1.分析不能の思い
何とも不可思議な気分に襲われた。これだけ整理されていないものをここに出すのはどうなのだろう、と思ったが、もともと多くの方に読んでいただいて感想を頂くのが目的だったから、問題ないのだろう。
様々な制約から、今ひとつ要領を得ない書き方をする事になるが、ご容赦願いたい。最近、とある場所で、ある年下の女性と親しくなる機会を得た。まじめで明るく積極的で、考え方もしっかりしていて、私はその人とすぐにうち解けることが出来た。帰る方向が一緒なので、一緒に帰るということもあった。たった電車でひと駅の間だったが、楽しいひとときを過ごすことが出来た。
しかし、とある事情で、彼女は別の場所に移ることになった――といっても移るのは同じ建物の内部で、ヘタすると同じ階である。私も努力すればその場所に行けるので、大したことではないのだが、とにかく私と彼女は別の場所で別のことをすることになった。
その移動は彼女にとって、非常に喜ばしいことで、私も友達として喜ぶべきであったが、今後一緒に会って話をしたり、一緒に帰るような機会もほとんどなくなってしまうだろうことは間違いない。
彼女とわかれ、家までの帰り道、私はとにかく不可思議な感情で一杯になっていた。
彼女の栄転のことを考えると、なんだか辛いのだ。彼女と会えなくなりそうだ、ということがとにかく辛い。別に電話番号を教えあうような仲にまで進展させられなかったとか、そういうレベルの辛さではないのだ。
折り畳み傘を持った手に力が入り、ぶるぶる震える。回りのものは何も見えない。考えているのはただ……彼女のことだけ。
帰り道、踏切に入ったとき、たまたま警報機が鳴りだした。その時、頭がぼうっとなった。
「このまま、ここにずっといようか。」
彼女ともし、このあとずーっと会えなくなるんだったら、このままこの場所で電車にひかれて死んでしまってもいいかも知れない……。
すぐに気がついて、慌てて踏切を飛び出した。そんなことを思った自分が信じられない。
何でもいいから、彼女と一緒にいる機会が欲しい。もっといろんな話をして、彼女を楽しませてあげたい。話だけじゃない。一緒にいられる機会があるなら何だっていい。彼女と一緒にいられることが、僕にとって一番うれしいことだから。そんな大切な機会、奪われたくない――そんな気持ちが頭の中をぐるぐるぐるぐる駆け回って、そのうち何がなんだかわからなくなってきた。家に戻って、楽しみの食事をして、気晴らしに本屋までドライブして、それでようやく落ち着いた。こんな気分は今まで経験した試しがない。
この気分がなんなのかは、だいたい察しがついている。が、そうと言い切る自信はないし、自分がそんな感情を持ってしまうとは思ってなかったのだ。
この感情を”あれ”と判断してしまって、いいものなのだろうか??
(00/6/14)2.夜討ち朝駆けの原理
この記事を載せ、友人にも相談した。
結論として――私はその女性に、恋をしてしまったらしい。
女子嫌いでならしたこの私が、恋などとは!!この奇妙な感情も、一旦収まったように見えたが、実は逆にひどくなっているかもしれない。
何も、手に着かないのである。ホームページを書くにしても、学校や英語の勉強をやるにしても、ふと気がつくと彼女の事を考えていたりする。ただでさえ落ち着きがない方なのに、ますます落ち着きが無くなる。
いつ会えるかわからない、ヘタするとこのままずっと会えなくなる、という状態で、何をどう悩んでも仕方がない。私がやるべき事は、彼女と同じ場所に行けるように努力するだけである。わかってはいるのだが……。
会いたい。話をしたい。一緒にいたい。せめて、声だけでも……。
そんな気持ちが頭の中を回り始めると、すべての思考が停止する。この文章を書いている間も、何度止まったかわからない。まるですごく動きの重いソフトを同時に動かしている時のように、頭の中の処理すべてが遅くなる。去年、彼氏のいるサークルの女子学生が、宿の公衆電話で長電話しているのを、
「よくもまぁ毎晩毎晩話のネタが尽きないモンだね」
と、半ばあきれて見ていたことがある。(そこの宿は携帯電話がつながらないような僻地にあったのだ。)
しかし、今考えてみると、彼女たちの電話は、話のネタとかそういうものではない。とにかく相手の声が聞ければいいのである。好きな人の声を聞いて元気になる――というか、聞かないと何も手に着かなくなる、と言った方がいいかも知れない。もちろん強靱な精神力でもってカバーする、という方法もあるかもしれないが、効率はよくない。せっかく電話という便利な道具があるのだから、それを利用しない手はない。時間を共有でき、かつお互いに話が出来る。会話は必ずしも、情報交換が目的ではないのである。
恋人たちの「夜討ち朝駆け」の電話の意味が、多少なりともわかったような気がする。
(00/6/17)3.衝動的なもの
あれから2週間経って――あの子とはずっと会えないでいる。
その間に面白いゲームを見つけたり、ゼミ合宿やテストが近づいてきてそっちに気を取られているうちに、いつしかあの不思議な気持ちはほとんど消えてしまった。あれだけ強い気持ちだったのに、所詮ゲーム程度で消滅するモンだったんかと思うと、ちょっと、失望してしまう。
考えてみれば、一方的で衝動的な気持ちだった。会った回数だってそれほど多くはないし、話した総時間など微々たる物で、ほとんど一目惚れのようなものだった。衝動的に盛り上がっていった気持ちは、やはり急激に冷え込むものなのかもしれない。
しかし、あの後もしょっちゅう顔を合わせて、親しくつきあうことができたら、結果は変わっていたかも知れない。もっと彼女について情報を得て、その結果恋愛感情を強くできたかもしれない。逆に知らなくてもいい余計なことを知ってしまってやっぱり冷え込んだかも知れない。どちらになるかは全くわからないが、この経験は、恋愛の玄関先に立つ、ぐらいのことにはなったかもしれない。
少なくとも、私は女性に恋愛感情を抱くことが出来る、ということが立証されたのだ。それで十分である。
(00/6/28)