幕末ぶらりんこ  薫風編


歳三忌と土方歳三資料館 (散策日 5月12日)

3月26日に受け取った日野・土方家のお嬢さんからのお手紙は、私が27年ぶりに日野を訪れた20日、ご当主とお嬢さんは「京都・新選組展」出席のため京都に滞在中だったとの事。5月は歳三の命日(11日)の月、資料館も歳三の愛刀「和泉守兼定」の真剣を特別展示の予定。私を日野・土方歳三資料館へお誘いしてくださる内容のものでした。あまりの嬉しさに舞い上がってしまいました。5月中旬予定している関西行きの日にちの調整で行けるかどうか・・最初不安だったんですが、何とか12日、再び日野を訪れる事ができました。

2・3日前から雨が降っていて肌寒くかったのが嘘のよう、当日は爽やかな五月晴れとなりました。この日は特別に午前10時に資料館が開館するので、それに合わせて8時過ぎに家を出ました。資料館に着いたのは10時ちょっと前、もう既に何人かの来館者が門の前に並んでました。 資料館での説明が始まる前、ご当主、お嬢さんとお話しする事ができました。
私が27年前の話をするとご当主が「ごめんなさいね。当時は歳三の遺品はすべてひとつひとつ箱に入れて蔵にしまってあったから。」とおっしゃいました。「とんでもありませんっ!」当時は高校生でまだ幼く、勝手に兼定や葛籠が見られると思い込んでいた事を改めて思い出し、恥ずかしいやら申し訳ないやら・・・。そんな気持ちでいっぱいでした。 「私は「ずっと何十年も歳三のファンです。」って言っていただくのが一番嬉しいんですよ。」 ご当主がおっしゃいました。例えば、年を経るごとに色々な出来事に遭遇しますね。私がそういう時に思い出すのが歳三はじめ新選組の事なんです。くじけそうになった時、勇気を与えてくれるのが歴史上自分の敬愛する人物、私にとっては土方歳三です。
ところで、お二人にお会いする事ができたらぜひお訊きしようと思っていた事がありました。それは石田寺にある歳三のお墓の事です。墓石には三人の法名が刻まれています。一人はもちろん歳三本人ですが、後の二人は誰なのか?気になってしかたがなかったのです。 お訊ねしてみると、お嬢さんはおもむろに仏壇から歳三の位牌を取り出し、ジーッと見つめながら「此処に書いてあるんですけど。」 バン!と私の目の前へ!! 「うわーっ! こ、こんなに歳さんに近づいてしまったーっ!」 頭がクラクラして・・大変でした。(笑) 一人は若くして亡くなった歳三の一番上の姉、周 そしてもう一人は目が不自由ながらも豪快で歳三に多大な影響を与えたとされる長兄の為二郎でした。「大好きなお兄様とご一緒で、さぞやお喜びでしょうね。」等とお話ししました。 (故人の敬称略しました)


 土方歳三資料館  歳三が植えた矢竹  土方歳三胸像


お嬢さんによる資料館内展示物の説明が始まりました。朝早いという事もあって少人数の和気あいあいとした和やかな雰囲気の中、館内の展示物を見ながら訪れたファン全員で歳三を偲びました。
命日月にしか見る事の出来ない和泉守兼定の真剣(いわゆる「抜き身」)も展示してありました。 やはりすごい迫力です。ただ、ごく僅かなんですが刃先から10センチ程のところに小さな刃こぼれがあって、研ぐだけでは直らなかったこの刃こぼれに、この時の歳三の戦いの激しさを思い、何とも言えない気持ちになりました。 あと家を建て直した際、蔵の整理をしていて出てきたという石田散薬の粉末、(土方家では怖がって誰も試し飲みをしていらっしゃらないんだそうです。そりゃ、そうですよね。随分昔のものですし。お腹こわしちゃったら大変。(笑)) 黒い粉末でした。石田散薬の元々の薬草は牛革草ですが、今でも浅川を探せば若干ですが生えているそうです。
説明中、お嬢さんがおっしゃっていましたが函館の「土方歳三最期の地」、現在は公園になっていて地元では「土方歳三公園」と呼ばれているそうです。「ああ、ぜひとも函館へ行ってみたい!」 この時はまさか7月に函館の地を踏むとは思ってもみませんでした。
土方家のご当主、お嬢さんは素敵な方でした。それとお嬢さん、歳三に似ています。顔の輪郭と目が。なんか・・歳三と話しているような気持ちになりました。資料館を出て外を見渡すと、入り口横に歳三が幼い時に「われは壮年武人となって名を天下に上げん。」の思いから植えたとされる矢竹がありました。様々な思いを胸に、私の来館を最初に迎えてくれた歳三の胸像(現在歳三の像は高幡不動内の銅像とこの資料館入口にある胸像の2つのみ。)に「また来ますね。」と別れを告げ、資料館を後にしました。

新人物往来社主催「歳三忌」は午前11時から石田寺で行われました。資料館でご当主、お嬢さんといろいろお話ししていたので、すっかりその時間を過ぎてしまいました。最初から「歳三忌」の午後の部、幕末研究家の菊池明氏の講演は時間の都合で聴くのは無理だとわかっていましたので、参加申し込みをするのを今回は見合わせたのです。もちろん墓前に手を合わせるのとお焼香は自由にできるんですが、石田寺に着いてビックリ! わかってはいましたが・・。すごい人です・・。これでは予定の時間に帰宅できないと焼香はあきらめ、歳三の墓に向かって手を合わせ、高幡不動方面へと急ぎました。
この日は「日野・新選組まつり」の日。午前9時半頃から11時半頃まで、あと午後にももう1回新選組隊士に扮した人々が町を練り歩くのです。せっかく来たのだからこれも見物して帰らねば!と高幡不動尊へ。やはり・・。もう既に午前の部のパレードは終了間際。新選組隊士に扮したパレード参加の人々はお不動さんに手を合わせているところでした。 大急ぎでパチリ。無事カメラに納めることが出来ました。 
私もお不動さんにお参りし、「歳三まんじゅう」をおみやげに帰路につきました。


歳三忌(於:石田寺) 新選組パレードのみなさん