『異界の誘い2』
エルの杖に導かれ(無理矢理・強制?)出会ったのは不思議な人々。
(語ってくれた彼等に大変失礼である)三番手の最年少・レナと名乗った少女は暫し考え込む。
『そうねぇ。分かりやすく言うと。最初に会った、おにーさんが初代グライアス。次に会った少年がグライアスの生まれ変わり。これはOK?』
うんうん。それは分かった。でも『ぐらいあす』ってなんなのさ?
端的に説明するレナに は勢い良く首を縦に振った。
連続で振ってしまい、少々気分が悪くなってしまっているが。
うぇ。
胃を擦る、気分の
にレナは片眉を持ち上げる。
『グライアスってのは、魔獣の王の名前。代々、エルの杖が主と認めた人物がグライアスになるの。
で、誰が選ばれるかってーと。基準は、強さじゃなくて調和の力を持っているか、らしいのよね』
砕けた口調と飄々とした態度。
外見は幼いのに堂々たる空気を纏った正に王者。
レナの振る舞いに
は関心頻りである。
『あたしの住む世界は結構平和で。まぁ、世界を滅ぼそうと思う馬鹿なんかは居たりしたんだけど、あたしの恋人&その兄が世界を救ったのよ。あ、それは置いといて』
レナは説明しながら心持ち得意げに胸を張る。
『兎に角。エルの杖に選ばれた人物が“魔獣を守り、民を守る為の行動をどこまで取れるのか”また何処まで調和を大事に出来るか。
行動が伴ってこその肩書き。それがグライアスの名の意味よ』
うっそ。王、ってそういう意味で皆言ってたの!?
一人で背負うの!?
『……一人だと思うか、皆と一緒だと思うかは貴女次第ね。次代のグライアスが不在のあの国を立て直したり、あたしも色々大変だったけど。でも後悔は無いわ』
レナの子供らしい可愛い声と、唇から漏れる堅苦しい内容の台詞。
ギャップがあるのに違和感はない。
『グライアス・ド・レナは新たなグライアス、
を祝福します』
レナの手に握られる光の棒。
それが本当のエルの杖?
目を丸くした
にレナは首を横に振った。
『物事の本質は変わらない。でもどれが本当で嘘かは自身で決めるもの。これがあたしにとってのエルの杖。
のエルの杖とは違う』
レナは光の棒を一振りして真っ白い空間に目も眩む光を流し込む。
『覚えておきなさい。グライアスの名は貴女が取った行動に付く名。決して貴女の資質だけに与えられる肩書きではないことを』
遠ざかるレナの姿。
ゴトッ。
足先を襲う鈍い痛み。
「いったーい!!!」
叫ぶ と驚くペルソナ二体。
が見ていた筈の白い空間は消え、目の前には御影遺跡が。
空は灰色で不気味な雰囲気が漂う町の空気に変化なし。
「あー、やっと分かった。わたしは何代目かのぐらいあす、で。だから王って言われて。んでエルの杖が必要だと」
ハランバンジョー、人生だよね。
なんて考え、
は実感できない単語を口に出す。
《平たく言えば、そうよ》
ソルレオンの鬣に指を絡める を、ソルレオンは咎めもせず。
の考えに言葉を返す。
は変な声で唸って手にしたボロボロの杖へ目線を落した。
「素質は一応クリアってカンジ? ピンとこなかったんだけど、この事件とわたしがグライアスだってことに関連あんの?」
がエルの杖に誘われて出会った人々と。
聖エルミンの彼等とはどう考えても接点がない。
逆にあったら怖い。
《無関係だと思うなら無視すればいい。平穏な貴女の時代に戻ればいいのよ》
が素朴な問いを発した。
問いを受け、ソルレオンは先ほどから何度も問いかけている内容をもう一度音に出す。
「あっ……」
流石に
も気付いて、失敗を怒られた時の困った・恥ずかしい顔になる。
「そうだよね。わたしは麻生さん達を無視できない。単純な好奇心なんだけど。それにエルの杖が必要ってことは、ぐらいあすの力が必要。
つまりマイちゃんが言ってたのは、わたしの持つ資質が必要だってことだよね」
片手でエルの杖を持ち直し、もう片方の手を握ったり開いたり。
感触を確かめる。
するとエルの杖は手のひらサイズまで縮み、 の胸ポケット内へ納まった。
エルの杖自身が意志を持ったかのように。
「でも? 資質を使うってどーするの?」
の更なる質問に麒麟が気の毒そうな視線を
へ送る。
《調和の力。歴代のグライアスが持つ『調和の力の元』を
は持っている》
ソルレオンは遠くを見る、懐かしむ目つきで説明し始めた。
《元を力として使えるかどうかは、
次第。貴女が何を望み、何を願い、何の為に戦うのかにより。全ては変化する》
が甘えてソルレオンの鬣に顔を寄せる。
幼い頃は疑問も抱かずこうやって甘えて。
見守ってもらって。
優しいけど怒ると怖いライオンママ。
思い出した記憶を確かめる と真剣に説明するソルレオン。
ソルレオンが小さく唸れば
は小さな声で答える。
「聞いてる、ちゃーんと」
《セベクスキャンダルを起こした彼らは、単純に彼らの都合で動いているわ。でもあのシステムとシステムを操る人物の思惑を超えて。良くないモノがデヴァ・システムに入り込んでしまっているの》
擦り寄る
に首を動かしその頬を一舐め。
《しかも聖エルミン生である彼等には駆除できない。ペルソナ能力で対抗は出来るでしょうけどね。
、貴女の能力でなければ排除できない異物なの》
説明し終わるソルレオンに。
驚きの連続を体験する 。
固まって心の中で思いっきり動揺している を。
麒麟はもう一度気の毒そうな目線で見た。
「世界を守る為に戦おう〜!! ってコト?」
《自分の住む場所を、御影町を守る為の戦いね》
事件を世界レベルで表現した の言い方を素っ気無く訂正。
ソルレオンは、数年ぶりに会って根本は変わらない。
の考え方に無意識に口角を緩めていた。
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