2−30.別れる、ということの意味

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 すてきだな、と思う人にはだいたい彼氏がいて、その人本人とは気が合っても断念せざるを得ない――そういうパターンには結構出くわす。
 逆に言えば、自分が先に確保している彼女がいれば、他にどんなに自分より優れた男がいようと、彼氏の特権というヤツで女の子を独占できる。
 ということで、実はある方法を使うことで、彼女のランクを上げることが出来る。
 つまり、誰かと付き合っているかたわら、別の女の子を物色。その子たちと仲良くしておいて、今の彼女より上だと思った瞬間、相手に彼氏がいないのを確認して、その女の子に告白して彼女にしてしまう。同時にいままでの彼女との関係を急激に冷え込ませて切ってしまう――切り方は至って簡単で、私が彼女にやったこと、つまり全然別のものにいれこみ、ないがしろにし、甘えてきたらうるさいと突き放した挙句、しつこく詰め寄ってきたら「そんな甘ったれなオマエがイヤだ」とか言って突き放し、あとは2ヶ月も放置していれば切れる。相手との関係が遠距離ならば簡単である。この間、同時に二人に愛を注ぐ手間は全くかけずに済む。
 つまるところ「浮気」が「本気」になって乗り換えを起こす、というやつなのだが――
 私がここにこうして書いているのは、この手を自分の中で「禁じ手」にしているからだ。
 元々私が要領が悪いこと、ウソをついてもすぐバレる体質だということもあるのだが、こんな卑劣なことをしてはプライドにかかわる――もてない男ならもてない男なりに、不器用かつ誠実に女性との付き合いを続けるべきで、相手の気持ちをもてあそぶようなことをしてはならないのである。

 なので、もし「浮気」を利用した乗換えを起こす気がないなら、今までの彼女に別れを告げることは、すなわち一人身を受け入れる、ということを意味している。
 これから何年続くかわからない、一人きりの正月、一人きりのバレンタイン、一人きりのゴールデンウィーク、一人きりの夏祭り、一人きりの秋、一人きりのスキーシーズン、そして一人きりのクリスマスをすべて受け入れ、その度に待ち行くカップルを見ながら、自分が彼女を捨てたことを「本当に良かったのか?」と問い直す羽目になる。もし相手が学生なら、これに卒業や進学、就職といったかずかずのイベントを共に楽しめないというつらさも受け入れなければならず、トラウマとなるイベントはさらに増える。その上で、それでも彼女といるのはイヤだ、という破滅的な状況だということを意味しているわけで、そうでなければ彼女と別れようなどという気持ちは起こしてはならない。
 少なくとも一旦彼女に、直して欲しいことを言ってみて、彼女がどう返答するかを見てからでも遅くない。いつまでも改善しないとか、逆切れしてきたとかで本格的な口論になり修復不可能なまでボロボロになったとしたら、それはそれで「破滅的な状況」ということであっさり別れることができる。それならきっと、彼女のいない生活を、自由で穏やかな暮らしだと素直に喜べるだろう。
 私の後悔はここにもある。彼女ときちんと話し合ったことはあまりなく、彼女を受け入れることなくあっさり切ってしまった。もうちょっと話し合えばもっと違ったかも、という後悔があって、おかげで毎月1度はトラウマの日がある、という救いようのない状態に陥っている。アイツにつかまってなくてよかった、と思えたほうが、別れの上では勝ち、なのである。

 私が話し合おうとしなかったのは、彼女の愛をどこかで信じていなかったから――といっても浮気しているとかそういうのではなく、自分に自信がなさすぎたがために、「こんなオレのどこが好きなんだ」ということを常に考えていたからだった。顔立ちもダメ、体型もダメ、性格もひねくれてて気分屋、という私のどこがいいんだ、とずっと思っていた。だから、素の自分を出すことで、また自分の要求を告げることで、別れを持ち出される、とずっとおびえていた。
 そして自分がムリをして我慢して、もうダメだ、と思った瞬間、相手にそれを告げても振られるならこっちから振ってしまえ、と思った。そして彼女との関係が冷え切るに任せていたのである。
 彼女の愛をもっと信じていれば、こんなことはなかった…。

 別れる、ということは、その人と二度と会えなくなるかもしれない、と覚悟することである。大好きな相手と会えなくなることは、想像以上に厳しいことである。
 むしろ、彼女と言い合って徹底的にケンカするべきである。結果として相手が折れなければ、そんなやつとはもう付き合わん、とむしろ会わないで済むことを喜べるかもしれないし、もしかするといい妥協点を見つけて解決できるかもしれない。
 なんだかわからなくとも、彼女は自分の中の何かを好きなのだ。なら、思い切ってぶつかってみようではないか。それで嫌われたらそれまでの奴、もしついて来たら、誰よりも大切な人として、さらに愛着が湧くだろう。

(03/1/27)
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