白馬岳(大雪渓から旭岳東面、柳又谷) 

山スキー初体験の本田っちのレポート   1998年5月4日〜5日

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【日 程】平成10年5月4日(祝)〜5日(祝)
【天 候】平成10年5月4日(祝):早朝小雨のち快晴, 5日(祝):快晴
【参加者】山川さん,花岡さん,横山さん(カンちゃん),菊地さん(キクッちゃん),本田(記録)

 話は今年の1月までさかのぼります.

 めずらしく横浜の街が銀世界になった1月の夜,同郷(京都)の加藤と一緒にいつものごとく明け方まで飲んだ 明くる日の夕方,「八方にスキーいこか?」という話になり民宿「昭屋(カンちゃんち)」に電話を入れ,一路八方へ.突然に行ったもんだから素泊まりでその夜だけお世話になる予定であったが,カンちゃんが「明日の晩,菊地がくるからもう一泊しなよ」との誘い.もう一泊お世話になることにした.
ゲレンデスキーを適当に楽しんだ夜,キクッちゃんも合流.カンちゃんとキクッちゃんと加藤とわたしの4人で「大雪渓(長野の地酒)」2本と「トミオー(京都の地酒)」1本で大宴会.
その時のこと.
キクッちゃんとカンちゃんに「本田ッチ.今年のゴールデンウイークに山スキーに行かへんか?」と誘われた.人が少なかった八方のこぶ斜面もモーグルのはやりで練習する人が増え「ゲレンデも面白なくなったな」と思い始めていたわたしに,魅力ある話の連発.酒にもあおられてこの時「よし,山スキーやろう!」と心に誓ってしまったのであった.

 横浜に戻ってから早速,山スキーの本や雪山の本を買いあさり,道具をそろえ始めた.


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 いつもならゴールデンウイークはヨットクラブの合宿なんだけど今年はブッチ.はやる気持ちをおさえきれず,予定は5月4日&5日にもかかわらず,山スキーの道具と野宿道具を愛車「らんぼるぎーに・ジムニー」に積み込み,5月1日の昼から白馬方面に向かうことにした.

  5月2日午前中.カンちゃんのご指導のもと47スキー場でシール登高の練習.初めての体験と昨晩の酒が残っていたせいか異様なほど汗をかき,200mほど登ってバテバテ.「こんなの6時間も?・・・ヤバイ!」と思いながらその200mで練習終了.「本番の前の日は絶対に深酒したらあかんな」と決心しつつ,ゲレンデの食堂で初練習にビールで乾杯.からだはバテバテではあったが「以外と軽快に登れるもんやな」と,感触は良好であった.

  猿倉の駐車場に到着すると辺り一面キリ.「ほんまに大丈夫?」とみな顔を見合わせたが,「天気予報を信じよう」ということで7時16分,スキーをザックにくくりつけ白馬岳山荘目指しいよいよスタート.

  キリもすっかりはれ,白馬岳全景が真っ青な空に吸い込まれるかのようにそびえたっている.フリースを脱ぎTシャツになって,さあいよいよシール登高.47スキー場の練習の成果と緩やかな斜度があいまって,出だし好調.あっという間に白馬尻をぬけ,大雪渓の入り口にでた.ポスターでしか見たことのなかった世界が目の前に飛び込んできて,髪の毛が逆立ち「はっはっはっ.山スキーしてるじゃん(なぜか横浜弁)」と自分に酔いしれてしまった.酔いしれるのもつかの間.まわりのみんなはなんやかんやしゃべりながら登っているのに,こっちはしゃべれないほど息がはずんでいるのに気づき,運動不足を痛感してしまった.大雪渓に入って2回目の休憩の後,小雪渓を目の前にしてふとももがぴくぴくつってきた.ちょっと止まってはストレッチをしつつ,だましだましに小雪渓の口まできた.「ここからはスキーはずさな登れへんぞ」ということでスキーをぬぎ,ザックにくくりつけて40度以上ある斜面を登り始めた.途中休憩するたんびに足がつったがストレッチをしながらなんとか小雪渓の急斜面をクリアすることができた.このときほどストレッチの効果を実感! したことは未だかつてなかった.

