文学では「萱草」と書いて【かんぞう】【わすれぐさ】と2通り読み方がある。その他 【忘憂草】【忘れ草】【わすれ草】【忘草】と呼ばれている花はすべて萱草の花を指している。由来は中国の古い故事にあり、既に万葉集などでは大伴旅人の歌に読まれているように、この花を身近に置いたり、身に着けたりすると、心にかかる悩みを忘れさせてくれるという言い伝えになっていた。





ユリ科の多年草。道端や田の畦などに咲く。葉は萱(かや)のように細いが、花はユリに似た姿をしている。八重咲きがヤブカンゾウで、一重咲きはノカンゾウと呼ばれる。中国の帰化植物の一つで別名忘れ草という。花の美しさにウサを忘れるからと言う説もある。 花期は7月〜8月。

同じカンゾウに「甘草」「莞草」があるがこれらは全くの別種でマメ科で薄紫の蝶形の花を穂状につける。漢方薬として胃腸薬などに広く用いられる。






夏の草原や田の畦などにユリに似た黄赤色の花を咲かせる。日当りがよく、湿った地に主として自生するが、鑑賞用の園芸品種として栽培されるものもある。高さは60センチくらい、線形の葉が根元から生じて柔らかく垂れる。
ヤブカンゾウの内側の花弁は雄しべが変化したもの。

午前に開いて夕方に萎む一日花のため西洋ではデイ・リリーと呼ばれている。キスゲ、ニッコウキスゲ、ユウスゲなどは同属。





萱草は山菜料理にも用いられる。ヤブカンゾウもノカンゾウも調理法は同じ。山菜としては食べ易い。地上から伸びた若葉の頃、白い茎をつけて切り取る。茹でて水に晒し絞った後、酢味噌や辛子和えにしたり、天ぷらやおひたしにもできる。
蕗と同様に繁殖力が旺盛なので庭に植えておくと早春の味覚が味わえる。我が家では蕗と萱草が入れ混じって生え、どちらも根茎で増えていくので放っておくと夏までに地面を覆い尽くすようになる。






萱草の蕾を蒸して乾燥させたものが、「やまゆりの花」「金針菜」の名で漢方薬として市販されている。利尿作用があるといわれる。