――――― 序章 ―――――
 
「宏、準備できたぞ」
『よし。今、信号を青に変えた。射程距離到達まで23秒だ』
「了解」
 沈黙
『10秒』
「ターゲット、確認」
『3秒』
「…」
『射程到達』
 パシュッ。
「命中確認。頭部だ」
『よし。すぐに引き上げろ、尚人。裏手にバイクを停めてある』
「OK。サンキュ」
手早く荷物をまとめ、肩に担ぐ。音を立てずに階段を降りて行く。
(今回も、無事に成功、と)
裏口を出ると、パートナーの言った通りにバイクが停めてあった。バッグをシートトランクに入れ、フルフェイスのヘルメットをかぶってバイクにまたがる。
 エンジンをかけて、1度だけ自分の右手を見た。
(すっかり、クセになっちまったな)
その右手でアクセルをひねり、発進する。
 47秒前まで、右手に握られていたもの。
 ライフル銃。
 
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