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Book review 2

世間の皆様には何の役にも立たない気がする不定期更新個人的書評コーナー。評価するとかおこがましい。
書評といっても対象は医学部向けの教科書、医学書になるかと思います。

後輩に使う教科書について聞かれたりするので、それのまとめみたいな感じで内輪向け。うちの大学の授業準拠。
このサイトとかのが役に立ちますし参考にもしてます。

良い本かどうかはしっかり比較した事もあまりないので、自分の買った本がどうだったかを。

そろそろ講義も終わって国試に本腰になりますが、総まとめ的に臨床系の本を。
→基礎医学

更新2011.10.27

内科学全般

みんな買ってる?STEPシリーズをさっぱり買ってないひねくれ者です。
でも「みえる」は大好きです。

さてさて、内科学の成書といわれるもの、よっぽど懐に余裕があれば枕か棚の飾りに買っても罰はあたらないと思います。
最後に頼れる存在ですし。レポート的に考えて。

ある内科の先生は「法学部で六法全書を眺めるようなものだ」と。
あと、「一番新しいの買っておけばいいんじゃない?」

また別の先生は成書を持ってないと更に接し方が面倒になるとかなんとか。

内科系の魔よけにどうですか。

新臨床内科学・縮刷版(第9版)

医学書院/18900円+税
愛用の魔よけ。成書では一番安い。イヤーノートより安い。でも文句は言われない。
総論がほとんど端折ってあるのは「臨床」を名乗る故か。よけい使い方が辞書っぽくなります。
内容は、「朝倉」や「中山」に比べると薄いんじゃないかというのが一般的に言われてると思います。
まぁ「みえる」大好きの医学生的には十分ではないかと。余り困った事もないか。

写真・図表は奇麗で見やすいです。文章は流石に硬いけど、拒絶反応でも起こさなければ大丈夫。

多分一番の強みは縮刷版である事。イヤーノートとほぼ同サイズ。
全分野を持ち運べるのは他には無いメリットです。

疾患からまとめた病態生理FIRST AID(初版)

メディカルサイエンスインターナショナル/8400円+税
少し毛色の違う、「病態生理」の本。診断とも治療ともまた違った切り口で主要疾患について学べます。
まぁかなり趣味な本かも。

どうやってその疾患が起こるのか、ということはポリクリの症例発表で問われることが多いので、最近またその価値が見えてきたか。
箇条書きで疾患についてまとめられてるので、レポート的にも使えますw
イヤーノートもそうだけど、ざっと復習したいときは助かる形式です。
シェーマやフローチャートはすっきりしてます。

あと、産婦人科や泌尿器、眼科なんかのマイナー分野も少しカバーしてたり。

循環器系

「病気がみえる」買ってこようか。

循環生理学がトラウマで、心電図とかNYHA分類とか拒絶反応が出そうな分野。
じっくり学びたいなら以下の本はよさげだったと思います。

循環器系コア・カリキュラムテキスト(初版)

文光堂/5800円+税

解剖生理から順に治療薬、症候・診断、検査方法、疾患各論と幅広く丁寧に教えてくれる一冊。
2008年発行なのでそこそこ内容も新しいはず。
各論の詳しいバックアップは成書でいいとして(十分詳しいけど)、見やすい図表と分かりやすい記述で良い本です。
原稿の段階で横市の学生(当時)の方々に読み込んでもらってるというだけあります。

うん、もう一回読まないとな、、

腎・尿路系

これまた循環生理でトラウマなのにこっちは「みえる」がまだ無いという分野。

糸球体腎炎を中心に「シンプル病理学」の同分野は理解を助けてくれると思います。
なんたってうちの病理の分かりやすい事で有名な(ry

一冊分かりやすい本が欲しいなら、これこそコア・カリキュラムテキストをお薦めします。

腎・尿路系コア・カリキュラムテキスト(初版)

文光堂/6000円+税

やはり解剖生理から丁寧に教えてくれる本ですが、こちらは各論の記述もなかなか充実してます。
あと「症候から診断へのアプローチ」として診断についても一章詳しく述べられているのでPBLのセッションでも重宝した記憶が。


関係ないけど編集者の先生が序文で何らかのテキストに対してぶち切れてる。
何だろうねー。臨床の先生ってST●Pやたらと嫌うよねー。邪推に過ぎません。

消化器系

「みえる」が改訂したことだし買ってこようか?

