国内ブッコ:その丘の向こう
……編集室ファイル#7

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3.大爆走

9月12日 午前11時 函館駅構内

 このまま北斗星に乗っていては、到着時間があまりにも遅すぎる。
 憧れのブルートレインに名残を惜しみつつ、函館からは札幌行きの特急に乗り換えることにした。
 青森で北斗星の1号車側にくっついた機関車は、この函館駅でまた付け替えになっていた。列車の構造上「折り返し」というのができないので、盲腸みたいな駅に入るたびに前後に機関車を付け替えるのだが、函館から札幌までは非電化区間になるので、機関車もディーゼルの、それも1両では非力のため2両連結でブルートレインを引っ張っていった。

 その姿を見送って、隣のホームの特急に乗り換える。なぜか10分も遅れて出発し、しかも停車駅の多いこの特急のほうが、北斗星より早く着く。なんでだろう、と不思議に思っていたけど、列車が出発してみてよくわかった。
 「ディーゼルカー」というと、加速は電車より悪く、どかどかと振動と爆音を立てながらローカル線をのろのろ進んでいく。たまにクラッチつなぎ損ねてエンストしたりもする。そんなイメージ。  でもこの特急は話が別。振動と爆音、最初の加速度の遅さはディーゼルっぽいけど、そのうちどんどんスピードが上がってく。首都圏のあずさ、わかしおといった特急に負けず劣らずのスピードで、バリバリ爆音を立てながら進んでいく様子は、今までの「ディーゼルカー」のイメージをくつがえすには十分だった。
 そのうち、自分が乗っていた北斗星3号が、途中の駅でこちらの列車の通過を待っているのが見えた。確かにこんなバケモノじみた列車と競争なんかしたら、ディーゼル機関車2台で重い寝台列車を必死になって引っ張ってる北斗星なんて、ひとたまりもないだろう。

 特急は長万部から室蘭側に向かう。
 室蘭は日本でも有数の工業都市。広い土地を活用して、大規模な工場が立ち並ぶ。
 巨大な煙突が天を突き、車一台余裕で抜けられそうな直径のあるパイプが敷地内を駆け巡る。小さなビルほどの大きさもある円形の炉のようなもの、ビックサイトの東館全体がすっぽり入ってしまいそうなほど大きな倉庫。同じ工業地域でも、京葉線から見えるのとは比べ物にならないほどのサイズと迫力に圧倒された。
 その中を爆走するディーゼル特急――北海道は何にしても迫力が違う。

午後2時18分 札幌駅到着

 とりあえず一旦駅の外に出て、「ふらの・びえいフリーきっぷ」を買いにみどりの窓口へ。富良野周辺に設定されたフリー区間内と、札幌からフリー区間までの往復の特急が使える。今回の旅行はレンタカーメインでも、往復だけでも十分元が取れる。
 札幌からは旭川行きの特急で滝川まで行き、そこから富良野線に乗り換える。列車の本数の関係で、実は次の特急に乗っても結果は同じだったりする。
 そこで札幌で買い物でも――実はガイドブックの類をこれまで一つも見てこなかったから、(ホントに富良野と美瑛にいく、ってことを直感的に決めただけで出てきたのだ)どろなわ的に買うつもりでいた。
 でもまぁ、特急停車駅の滝川なら、大きな本屋ぐらいあるだろう、と思って、あえて早めの特急に乗ることにした。

 旧型あずさみたいな、4両編成の小さな特急が、札幌駅を離れていく。
 しかし、田舎を甘く見ていたことに、僕はまだ気がついていなかった…。

続く→

(03/9/23)
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