第四章




ある夜、こんな夢を見た。

人を恐れていた。
信じるだけ、バカを見ると思った。
裏切られるなら、誰も信じないし、自分自身さえも信じられる対象ではなくなってた。
でも、
人を信じることを忘れかけていた僕に、信じる、ということを思い出させてくれようとした友達がいた。

誰かわからない。
人が、僕に背中を向けて歩いていた。
何度呼びかけても、何度呼び止めても、ひたすら前を向いて歩いている。
ふと、立ち止まり、振り返る。

哀しそうな目。今にも泣き出しそう。
俯いて僕の足元を見つめる。

そんな人に、僕は声をかけることが出来ない。
一緒に居てほしいのに。
去って行ってしまう人を引き止める力が僕にはなかった。
心の中では、
「一緒に居て!去っていかないで!一人にしないで!」
ずっと叫んでいるのに、声にならない。
人には届いていない。

再び人は僕に背を向けて歩き始めた。
声にはならない涙を流し、見つめ続ける。
また、裏切られた、置いていかれた、見捨てられたという絶望感だけが残った。

信じることが怖い。
震えが止まらない。
僕は、涙の泉に沈んだ。





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