 

 へろへろ状態でブルーなまま,足もまたつってきやがったがストレッチをするリキもでず,最後15分ぐらいかなりペースダウンしたものの,登り始めて7時間ちょいの午後2時30分.無事,本日の宿「白馬山荘(一泊2食付き8500円)」に到着することができた.

 「白馬山荘」につくとブルーな気持ちもどこへやら.チェックインをすませて,ストックだけもっていざ山頂へ.

 しばらく行くとカンちゃんとキクッちゃんが明日滑ろうと言っていた2号雪渓入り口についた.立入禁止ロープをこえのぞいてみるとなんと“断崖絶壁”.「こんなとこ滑れんのかいな?」とキン玉が浮く思いで目が点になった.計画では90mほどロープで下りてそこから滑り出すとのこと.90mロープで下りたとしても斜度は60度以上ありそう.「なんとか滑ってやろう」と二人とも下り方を検討するが,雪渓の上部には軽トラぐらいの雪のブロックが崩れそうになっている.やっぱり条件が悪すぎると二人ともなくなく断念した.

 なお「こんなヤツラ(失礼)と一緒にスキーしていいのかな」とこの時ちょっと考えてしまったのはまぎれもない事実であった.

 気をとり直してみんなで山頂へ.午後3時.標高2932m(あれっ?2923?2922?まいっか)の白馬岳山頂へ到着.雲を下にながめ,快晴に晴れ渡った景色は何とも言えない感動を与えてくれた.周りの山々はもちろん,西の方には富山湾がみえた.思わずマイルドセブンスーパーライトに火をつけ,いっぷく.ビンディングのことなんか頭から消え去り,しばらくの間言葉を忘れるぐらいの快感に酔いしれてしまった.(横浜に帰ってから前出の同郷の悪友(加藤)にこの時の感動を伝えたら「そらおまえ,酸素が足らんようになって意識がもうろうとしてたんちゃうんけー」といわれたが「そんなことはない」と心にいいきかせている・・・)

 ふと我に返ると,我々の登ってきた反対の絶壁(主稜)から続々と登山者が登ってきている.山頂につくやいなやみんなで握手をし,お互いの検討をたたえ合っている.こんな光景をみてなんだかちょっぴり「ポエムだなあ」とまた酔いしれてしまった.

 「白馬山荘」に戻りビールで乾杯.このビールのうまいのなんの.期限切れのビールではあったがサイコーにうまかった.「忘れられないうまいビール」のリストに追加されたのは言うまでもない.

 午後6時30分.夕食.

 しばらく語らいだあと,ちょっと靴擦れができた足を治療してから,花岡さんのウイスキーをお湯割りで頂き,調子が出てきたところでキクッちゃんと期限切れのビールをまた飲んで,午後9時就寝.


 5月5日こどもの日.午前4時30分.小便に行きたくなり目が覚めた.窓の外が白み始め窓をこすって景色をながめていると,なんだか心たかぶってそれから眠れなくなってしまった.

 午前6時.朝食.

 午前8時.旭岳への登り口(鞍部)へ向けてアイスバーンを滑降.やっとスキーだ.「やっとス・・・」までしか言えないぐらで到着したが,ビンディングもなんとか大丈夫そう.「今日は滑れるぞ!」と気合い十分.旭岳南東側の斜面をシール登高開始.アイスバーンでガシガシなのでスキーアイゼンをつけて登り始めた.200mぐらい好調な滑り出し(登りだし)で登高していると,「本ダッチ!ビンディング大丈夫かぁ?」とカンちゃんの声.足下を見るとビンディングが解放しかかっている.「ヤバッ」と思ってつけ直そうとしたが急なアイスバーンでうまくはまらない.やっとのことで固定でき,再度登り始めたがまたすぐ解放しようとする.谷側をみると延々に滑落しそう.「こらほんまにやばいな」と思い,この斜面はあきらめて,安全なところで本格的に修理することにした.とりあえずシールをはずし,片足だけスキーをはいてなだらかな所まで行こうとするがカリカリのアイスバーン.スキーを1本ザックに縛り付け「横滑りしないよう,横滑りしないよう」慎重にゆっくり1本スキーで斜滑降して,なんとか安全な所にたどり着いた.ビンディングをよく見てみるとむき出しになってしまったスプリングがゆるみきって解放値がミニマムになっていた.解放値をいじったり,前圧をいじったり,何パターンか試した結果,解放値をマックスにして前圧もきつめに設定するとなんとかもちそうであることがわかった.ちょっと安心.

