2−34.手荒な天使様

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 とあるものを「読んだ」ことをきっかけに、私の体調はかつてないまでにひどくなった。
 この人生の中で1度か2度あるかないかぐらいの吐き気。酒を飲み過ぎて吐いたあの日以来の強烈な吐き気が仕事中の私を襲った。昼食は食べられるはずもなく、お茶や水を飲もうとしては、吐き気を催すために口をつける気にもならなかった。
 そして突然のように湧き上がってくる絶望感と自己嫌悪。一番誰にも見つからない、会社の片隅のトイレの脇、給湯器のあるところに隠れ、泣き叫び、床をのたうちまわった。壊れてしまえと言わんばかりにこぶしを床に叩きつけ、自分の全てを呪っていた。

 そんな時、自分の中のずいぶんと口の悪い天使が、バカにした目つきをして現れた。
「あのさ、何やっても戻らない、もう遅い、てのはもうわかっただろ。それにオマエ、彼女をフッたってことは、それほどの魅力を感じてなかったってことなんじゃねぇのか?それで、いつまでもつきあってるとお互いにとってよくねぇからって別れたんじゃねぇのか?

だったらさっさと次の女探せ!!

 全く口の悪い天使だ、とは思ったが、奴には言い返せなかった。理由や言い訳はともあれ、私は彼女と別れた。この決断は、一人になることと同時に、新たな人を探す決意をしたことを意味している。
 なら、いつまでも同じところでビービー泣いてたってしょうがないじゃないか。私を好きだといってくれる、彼女以上にすばらしい人ってのを、探してみようじゃないか。バレンタインチョコはそういう人からもらうもの。誕生日プレゼントはそういう人からもらってこそ価値がある。デートで町を歩く時にはそういう人と一緒にいるのが一番幸せだし、旅行だってそういう人と一緒に行きたい。二人きりのクリスマスがどんな時よりも輝いて見えるのは、そういう人と一緒にいるから、じゃないのか?
 いなかったらいなかったで……変な人につかまってるより、自由きままでいいんじゃない?

 そうして天使は天使らしく、私の吐き気を取って去っていった。

 今までの出会いは、まだまだ偶然に頼る消極的なものだった。どこかに遊びに行くこともなく、自らを磨くこともなく、ただじっと何かが起こるのを待っているだけだった。そうして奇跡的な出会い方をした彼女を、私は振ってしまった。これ以上の幸運はもうないだろう。
 そういうことではだめだ。もっと積極的に出て、自分から探していかないといけない。モテないならなぜモテないかを考えて、少しでもモテるようになればいい。出会いがないならなんで出会いがないかを考えて、出会いが起こるようにすればいい。出会いの確率を上げれば、奇跡的な偶然に頼るよりもずっと高い確率で、素敵な人と出会えるはずだ。そこで自分に十分な魅力が備わっていれば、そういう人をひきつける事だってできるじゃないか。2年前、実際に人をひきつけることができた。ならばもう一度、やれば出来るはずだ。

 もう前には戻らない。まだもう少し反省しないといけないことはあるけれど、それは嘆き悲しむためにやるんじゃなくて、これからどうするかを決めるためにやる。今までの考察がそうでなかった、とは言わないけど、過去の「愛されていた自分」に戻るためではなく、「もっと愛される自分」になるためにやる。
 過去の自分は、吐き気が出るほど嫌い。だから彼女にも嫌がられた。でも、それに気づいた今の自分は、そんなに嫌いじゃない。目標に向かって頑張る自分は、もしかしたら好きかもしれない。そうして今までになくかっこよくなった自分は、好きになれるかもしれないし、そういう私を好きになってくれる人も、きっとどこかにいるだろう、と思える。
 がんばってみたいと、思わないか??

(03/2/4)
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