2−31.嫌いじゃなければ

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 京都の知り合いを訪ねた日の夜、知り合いの好意でスナックへ行った。知り合いのメール友達がママさんをしている店で、雰囲気も明るくアットホームな感じで、すごく楽しめた。
 その時ついてくれた女性に、私は前の恋愛の話をしたのだが、
「『嫌いでもないけど好きでもない』と言って、お互い別れることにした。」
と言うと、彼女は不思議そうに答えた。
「嫌いじゃなかったら、別れなきゃいいのに。」
 …確かにそうだ。なんで別れたんだ。
 好きだという感情が無いのに一緒にいてもムダじゃないのか…私はそう言ったものの、答えになっていない気がした。

 別れたとき、その理由として二人で納得していたのは、
「好きでもないのに一緒にいたって意味がない。」
ということだった。
 そう思う理由は、以下の2点である。

・好きでもない人と一緒にいなきゃならないので、あまり面白くない。
・好きでもない人が恋人になっているため、新たな出会いを見つけられない。

 まず最初の1点だが、あまり面白くないのを続けていれば、そのうち相手のことが嫌いになるはずで、そうなると友達としても会話は成立しなくなる。なぜ嫌い、というところまで至らないか、といえば、相手に何らかの期待をしているから、となる。期待をしている以上、一人になるよりマシだと思っているわけだから、「別れる」という決断を下すべきではない。
 2つめの点だが、「新たな出会い」なるものが今後本当にあって、今の恋人より上のレベルの人に会える、と本当に思えるのかどうか、である。もしこの時点で誰か素敵な人がいて、というなら話はわかるが、誰もいないのに次の出会いを求めるのは無謀、というより妄想に近い。出会いの機会も受け入れてもらえる機会も少ないブッコにとってはなおさらである。
 むしろ逆に、二人でもう少し一緒にいて話をすることで、愛を取り戻せるかもしれない、その確率のほうがよほど高く、期待できるのである。

 「嫌いではないが好きでもない」というのは、私が初めに言ったことで、この時は「好きでもない人と一緒にいてもしょうがない」という気持ちが私の中にあったことは間違いない。
 しかしもう一つ、無茶な言い訳にしか聞こえないだろうが、「彼女を解放しなければ」という思いが強かった。私には、彼女を幸せにできる自信も何もなくなっていた。自分の感情のせいで、彼女を不幸な道に引きずり込むことはどうしてもしたくなかった。誰よりも好きな彼女を幸せにするためには、自分の感情も何も全てを犠牲にするのもやむをえない、とそう思っていた。
 まだ私のことを愛してくれていた彼女は、一緒にいるだけでも幸せだ、と思ってくれていたらしい。実際そう言って私の前で泣いたこともあった。しかし、私はそうして彼女を泣かせてしまったことでも、「自分のような奴に彼女がつかまってしまっては不幸だ」と思うようになっていた。

 もっとも、こんなに自信のない奴には誰も幸せにはできないだろうが、自信を失ったのは彼女とは全く関係のない、仕事上での失敗である。それによって彼女を幸せにできるかどうかすら疑ったのは、”根拠のない自信喪失”であると言って差し支えないだろう。
 なぜなら仕事に失敗するような奴であっても、過去1年間、彼女との幸せな日々を過ごしていられたという実績があるわけで、そうでなければ1年も私についてきていないし、あのひどい2ヶ月を耐えられもしないはずである。従って、何だかよくわからないものの、私には少なくとも最初の1年間、一人の女性に幸せをもたらす能力が存在する、ということになる。これは仕事での失敗とは何の関係もない。

 従って、今後「女性を幸せにできるのか」という疑問について、自分の能力自体を否定する必要はない。
 残る点は「彼女が今幸せを感じているかどうか」と「自分が彼女を全力で快く支えていけるだけの幸福感を持っているかどうか」だが、彼女からの愛を感じていて、自分についてきてくれていれば、前者は問題ないということになる(幸せを感じなくなれば、彼女のようにすぐに離れていく)。とするとあとは自分の気持ちだけ――自分が彼女を愛しているのであれば、例え外から見て「仕事もできないくせに」と言われようとも、「大きなこと言って何もできないくせに」と言われようとも、「誠実さを装ってウソしか言わない」とののしられようとも知ったことではない。
 なぜなら彼女が幸せを感じているから。自分がどんなクズであれ、大好きな女の子一人幸せにできていれば、自分の評価が何であれ、それで十分なのである。むしろそうして幸せにしている彼女を、勝手に「ムリだ」と放り出すようなことをするほうが、彼女を不幸の底に突き落とすことになるのである。

 自分が彼女を幸せにしてきたこと、だから彼女がついて来るんだということ、彼女を本当に幸せにできるのは自分しかいない、ということを、誰よりも強く信じること。
 例え何があっても、本当に無理だというところまで、素直に自分をさらけ出して頑張ってみること。
 次に誰か、私のことを好きでいてくれる人が現れた時、この方針だけは守っていきたいと思う。

(03/1/28)
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