第二章




 風を感じた<空物>はすべてがあまりにも多すぎたため、すべてを一心に受け止めることが出来なかった。しかし受け止めることが

出来なかったことがよかったのかもしれない。なぜなら、勢いに押されて、飛んだから。気持ちが。ストッパーが。闇が。過去が。何かに

目覚めたように、動き出した。すべてを受け入れたいとするように両手を大きく広げて精一杯深呼吸する。闇の中で暮らしていた、何

の変化もない日常から一転して何も考えない、何も感じない心ではなく、有色多彩な考える<空物>へ。

 <空物>はどんな存在意味を持つのか。そもそも<空物>は何なのか。<空物>自身はそんなことを考えることもなく、ただ日々が

過ぎてゆくだけなのだろう。何をせずとも日々は過ぎてゆく・・・そんな甘い考えの中で。考えがあるのかどうかさえ、あいまいな<空物

>だったあの時から変わった。

 

 あの瞬間から<空物>は考えをもったと思う。考えたから両手を大きく広げて精一杯深呼吸したのだろう。<空物>は何か。それは

<空物>自身今すぐには答えることは出来ない。なぜなら、今考えを持ったばかりだから。あの瞬間からいろんなことを考えて行動す

るようになったから、まだ何かはわからないような顔をしている。もう、誰からも<空物>と呼ばれなくなるまで気長に待った後、再び<

空物>とは何か、と問い掛けてくれ、と言っているように。その時はきちんと答えられるだろう。いろんなものを見、いろんなものを感

じ、いろんなことを考える。考え方が豊富になり、<空物>自身の考えが確立された頃を見計らって、何かを問い掛ける、または問う

人自身<空物>を分析する。

 どんな存在意味を持つのか。弱々しくも永遠を感じさせていた音と共に試行錯誤しながら考え、瞬きもしていたか、していなかったか

曖昧だった時と、両手を大きく広げて精一杯深呼吸した時を思い返す。するときっかけは簡単だったろう。子供が興味本位で開けただ

けのことで<空物>は変わった。変われた。子供が闇を吹き飛ばしてくれたおかげで一歩を踏み出すきっかけをくれて、これから何を

したらいいかと考えることが出来るようになった。

 そう思うと何故<空物>と呼ばれるようになったのか、という疑問が生まれてくると思う。そもそもの理由もまた、少しのきっかけがあ

った。しかし、それは<空物>にしかわからない。誰の日常にも<空物>になるきっかけは潜んでいる。ただそれが潜んでいるだけで

終わるか、公に出てくるかは、その人が何かのきっかけにぶつかるかどうかだと思う。もし、<空物>になってしまったとしてもそれは

ただの通過点に過ぎない。この<空物>がそうでなくなったように、いつか闇から抜け出し、一歩を踏み出せるから。闇は永遠には続

かない。
 

 

書き始めた頃、千里は空物になりたかった。考える事を止めたかったんだと思う。ちょうど詩「雲になりたい」と同じ頃に書き

始めて最近「空物ライフ」が完成。1ヶ月半〜2ヶ月ほど前の一時期、本当に嫌なことが重なっていた。今は解決へ向かって

いるからそのときのことを思い出したくないからあまり思い出さないけど、空物になれたら。。。雲になれたら。。。と本気で思

ってたんだろう。そんな思いをこの<空物>に乗せて、千里も<空物>と共に成長してきた。まだ千里は<空物>に追いつ

けていないけど・・・。

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