オカピ
Okapi (Okapia johnstoni)

潤んだ黒目がちの瞳、ビロードのような暗褐色の毛皮、
そして前脚と後脚、臀部を彩る白い縞模様。
考えようによってはオカピほど、見かけが女性然とした野生動物も少ないと思う。
動物園で逢うと、決まって私は彼女達の前で意味も無く緊張してしまう。
まるで子供の頃に憧れていた年上の女性(ひと)に出逢った時のように。

オカピの学会への報告は、
動物学史上に措ける、20世紀初頭最大の発見と目されている。
発見者が初めて彼女達に出会った時の感動はいかばかりであったか。

人は彼女達を「キリン族の先祖の血を引く古代の忘れ形見」と呼ぶ。
だがその一方で、彼女達を
「一度は巨大化したキリン族が森へ戻って再び小型化した生き物」
と任ずる研究家も少なくは無い。
いずれの学説が正しいのかはともかく、
彼女達がキリンと多くの共通事項を保有しているのは
紛れも無い事実である。

機会があってオカピを見る事が出来たなら、
じっくり彼女達の動きを観察してみて欲しい。
貴方にもきっと、彼女達が保有するキリンとの共通項が見出せるはずだ。
<データ>

*分類*
哺乳綱 偶蹄目 キリン科
*分布*
アフリカ・コンゴのイトゥーリ森林地帯
*大きさ*
頭胴長2〜2.5m、体高1.4〜1.6m、尾長40cm前後、体重200〜250kg
*食性*
植物食。木の葉が主食。
*備考*
20世紀初頭になってようやっと世界に知られるようになった珍獣中の珍獣。
キリンの仲間だが、外見は蹄が二つに分かれたロバのように見える。
ビロードのような黒褐色の毛皮と、四肢と臀部に走るクリーム色の縞模様が特徴的。若干メスの方が大きい。
オスにのみ、一対の短い有毛のツノがある。
長い舌を持っており、主食の木の葉を巻き取るようにして摘み取ったり、
目元を舐めて掃除したり出来る。
長らく飼育下での繁殖が難しい動物だったが、
近年スイスの動物園で成功したのを皮切りに各地で繁殖するようになり、ようやっと長年の横ばい状態を脱する事が出来た。
日本でも近年横浜と上野の2箇所で飼育が始まり、横浜では日本初のオカピ二世が産まれている。