2−21.その先にあったもの

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 2002年、8月。
 あれだけ好きだった彼女とも、永遠の愛を育むにはいたらなかった。些細なこと…本当に些細なことでケンカして、それがもとでお互いの欠点ばかりが目に付くようになってきて、愛は失われていった。あっという間だった。

 ともあれ、私は一人の女性に恋愛感情を抱くことができ、相手も自分をいとしく思ってくれたおかげで、恋愛関係を結ぶことができた。つまり私は「告白して成功した」その先へと踏み込んだことになる。
 幸せなだけで済むかと思っていたが、そう簡単なものでもなかった…。

 彼女は、私の話をすぐに理解してくれたし、ついてきてくれたし、意図するところもすぐわかってくれた。彼女は別に「努力してやってるわけではない」と言っていたが、実際そうだったのだろう。
 そんな彼女を見て、およそそれだけ気が合う人、しかも私を好きだといってくれる人はこの人しかいない、と思った。一緒にいて心地よかったし、少しでもそばにいたかったし、心も体も自分のものにしたいと強く願った。そのためには費用も時間も、何もかも投げ出してかまわない、と思っていた。
 誰かに愛されている、ということを強く感じられることは、自信にもつながった。こんな自分を好きだといってくれるなら、きっと何かがあるんだろうし、大切な人に何かできるんだろう、とも感じていた。
 私は恋愛のすばらしさを知った。とっても幸せだった。

 しかし、幸せは長くは続かない。
 2月のデートで無断外泊したのがバレ、親の彼女に対するイメージを激しく損なってしまったこと――男の私の親だから大丈夫だろうと甘く見ていたが、そうではなかった、ということ。これをどう解消していくか、誤解を解いていくか、は私にとっての大きな課題だったが、どうしていいやら皆目見当がつかなかった。
 次に、会社の同期の結婚ラッシュ。次々に大好きな恋人と結婚していく同期を見て、私もできれば彼女と結婚を、と考えていた。しかし上に書いたように、親の誤解を解くための方策を立てられる状態ではなかった。同期と比べてずっと見劣りしてしまっている自分の「人間としての」能力に、自己嫌悪に陥ったが、彼女には言えなかった。彼女のイメージを悪くしたのは私だから、私がこの問題をなんとか一人で解決しなければ、と必死になっていた。
 さらに2002年、初めてお客様先へと配属となり、仕事と人間関係に悩むこととなる。同時に彼女も就職活動を始め、彼女自身も心の余裕を失っていた。その中で私は、就職活動の経験者として、いや彼氏として彼女を支えなければならない、という強迫観念にさいなまれていた。家に帰ってきては彼女の食事を私が作らなければいけないし、そのあと彼女の話相手をしなければならない。休日はすべて彼女のためにデートなりなんなりを企画しなければならない――いつしか彼女とそうしていることが「楽しいから」ではなく、「彼氏としての義務」としてやるんだ、というふうに、気持ちが変化していた。決して彼女への愛がなくなったから、ではない。仕事が忙しく大切な人に何もしてあげられてない、という気持ちが、強迫観念を生んだ。強迫観念は、彼女への愛を飲み込み、押しつぶした。
 彼女は私の性格をよく知っていて、「絶対無理しないでね」とことあるごとに言ってくれていた。休日に毎回デートに行かなくてもいいから、とも言ってくれたし、食事を作って待ってくれていた日もある。
 しかし、それもすべて私はプレッシャーだと受け取ってしまった。彼女に「無理をしている」と思わせちゃいけないとか、彼女に食事の手間をかけさせるのは、彼氏として失格だとか…。
 強烈な自己嫌悪と強迫観念でたまったストレスの矛先は、「身近にいる」「我慢してくれる」相手――彼女にすべて向かっていった。彼女を何度も泣かせたが、私はその理由をまったく理解していなかった。「だから我慢すればいいんだろう」と、余計に自分を追い詰めていった。

 就職活動が過ぎた頃、お互いに自分たちの気持ちがわからなくなっていた。
 8月、私たちは別れることにした。

 さて、大好きな人を見つけて、告白して、付き合い始めた後――これは思ったよりも楽なものではない。
 むしろここから先が、一番重要で、そして一番難しい部分だと言える。
 自分というものをどれだけ理解できるか。そして相手にどれだけ伝えられるか。
 相手の気持ちをどれだけ正確に推測し、何をしてほしいかをどれだけ正確に捉え、実行できるか。
 自分と恋人との間の「他人として絶対にある」ギャップをどう乗り越えていくか。
 そしてこれらの行為を、「責務」ではなく「やりたいから」という気持ちでやるにはどうするべきか。
 …ほかにも本当に多くのことを、この恋愛からは学ぶことがあった。

 これからはこの点について、まとめていきたいと思う。
 そうして、大切な人と幸せな恋愛関係を続けていけること、そしてその延長として、できれば結婚し、幸せいっぱいの家庭を築くこと。
 これが今度のVer.3の目標、である!

(03/1/1)
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