白馬岳二号雪渓
1999年5月
同人横山氏の記録 エクストリームといっていい内容でしょう。私自身は恐ろしくて滑降していません。
まだ山スキーを知らずゲレンデスキーに飽き飽きしていた大学時代、降旗義道氏の「実践山スキー」という本を手にした私は本当にびっくりした。そこには白馬三山を滑りまくっている写真が掲載されていた。
まさかいつも見ている白馬三山でスキーができるとは知らなかった私はとりわけ二号雪渓に飛び込むワンカットに目を奪われていた。「こんなとこ滑る人がいるんだなあ」と・・・
5年ほど前大雪渓を滑りに行ったとき試しにと二号雪渓最上部から下を眺めてみたのだが菊地と私は真っ青な顔をして逃げ帰った。しかし、いつのまにか二号雪渓は僕たちの最重要課題となった。昨年は雪がかなり割れて状態が悪く滑降を断念したがなんとかなることを確信した。
1999.5.2 9:30AM
あの強烈な写真と出会ってから8年の月日がたち今私と相棒の菊地は二号雪渓の最上部から白馬大雪渓を眺めている。今年は雪の状態が良い。雪屁の弱点を突けば滑り出しは60度を超える斜度ではあるが20メートルも降りればかなり斜度は緩くなる。トラバス気味に滑り出しエアターンを1発決めれば核心部はクリアできるはずだ。クライミングロープの使用も検討したが、危険度が高くなる可能性があると判断しやめた。
じゃんけんで勝った菊地が斜面に飛び込み慎重に斜面を横滑りしターンの機会をうかがっている。手は簡単に雪面に着いてしまう斜度がある。意を決してジャンプターンをした瞬間バランスを崩した菊地は頭からあっという間に滑落してしまった。
動揺した私は止まっていないにもかかわらず「だいじょうぶかー」と叫んでしまった。しかし20メートルほど落ちた所でうまく体勢を反転しスキーを下にしブレーキをかけ事なきを得た。私は今の滑落を目の当たりにしてひざががくがくしてしまった。しかし意を決して急斜面に滑り出す。「うまくターンができるだろうか」と不安ではあったがもう後には引けない。「えいっ」
と根性を決めてジャンプしてみた。なんとかバランスを取ることができターン
はうまくいった。
「ほっ」とすると同時に緊張から解放され次には「最高!!」
と絶叫しながらの滑降となった。滑り出しから40メートルほどで斜度は40度ほどになり私と菊地は軽快にジャンプターンを決めて2人ともバカじゃないかと思うほど絶叫マシーンと化して二号雪渓を下った。
途中雪化粧した雷鳥ががーがーと鳴き私たちを威嚇する。心の中では「ごめんごめん」と思いながらも滑降を続けた。さすがに高度が下がると雪が重くなる。また斜面には幾筋も溝ができており慎重に斜面を選びながらの滑降となった。
30分もしないうちに大雪渓の合流地点に到着となった。さすがにてれくさかったが2人は握手をし無事を祝ったのであった。
長年の夢がかない気分は最高であった。思ったより斜面は広く明るい。最上部の核心部さえクリアすぎればそこからは本当にあっけないほどで大雪渓に到着してしまう。今回は天候、雪質ともに最高の条件であった。条件さえ良ければまた滑りたいすばらしい斜面であった。
ばかな僕たちに付き合ってくれビデオ撮影もしてくれた本田っち、前の日の状況を教えていただいた山川さんに心から感謝します。ありがとう。
道具はとりあえず ダイナスターアルチプルム185cm ラング
ジルブレッタ404 です。
5月1日 猿倉より大雪渓経由 白馬山荘泊
5月2日 菊地横山二号雪渓滑降 登り返し 菊地本田旭岳東南面滑降
白馬山荘泊
5月3日 悪天が予想され杓子沢の予定を大雪渓に変更
興味の有る方はここをクリックすると横山氏のHPの記録にジャンプします。
http://web.hakuba.ne.jp/nori/990501/2gou.html