をつけられ。
挙句身内とも面識があるらしい は、達哉にとっては警戒すべき人物に位置づけられる。

それに彼女はクラブで出会った、二代目と呼ばれる少女だ。

「聖エルミンの城戸さん。わたしの先輩なんだけど、喧嘩の師匠なの。
裸番長って有名? よく分からないんだけど、妹みたいに可愛がってもらってたら自然と二代目って言われちゃって。
周防弟が七姉妹で勝手に騒がれるのと似たようなモンだよ、わたしも」
不思議と格好良い部類に入る達哉に気後れしない。

 イケメンだって思うし、素直にすっごーいって思うんだけど。
 ホレるって感じじゃないんだよね〜。
 友達って感覚が強いかもしんない。
 黒っちに感じたみたいに。

セベクの時で既に免疫がついてしまった
ちょっとやそっとじゃ動じない。
一人で神取と対峙した時と比べたら、達哉など可愛いモノだ。

「克兄とは二回しか会ってないよ? 補導されかけて間違いだって分ってもらって。
んで、そのずーっと後。一ヶ月くらい前に放火犯を見かけて。ジジョチョーシュされたよ」
達哉の視線の意図半分。
汲み取って真顔で は返事を返す。

「放火……?」
険しい顔つきの達哉。
「うん。周防弟も巻き込まれたの? 前にそーゆうコトがあって、放火は許せないんだって克兄怒ってた」
他の誰にも聞こえぬように小さな声で。
が喋れば達哉は少しばつが悪そうに俯く。

 馬鹿かと思ったら違う。
 この不思議生物は頭もソコソコ良い。
 能天気だけじゃなく、一応シリアスも出来る。
 ……誰かに似てる気がする?

鉄面皮を装いジョーカー様儀式を見守り、達哉は内心 に対する評価を訂正した。



Created by DreamEditor                       次へ