個人的にはみえるも適当に見ただけで、このころは内科学書で勉強してたため、その他の分かりやすい本というのは当てがないですが。

さて、肝疾患というこれまた特定の範囲ですが、「関係者が関わった本」を自腹で人柱になってみたのでその情報だけ。

肝疾患クリニカルスタンダード(初版)

文光堂/5000円+税

教科書ではなく、医師向けに書かれた臨床マニュアルといった本。
肝疾患についてかなり網羅的に、実際の診断・治療についてまとめてあります。
診療科もまたいで内科・外科・画像診断とひととおり。
文体はマニュアルらしく箇条書き。学生的にはそれでも十分詳しいレベル。
付録含めガイドライン系を乗せてあるのでさっと調べるのに便利か。

と、学生的には趣味の領域になるな。。
講義よりも臨床実習にこそ生きてくるか。


まぁ私の消化器内科の担当は膵臓系でしたが。

脳神経外科

うちの学生なら何も言わず標準を一冊準備してください。それがあなたの、ポリクリ班の、クラスの貴重な時間を守ります。

標準脳神経外科学(第11版)

医学書院/7000円+税
「標準」だけに一通り脳外科領域を網羅して、それなりの情報量があります。
一般的な医大生が教科書を買っているかは知りませんが、ものとしては悪くないかと。
改訂のペースも早いです。およそ3年周期で改訂してます。
そのことがうちの大学に悲劇をもたらしているのですが。

※以下うちの学生限定の記述です。
「標準」だからって拒絶反応を起こさないで読んでみればそれなりに理解できるはず。
なんかiMedicineがよさげに見えても裏でこっそり読みなさい。
講義、それからポリクリでは必ず調達して机に置きなさい。
でも決して図書館のラベルがついてるものを出してはいけません。禁忌です。
決して古い版のものを出してはいけません。禁忌です。
特に12版が出れば白い表紙になってモロバレになります。12版が出たなら自分のために、皆のために、後輩のために涙を飲んで購入しなさい。
降りかかる余計な災難を防いでくれるはずです。欠かせない魔よけです。

そしてポリクリでレポートを書く段になったら涙を拭いてサヨナラしなさい。
某先生(not教授)は「ああそんなの全然ダメ。太田の緑本が基本だから」とおっしゃいます。
大丈夫です。30000円も出さなくても脳外科の教室に鎮座しています。



太田の緑本も頑張ったら読めるもんでした。序文が面白かったですよ。

麻酔科

うちの大学では(自分たちのカリキュラムでは)6年まで講義が一切なくて予備知識は薬理学でやったことくらいなのに、修造的な先生がいてポリクリで敬遠されがちな麻酔科。
文字通り右も左も分からないのに、オペ中に(特に麻酔科修造さん(仮名)から)質問はされまくるわレポートはあるわと。
そんな貴方にお守りになる一冊。実用的でもあります。

麻酔科研修医チェックノート(第3版)

羊土社/3200円+税
研修医向けらしいけど、ポリクリの学生でも理解できる内容。
各種手技の実際の手順が丁寧に書いてあるだけでなく、術前診察や代表的な麻酔関係の薬剤についても商品名付きでの載ってます。
薬の一般名と商品名に一番悩まされたのも麻酔科だった。

各手術に応じた麻酔の特徴もあって、実際に麻酔をかける場合にはもちろんだけど、学生的にはレポートにも使えます。

研修の先生はもちろん、麻酔科の先生も持っている事が多いので、質問されたときにもズレない答えをしやすいですね。

小児科

思えば体系的に小児科勉強したのってポリクリのときからな気がする…
四年次の講義は成長と発達/感染症でばらけてたし、纏めての講義は6年の講義でした。
小児科自体は小児の全ての分野をカバーするので、そんな浅い勉強だと苦労させられます。。

また国試勉強の時に欲しくなるアンチョコ本が、小児科については定番のreviw bookが無いので100%国試マニュアルを使ってます。
情報量的にはけっこう侮れません。

詳しさより取っつきやすさで以下の本を使ってます

エビデンスに基づく小児科 総合診療編/専門診療編

医学教育出版社/各5000円+税

元々は"病態生理できった"小児科なんですが、改定時に大幅にページが増え2分冊に。
揃えると1万円! 素直にSTEPにしたほうが安上がりだよね。。

読みやすさと、総論の充実は"できった"シリーズ譲りです。高学年になって慌てて独学する羽目になった自分としては大いに助かってます。
反面、各論の情報量はムラがあって、同じ出版社の100%小児科と変わらないレベルのところも見受けられます。
単独の著者によるのも関係して、一貫性はあるけど得手不得手がみえてくるかなと。
著者のご専門の血液疾患はかなりのボリュームがあるのに対して消化器なんかはちょっと薄いかな?など。
また分冊で、索引が共通してないので辞書的に使おうとすると引っかかることも。

などを差し引いてもわりと気に入ってますが。
STEP小児科と立ち読み比べして合ったほうを選べば助けになると思います。