2−35.前の彼女のこと

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 以前、メール友達の一人から、こんなことを言われた。
 「前の彼女に縛られてるうちは、新しい出会いは無理。前の彼女と比較しちゃって、相手の子のこと見てないから。」
 前の彼女のことが気になって仕方のない状態というのは、その前の彼女に「片想い」していることを示しているわけで、そんな時に他の人のことなど気にしているわけがないし、他の人に声をかけられても何の反応も示さないだろう。前の彼女のことが好きだから、である。
 しかもその「前の彼女」は、今現在の「前の彼女」ではない――最後に会ったのは別れる前なのだから、それまでの時間経過によって変化しているはずである。しかも過去の楽しい思い出に引きずられ、彼女自身が美化されている可能性も高い。最悪、今の彼女に会ったら幻滅する可能性も否定できなかったりする。
 このままだと時間が過ぎるごとにますます現実から目を背け、いわば二次元キャラに恋をしているのとよく似た状態となる。なまじっか思い出には「放送終了」も「エンディング」もない上、実際存在する(した?)人だけに、なかなか簡単には消えてくれないようで、時間経過とともに美化と妄想が広がり手がつけられなくなる。
 これでは本人が「別な人を探そう」という気にもならなければ、他の人を見ても「前の彼女」と比較してしまい「ダメだ」と突き放すことになるだろう。外の女性から見てても、とても太刀打ちできるようには見えないだろうし、しようとも思わないだろう。
 というわけで、なるべく早く彼女を忘れないといけない――というか、彼女を「なんでもないただの人」だと認識できるようにならないといけない、ということになる。
 こんな苦労をするのも、「好きでも嫌いでもない」などと言ってつきはなしたあげく、自分の感情に逆らって意地を張りとおしてしまったからだ。確かに恋愛に興味を失っていた時期はないわけではないが、別れるほど彼女に幻滅していたわけではない、というのは前に記したとおりである。

 忘れる方法として、いくつか考えてみた。

1.電話をかけてしまい、無理やりに直接話す機会を作る。当然ながら嫌がられるので、それを利用して幻滅することで忘れる。
2.なんかいろいろと理屈をつけて、呪文のように唱えて刷り込む。
3.彼女と全く関係のないことに熱中する。
 1.が最も効果が高いのだが、先方にもご迷惑がかかる上に自分へのダメージもすさまじいものがある。今の私の精神状態ではともすると自害してしまうかもしれないので、これは避けたい。
 2.はこの2ヶ月ほどずっとやってきたことだが、やはりいい人はいい人なので評価できる点は出てくる。そうしてますます忘れられなくなる上、なんで振ったんだという自己嫌悪とともに絶望感が押し寄せてくるので返って逆効果。
 ということで3.なのだが――今のところ、そこまで熱中できるものがない。その上バレンタインというトラウマ・イベントが近い上、なんと2002年の3月以降の日付自体が全てトラウマになってしまっているようで、特に「好きでも嫌いでもない」と言い放った6月から、彼女から「まだだめ?」と尋ねてきた7月、別れとなった8月、最後のデートをした9月、ケンカになった10月と衝撃の事実を知った12月は、会社の資料で日付を見ただけでも吐きそうになるという重症ぶり。ことに「2002年度」の日程などは去年4月から開始だから、今の私にとってはまさに凶器。嫌でも頭の中に、いいもの悪いものみんな織り交ぜて思い出があふれてくる。忘れようとしてもなかなか忘れさせてもらえないのである。

 ただ――彼女を忘れられない一番の原因じゃないか、と今一番疑っているのが、この『恋愛感情論』である。
 数々の失敗とその後の経験から学んだことは多く、人格形成面、女性との話し方など、まだまだ書きたいことはたくさんある――というかむしろこれからが、過去の反省を一通り終えた上での『恋愛感情論』の一番重要な部分、まさに「サービスパック」としてふさわしい内容になるはずである。
 しかし現在の私では、それらを書いてしまうと必然的に前の恋愛と、そして前の彼女のことを思い出してしまう。さらに精神的に安定しない状態で書くと途中で筆がしょっちゅう止まる上、結論も安定しない。
 これで彼女がまだフリーであれば、もう一度やり直してみたい、と胸を張って主張するだけの意識を固める上で大変有効なのだが――すでに別の人と幸せになっている以上、やるだけ毒にしかならない。

 従って――
 今後当分の間、『恋愛感情論』は凍結しようと思う。
 いつになるかはわからないが、彼女との関係をただの思い出に出来て、思い出しても辛く感じなくなった時、『恋愛感情論』を再開しようと思う。
 もしかするとそれは、新しい彼女ができた後、になるかもしれないが…。

(03/2/6)
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