第1話 
 瑞穂と大和 

 


【3年A組、早沢瑞穂。今すぐ職員室の山井まで来なさい。】

「瑞穂ー!なんかやったの?」
 『やってねぇーっつーの』

「山井ちゃんに殴られないよにねー!笑」
 『山井は殴らねーって』

「おい!早沢!なんか言えよ!」
「早沢なんてほっとけって。あんな親の力でここ(私立中)入ったようなやつ」
 『親なんて関係ねーし』

「あいつ、外でやばいことやってんじゃねーの?誰かが見たって・・・お前知ってるか?」
「マジで!!派手な顔立ちだけどそれはねーんじゃねーか?綺麗だけどなぁ。」
 『誰がやばいことやってんだよ。自分で見てねーのに勝手に言ってんじゃねーよ』

「失礼します。山井先生、なんですか?」
「早沢、お前高校どうするんだ?成績には問題ないんだぞ?問題ないどころかお前なら結構良いところ狙えるはずなんだけどな。
 それを希望調査で白紙で出しただろ?」
「高校なんてめんどくさいんで、いけること行きますよ。今はまだ決めてないだけです。」
「いいところに行こうとは思わないのか?」
「別に。いい学校に行った所でなんかあるんですか?」
「いい大学にもいけるだろうし、いい会社だって・・・」
「いい高校、いい大学、いい会社・・・だから?」
「だからって・・・・・」
「私は私のやりたいようにやります。先生にも別に迷惑かけませんのでご心配なく。用件はそれだけですか?」
「あぁ。そうだが。」
「では、失礼します。」
「あ!早沢。もう少し協調性を持てよ。社会に出ると大変だぞ!」

「おい!瑞穂!」
「何?・・・大和。こんなとこで何やってるの?」
「そんなことはどうでもいいんだよ。お前なぁ、クラスの奴らにもうちょっと愛想よくしろよ。」
「だってあいつら余計なことしか言わないじゃん。相手にするだけ無駄だよ。」
「なんで?あいつら結構いいやつだぞ?」
「大和うるさいよ。心配してくれるのはいいけど、余計なことは言わなくていいよ。私はこれでいいと思ってるんだから。
 ほら、よく言うでしょ?小さな親切、大きなお世話って。」
「そうだけど・・・おい!どこ行くんだよ!」
「え?屋上。次の授業さぼるわ。じゃね☆」
「待てよ!!待てって!瑞穂!」


「はぁーーーーーーー。今日もいい天気。ばかなやつらがいなくてせいせいする〜」
「・・・。」
「果てなく〜続く道で♪ あなたは何を見つけただろ〜う♪ どこかに行きたい気持ちも♪ この大空のもと・・・」
「・・・・ねぇ。」
「!?」
「ねぇってば。いつもここで歌歌ってるの?授業さぼって。」
「あんた誰よ?あんただって授業さぼってるじゃん。人のこと言えないって。」
「あたしはいいの。ここの学生じゃないし。ただこの眺めが好きなだけ。名前は?」
「・・・瑞穂。ここの学生じゃないのに何で屋上に入れるのよ!」
「瑞穂ね。そんなのどうでもいいじゃん。ねぇ、あたしと話しよ。なんでもいいよ。愚痴だったら愚痴聞くし。
 ほら、山井の愚痴とか?笑。」
「ちゃんと答えて!なんで・・・?それに山井先生のこと・・・・・」
「しいて言えば秘密のルート見たいなもんだよ。ほら、答えたよ。面白い話の一つでもしてよ。それとも面白いことなんて一つもない?そうだよね。クラスで大和とか言う人しかほどんど話しないもんね。なんでか知らないけどぉ?」
「あんた。。。『なんでクラスであんま話しないとか、大和ととしか話しないとか知ってるのよ!!』そういえばあんた名前は?」
「あたし?あたしは、修羅。」
「修羅?変わってるね。
 私はクラスの人達みたいな、ガキっぽいやつらとつるむのがヤなだけ。ただそれだけだよ。大和は昔から一緒にいたし、兄弟みたい
なものなんじゃないの?だからなんだって言うのよ。つるみたくないやつらとつるんだって楽しくないし、一人で居る方が楽なんだよ。」
「でもそれってなんか悲しくない?」
「なんで?断然気楽でいいよ。変な気使わなくていいし、自分のしたいことすぐできるし、いいことばっか!」
「でもなんか、強がってるように見えるよ?」
 『・・・なんでわかるの?』
「強がってるんでしょ?」
「強がってなんかないよ!」
「ならいいけど?大和は好きなの?」
「好きだよ。人としてね。クラスのやつらみたいにガキっぽくないし、一緒に居ても楽だしね。」
「あんたって結構ぶしょう者だね。」
「ほっといてよ!!」
「あっそ。あたし寝るね。誰かさんの歌で起こされたもんで。」
 『勝手に寝ろよ!』
「勝手に寝ろよ!なんて言わないでよ。じゃね、おやすみ〜。」
「はぁ!?」
 『なんでこいつ、言っても無いことわかるの?まさか・・・』

「大和!!大和!」
「なんだよ。小さな親切、大きなお世話なんだろ?もうほっとくからさ。」
「もうそんなことはどうでもいいんだよ。今すぐ屋上に一緒に来て!」
「屋上?今すげーきれいな眺めなんだよ!とか言うんじゃないだろうな?俺そんなにロマンチストじゃねーぞ?」
「私だってそんなロマンチストじゃねーよ。ちがうんだって!ここの学校の生徒じゃないやつに会ったんだよ!」
「何言ってんだよ。そんなやつが校舎に入れるわけないじゃん。走ってそんした。」
「私もそう思ったけど、私が言ってないことまでわかっちゃったんだよ。心で思ったことをずばっとだよ!クラスのバカどもが言ってるよう なことじゃなくてさ、本当にだよ!ほら、走って!!」
「うわっばか!押すなって!わかった、走るからー!」

「早く!・・・あれ?・・・・・・・・」
「瑞穂ー。その人はどこにいるのかな?」
「いない」
「いない?そいつ人間じゃねーんか?」
「人間だよ!さっきまで普通に私と話してたもん!」
「瑞穂だってクラスのやつらと一緒じゃん。これからはやつらのことバカにすんなよ〜。」
「・・・なんで居ないんだ?」
「寝ぼけてたんじゃねーの?」
 『寝ぼけてなんてない・・・。ちゃんと名前まで言ってたし・・・。』


「・・・修羅・・・・」



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《つづく》