キーウィ
Brown Kiwi (Apteryx australis)

ニュージーランドは、飛べない鳥の宝庫である。
これは嘗て陸上に凶暴な捕食者も大型の植物食動物もいなかった為で、
空白になった生態的地位を鳥類が独占、競争相手もいなかったから、
エネルギーの浪費を抑える為にも飛行能力を捨てた方が都合が良かったのだ。
中でも此処に紹介する珍鳥・キーウイは、
絶滅した巨鳥・モアの末裔とも言われるロマンティックな出自も手伝ってか、
ニュージーランドの生き物の中でも、特にシンボリックな存在と言える存在である。

それはさておき。

確か私が小学生くらいの頃だったと思う。
…青果売り場に、海外から渡来と思しき見慣れぬ果物が並ぶようになったのは。

短く茶色がかった毛に覆われ、輪切りにすると果肉は綺麗な黄緑色。
ゴマ粒のような種が芯を取り巻くように散らばっている、
それまでの日本ではあまり見かけない果物。

和名は「シマサルナシ」(縞猿梨)。
商品名は「キウイフルーツ」。
通常、省略して「キウイ」と呼称される事が多いが。

言うまでもなく、この呼称は珍鳥キーウィに因む命名だろう。
褐色の剛毛や卵形のシルエットなど、改めてみるとヴィジュアルも良く似ている。
名付け親がニュージーランドの人々なのか、それとも日本人なのか知る術は無いが、
実に生き物の特徴を捉えた命名だと、今でも感心する。

最もキーウィ達にとっては少し迷惑かも知れないけど。
<データ>

*分類*
鳥綱 奇異鳥目 キーウィ科
*分布*
ニュージーランドの森林地帯
*大きさ*
全長70〜75p、体高35〜40cm、体重1.8〜2・2s。メスの方が若干大きめ。
*食性*
雑食。地上や地中にいる昆虫やミミズが主食、時に野生のマメ類や果実も食べる。
地中の昆虫を探す時は、鳥類には珍しく発達した嗅覚を用いる。
*備考*
大き目のニワトリくらいのサイズだが、これでもダチョウに近い仲間。
頑丈な脚、先端に鼻の孔が開いたピンセット状の長い嘴、ネコの髭に似た感覚毛が特色。
翼と尾は全く退化して、外見上は殆ど目立たない。
密林に通常単独で生活し、厳粛たる夜行性の生き物。
加えて非常に臆病で用心深い性質の為、フィールド上での観察記録に乏しい。
体重比で鳥類最大級のタマゴを生む事(300〜400g、母体重の4分の1にも達する)で知られる。
タマゴの巨大さ故に、出産後はメスが著しく消耗してしまうので、抱卵・育雛など、タマゴの面倒はオスが見る。
金属的な鋭い鳴き声を挙げ、その鳴き声から「キーウィ」の名がつけられた。
乱開発と密猟で個体数が激減し、現在では厳しく保護されている。
ニュージーランドの国鳥(国を象徴するシンボリックな鳥)に指定されている。