国内ブッコ:その丘の向こう
……編集室ファイル#7

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2.そして、海の向こうへ

9月12日 午前4時50分 八戸駅構内

 アラームより早く目覚めると、列車はどこかに停止していた。
 夜行列車は何度か乗ってて、たいていどこかで長時間停止があるから、その部類だと思って最初は気にしなかった。
 時間的にはあと40分ぐらいで青函トンネルに着くはず。北関東〜東北の集中豪雨で30分遅れて、午前5時半にトンネルに突入する、と聞いていた。
 窓の外を見ると、どこかの大きな駅。青函トンネルから30分の位置に、こんなでかい駅があるというのもなんかおかしい。青森から30分で龍飛岬まで行けるんだっけ??
 飲み物でも買おう、とロビーに向かって歩いていったら、駅名の看板が窓から見えた。

「八戸」

 …おかしい。青森すら通過しててもおかしくない時間帯に、なんでこの電車は八戸で止まってるんだ??
 ロビーに向かうと、不安げな乗客たちの姿があった。聞いてみると、なにやら前の列車に事故があって不通になっているらしい。復旧のめどはまだ立っていないらしい。
 長距離を走る列車である。多少の遅れは覚悟してた。せっかくだからシャワーでも使うか、と、食堂車に行ってシャワー券を購入。6時からの30分間を確保した。
 その時食堂車に女性乗務員が携帯で話をしていたのを小耳にはさんだ。

「もしかするとここで打ち切りになるかもしれないね…」

 おいおい…北海道の大地に踏み入れることなく終わりかいっ!!

ざんねん!! わたしの りょこうは これで おわって しまった!

 なんて、シャドウゲイトじゃないんだから…。

 しばらくロビーで老夫婦とだべってると、車掌さんがやってきた。何でもこの先の三沢駅で車と貨車がハデに事故ったらしい。復旧作業を進めているが、めどは立っていないという。
 一刻も早い復旧を、待つしかなかった。

 シャワールームは、思ったより広かった。
 ボタンを押すと、暖かい湯が出てくる。しかし湯の出る時間は全部で6分間。必要でない時にはこまめに止めて、少しでも時間を稼ぐ。
 シャワールームの石鹸台には、誰かが置いていった小さな石鹸が…Good Job!
 洗い終わったあと、もったいないからって6分過ぎるまでたっぷり浴びたのは言うまでもない。

 シャワーから上がる頃には、ロビーに人が集まってきていた。
 いつになったら動き出すのか…不安な面持ちで待つ乗客。
 僕も席を一つ確保して、ジュースを片手に列車が動き出すのを待つ構え…
 すると程なくして、列車ががたり、と音を立てた。
 列車はゆっくりと八戸駅のホームを離れていく。
 ロビーに安堵のため息が満ちた。

北斗星3号、3時間35分遅れで八戸を出発。

 そこからも、列車は動いたり停まったりを繰り返した。
 いつもなら深夜に通過するエリア。貨物列車以外に通る列車も無いはず。それが大幅に遅れて朝になってしまったことで、在来線のダイヤを縫うように進まなければいけなくなった。ダイヤの回復どころか、遅れていくばかり。
 青函トンネルに入ったのも、午前9時を過ぎていた。

 青函トンネル。一つ長い汽笛を鳴らして入っていったのは、ただ長〜〜いトンネルだった。もうちょっと面白い仕掛けがあるかと思ったんだけどなぁ。海底駅もあっさり通過、瞬間しか見られなかった。
 これだけヒマだと、広告打ったりしたらなんか違うかも、とか思ったものの、こんな海底のトンネルに広告を出す費用を考えたら、効果は薄いかもしれない。
 にしても…もうちょっと楽しめる何かがあるといいんだけどなぁ…。

午前9時半ごろ 青函トンネル通過
函館まで、あと1時間…

続く→

(03/9/23)
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