オニオオハシ
Toco Toocan (Ramphastos toco)

オオハシの、身の丈の3分の1に達しようとする巨大な嘴は、
初めて彼等と接したヨーロッパの航海士達を随分驚かせたようだ。

彼等が初めてヨーロッパ諸国に齎された時、
その頓狂な外見から多くの迷信が考え出された。
例えば、彼等は胡椒の実だけを食べて生きており、
その為非常に体温が高い…等と言う話が、
実しやかに伝えられていた。

加えて、この鳥の巨大な嘴は、
視覚的なメッセージを孕んでいるらしい事が最近示唆されている。
つまり、種類ごとに模様や色が違うので、
それを目で確認して仲間を判別しているようなのである。

勿論、彼等の摂食活動にもこの嘴は役立つ。
生い茂った藪から果物を選別して摘み取るなど朝飯前、
その嘴は、時に熟した巨大な果実から果肉を噛み取るナイフとなり、
時に隠れ潜む小動物を摘み取るピンセットとなる。

造化の妙、としか言いようが無い。
<データ>

*分類*
鳥綱 啄木鳥目 オオハシ科
*分布*
南米北東部〜中部の森林地帯
*大きさ*
全長55〜65cm(うち嘴の長さ20〜22cm)、体重550〜700g
*食性*
雑食性、木の実や果実が好物。小さな木の実は器用に摘んで放り投げて食し、大きな果実は嘴をナイフのように用いて細かく千切る。
昆虫やトカゲ等の小動物、猛禽類を含む他種の鳥の雛や卵も食べる。
*備考*
オオハシ類は旧大陸(アジア、アフリカ)のサイチョウ類に相当する、大きな嘴を持った樹上性の鳥達である。
なかでもオニオオハシは最も大きな種類で、
黒と白の染め分けになった美しい羽毛と、尾羽の下の部分(下尾筒…かびとう)の赤い部分が特徴的。
赤い下尾筒は、発情期に異性に対して視覚的メッセージとして働くらしい。
熱帯雨林に5〜6羽ほどの小さな群れで暮らし、
800km以上離れても判別が可能なほど大きな、様々な鳴き声を用いて個体間のコミュニケーションを図る。
巨大な嘴は一見重そうだが、中はスポンジ状になっており、非常に軽い(10円玉3枚分程度の重さ)。
この嘴は餌を捕るのに重要な役割を果たすに留まらず、豪奢な色彩で視覚的なメッセージとしても働き、
更には産卵用の巣(樹洞を拡張したもの)を穿つ為のドリルの役割も果たす。
飛翔する時は羽ばたきと滑空を交えた飛び方で滑るように飛ぶ。
日本では動物園で見かける程度だが、現地及び欧米では飼い鳥として非常に人気がある。