2−12.「分析不能な思い」に関する一考察

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 前回の記事を書いてから、1ヶ月が経過した。その間、幸いにしてくだんの女性と同じ「場所」に行くことはできたのだが、彼女とは一度として会っていない。そうしているうちにどうやら、気分もすっかりおちついて、消えてしまったようだ。
 そこで、例の「分析不能な思い」を考察してみたいと思う。
 そもそも、あれを恋愛感情と呼んでいいのだろうか?もっと別な何かである――例えば単に親しい人と離ればなれになる寂しさだけ、ということだったり、あるいは何か本なりテレビドラマなりの影響で起こった感情だったり、ということではないのだろうか?
 しかし、私の本業は経済学部の学生で、しかも2週間前まで就職活動に手を染めていたような人間である。恋愛に対する研鑽についてかなりおざなりになっていた時期に、何かの影響を受けて妙にセンチメンタルな気分になったとは考えにくい。
 確かに、親しくなった人と離ればなれになる、という寂しさはあった。しかし、あれだけ強く、他人に対して「一緒にいたい」と強く思ったことはない。非常に特殊で強いエネルギーを持った感情だけに、解釈のしようがなかったのである。
 それでは彼女自体にどの程度の興味を抱いていたかというと、実際それほどのものでもなかったかもしれない。私が彼女と「一緒にいたい」と思ったのは、相手のデータを獲得するという理由はさほど強くなく、とにかく一緒にいて話をしたい、という方が強かった。とはいえ、あれだけ強く一緒にいたいと思った以上は何らかの、無意識的にも強い興味があったからだろう。
 ともかく「一緒にいたい」というキーを持つ感情であることに間違いはなく、この感情を恋愛感情の一つとして分析しても、問題はないと思われる。

 この感情の発生過程であるが、前兆といったものはほとんどない。これまでの交流期間は非常に短く、その感情が”熟成”されたような形跡は見あたらない。あの瞬間に突然発生したようなものである。
 しかし、引き金となったこと、というのがあって、それが彼女が別の「場所」に行くことになったことである。これからもしかすると、ずっと彼女と会えなくなるかもしれない、という風に感じられる出来事があり、それが例の感情の引き金となったと思われる。だからこそ「一緒にいたい」という思いが強くなったのだろう。
 よく「恋に理由などない」という風に言われるのは、この発生過程にあると思われる。ある程度興味を持っている相手との間に、何らかの引き金となる出来事が起こると、それまでの交流期間の長さや親密度の深さにかかわらず、恋愛感情が突然発生するのではないだろうか。

 次に、この感情の持続性について考察する。なぜここまで短期間に消滅したか、ということである。
 理由としては、感情の発生以来彼女と全く会えなくなったこと、感情が薄れていくそのタイミングで別の興味あるものが発生し、そちらに興味が移っていったことが考えられる。しかしストーカーのように、直接会う機会が全くなくても恋愛感情を持続し続ける場合があるから、彼女と全く会えなくなったことはあまり関係なさそうである。私の感情が長続きしなかった原因は、興味の変遷という点で大きな影響を持っているようである。
 失恋した場合など、その女性のことを考えないようにするために、別の物に全身全霊を打ち込む、という方法が採られるが、私の場合期せずして、これと同じ状況が起こったのだろう。
 普通、失恋した女性のことを忘れるには、他に対するかなり強い興味がなければいけないはずだが、私はゲームでさっぱりと忘れてしまった。ここまでさっぱりと忘れられてしまったのはなぜか。
 おそらく、交流期間があまりにも短かったことで、相手の情報が十分に手に入っておらず、ゲームを越えるまでに十分な興味を持つに至らなかったと思われる。私の興味は彼女の外見と言うより内面にあって、それに対する情報は非常に乏しかったのである。その後も会う機会が何度もやってきて、話が出来れば、少しは違っていたかも知れない。
 それではその後も交流が続いていたとして、私がこの感情を持続し得たかと考えると、あながちそうとも言えないだろう。もしかしたら彼女と私とでどうしても会わない致命的な部分を発見してしまって、一気に興味を失うことになったかもしれない。
 恋愛感情の持続については、その人に対する興味が持続する環境にあるかどうかが問題になるようだ。相手との交流の過程でどれだけ共感しあえるか、相手を自分にとって重要な存在であると認識できるかなどは、興味を持続する手助けになるだろう、と思われる。

 そして、今後この感情の「ぶりかえし」はあるだろうか。つまり、また偶然彼女に会ったとき、この感情が再燃するようなことはあるだろうか?
 おそらく条件次第によっては十分に起こりうるだろう。久々に再会して話が弾んだりしたらわからない。「やけぼっくいに火がつく」という言葉が示すように、一旦消滅した感情が再燃し、交際が再開されるパターンがあるわけだから、私の感情が再燃するということは十分に考えられる。
 しかし私は、一旦興味を失った相手に対して、その興味をぶりかえすというのはあまり健全でない、かなり悪質なものだと感じている。もし失恋した相手に興味をぶりかえしてしまうようなことがあれば、それは十分にストーキングの一因となるだろう。
 もっとも、今回について言えば、振られるどころか友達づきあいとしても非常に浅い段階である。従って、別にぶり返しても何の問題も起きないかも知れない。しかし一歩間違えばストーカーになってしまうだけに、一旦失ってしまった彼女に対する興味は、願わくば一生封印してしまいたいものである。

(00/7/19)
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