asahi2.jpg (12768 バイト) いっぷくしようとたばこをだそうとすると“スキーもしそうにない2人ぐみ”が旭岳頂上付近をながめながらなにやら騒いでいる.「なんや?」と思って旭岳頂上付近を見ると,カンちゃんとキクッちゃんが東面の急斜面を滑ってきているではないか!岩で挟まれた狭い急斜面をジャンピングターンで降りてくる(なかなか絵になってたゼ!).“スキーもしそうにない下の2人ぐみ”はカシャカシャ写真を撮っている.南東斜面(これもなかなかの急斜面)を滑り降りてきた山川さんと花岡さんと途中でからトラバースして合流した東面組が一緒になって降りてきたので,なんとかなりそうなビンディングでわたしも合流することにした.するとさっきの“スキーもしそうにない2人ぐみ”がそばにやってきた.“ロック&スノー誌”の取材だ!急斜面を滑り終えて笑みのこぼれる4人とビンディングも何とかなりそうということでちょっと気を取り直してにがわらい気味のたわたしの5人で写真を撮ってもらったり取材を受けたりした.山川さん曰く「女っ気がないからボツだね」とのことであたが是非とも初山スキーの記念に採用してもらいたいと密かな期待をしているわたしであった  %

 雪も柔らかくなってきたのでみんなで柳又谷の源頭で遊ぶことにした.ヨーロッパアルプスのようなロケーションに囲まれる中,ビンディングも良好.みんなと一緒に今度こそスキーだ!一斉に滑り出した.斜度が緩くなっやところでもう一回登り返して今度は東面の急斜面にトライ.すり鉢上になっているのでこけても止まるし,安心して思い切って滑る.気分はサイコー!滑り出しでは「右ターンでエッジを思いっきり踏まないようにしよう」と思っていたがもうそんなことは言ってられない.滑り終えた後自分のシュプールに目をやり,昨日の山頂同様,酔いしれてしまったのであった.

 午後11時.再び「白馬山荘」の下までもどり,いよいよ本番.白馬岳を降りる.花岡さん,カンちゃん,キクッちゃんの3人は杓子岳方面にもう少し登ってから降りる.わたしは一応の安全確保とこわれてなくなったビンディングのパーツを探すため昨日登ってきたルートから降りることにした.山川さんもわたしの付き添いと写真撮影のため一緒に降りる.パーツ探しも適当に(山川さん申し訳ない),とっととあきらめて滑りに熱中.あっという間に昨日の昼飯の避難小屋.

 5人合流していよいよ小雪渓の急斜面.「イケー」とばかりにみんなで降りる.昨日ビビッていた小雪渓の急斜面もスキーをはいていると全然怖くない(ビンディングの故障のことなんかすでにわすれている).思いっきり滑る.調子に乗ってるとクレバス.「おっとっと」冷静に戻ってまた滑る.

 さあいよいよ大雪渓.もう,一気に滑る降りる.

  さすがに1日かけて登っただけのことはあり,滑りごたえ十分.途中ですれ違う登高中の山スキーヤーや登山の人々の視線をあびながら思い思いのラインを思い思いに滑り降りて閉幕となった.

 いやはや終わってみると,初めてのことで色々なことがあり,あっという間の2日間であったが,無事に山スキーデビューすることができました.まんぞく,満足,大満足.はまってしまった気がしてならない本田でした.

 最後に,山川さん,花岡さん,カンちゃん,キクッちゃん.色々と本当にありがとうございました.山のことはまだまだ全然わからないですが,これからもこりずにお誘いいただけますようお願い申し上げる次第でございますのでなにぶんお取りはからい賜りますよう......(もうえぇって?)

                                                        おしまい.