恋愛、というのは、そもそも何なのだろう……?こい【恋】:特定の異性に深い愛情を抱き、その存在を身近に感じられる時は、他のすべてを犠牲にしても惜しくないほどの満足感・充足感に酔って心が昂揚する一方、破局を恐れての不安と焦燥に駆られる心理状態。(三省堂『新明解国語辞典 第5版』より)
大学を卒業後、すぐに結婚した先輩は言っていた。
「恋愛とは、いつも一緒にいたいと思うこと、だ。」
ある女性に恋をした友人は、言っていた。
「一緒にいたいと思う気持ちが無ければ、恋愛ではないだろうね。」特定の異性を身近に感じたいと思うこと、ずっと一緒にいたいと思うこと…
『一緒にいたいと思う気持ち』
どうやら、恋愛はこれがキーワードらしい。
このような気持ちになったことは、一度としてない。
私は一人でいるのが苦にならない性格だ。どちらかといえば、一人の方が気楽で好きかもしれない。誰かが側にいてほしい、と思うことはそれほど多くはない。
女性と一緒にいたいと思うことなど、ほとんどなかった。女性が嫌いだったし、また怖かったこともある。そもそも、女性が側にいることを必要としていなかった。
もちろん、容姿端麗な女性に興味を持ったことはあったが、一緒にデートをしている場面を想像すると、幻滅してしまう。自分が一方的に好きになった、ということで奴隷化されるかもしれない。そうでなくてもそんな相手と一緒にいるだけのために金と時間を浪費するのは無駄だ、とも思った。とても「デート」などというものが楽しいとは一つも思えなかった。
それでも私は、そんな「興味」を「恋」だと思っていた。人を好きになったことは間違いない、と信じ込んでいた。しかし、よく考えてみればこれは「恋」ではない。「一緒にいたい」とは全く思っていないのだ。私は一生、恋愛をできないのではないか……そう思ったこともあった。それでも別に生きていくために困ることはなさそうだし、それはそれでいいと思っていた。
ところが、つい3ヶ月ほど前、面白いことがあった。
英会話学校で出会った、ある女性。授業の開始前と終了後、ほんの数分間だけなのだが、彼女と話をすることがうれしくてしかたないのだ。なるべく長い間、彼女と話をしたい、こんな学校ではなく、もっと別のところで二人で話をしていたいと思った。彼女ともっといろんな話をしたいと思った。きっと話は合うだろうと言う確信もあった。彼女と会えるのを心待ちにしている自分がいた。もっと長い時間会って、話もして、本当に楽しい時間が過ごせたら、彼女となら「ずっと一緒にいたい」と思えるようになるかもしれない、そのためなら何をしても惜しくはない、と思えるかもしれない、と感じたのである。
残念ながら、その女性を2ヶ月ほど前から見かけなくなった。連絡先も知らない。もう二度と会うことはできないだろう、と思っている。これは果たして「恋」と呼んでいいのだろうか?
辞書によれば「特定の異性を身近に感じることで、何を捨てても惜しくはないほどの充足感に酔」いつつ「破局を恐れて不安と焦燥に駆られる」必要があるらしい。しかしそこまで大げさな感覚ではなく、もうちょっとおとなしい気分である。しかし、発展すればそういう気分になるかもしれない。
さしずめ「恋の卵」といった物なのではないか、と私は考えているのだが、いかがだろうか?
(99/10/26)