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1.レインチルドレンに紫の花束を
「あ、スコール、僕明日お休みもらうよー」
SeeDのスケジュールは司令官に伝えること。
そういえば言わなくっちゃ、とアーヴァインが作業の手を止めて口を開いた。正確に言えば彼はSeeDではないが、実質的には認められたようなもので最早バラムガーデン所属のSeeDたちに混ざり雑用から厳しい任務までをこなしていたので彼のその判断は間違ってはいない。幸いなことにここのところ大きな仕事はなく、任務を終えた同僚達が帰還して人手も足りていたので司令官その人も快く応えた。
「ああ、別に構わない。予定があるのか?」
「うん、デート」
心から嬉しそうに、そのまま放っておいたらとろけて消えてしまうのではないかという笑顔を浮かべ彼が肯く。
その言葉に異常なほどの食い付きを見せたのは言われた男の横で分厚い本を読んでいたリノア。うっかりデートなどと口にしてしまった彼を力任せに揺さぶって
「きゃー!いいねいいねっ!デートはいいよー!っていうかいつも二人はデートの時どこいくのなにするの!?」
なされるがまま、がくがく揺さぶられつつ彼はええとねえと何事もないかのように腕を組んだ。恋愛ジャンキーリノアのハイテンション攻撃に全く動じた様子を見せない彼を司令官はかなりの勢いで尊敬した。凄いよお前。俺には無理だよと心の中で。
「一緒にお昼ご飯食べて、お店冷やかして」
「うんうん」
「お茶して、映画なんか見て晩ご飯食べて」
「で?」
「おしまい」
「おしまいだぁああ!?」
噛みつかんばかりの勢いで詰め寄られても彼はなんのこともなく、うん、おしまいだよーと笑って答える。
「リノアは何を期待しているのかな?」
「ハグハグっとしたり、キスしたり、ちょっと言えないことしたり」
「手え繋いで歩いたりはするけどー」
「するけど??」
「それだけで十分なんだよね僕」
「え、ええっ?!そ、そんなもの?そんなものなの??」
「だって僕今この状況にいたるまで15年近くかかったんだもん。次のステップまであと倍は待てるね」
「ひえええ」
「48歳かぁロマンスグレーだねえ」
「倍ってそういうこと!?30年も待つの?!ねえ!?」
「いい年したおじさんが、花束持ってプロポーズっていうのちょっとよくない?」
ええええと不満の声を上げるリノアの横で、話がいやでも聞こえてしまう位置にいたスコールは思わず心の中で自問自答してしまう。
なんてことを普通に言うんだこいつは。ちょっとやばいんじゃないか?聞いてるこっちの頭がおかしくなりそうだ。いいやむしろ俺は汚れてるのか?ヨゴレか!?ヨゴレなのか!?や、やめてくれ、そんな目で見るな!そんな真っ直ぐ見るなって!やめてー
「えっちょっスコール?どうしたんだよそんな急に頭抱えて。だいじょうぶ?」
無言で机に突っ伏したスコールの代わりに何か察したらしいリノアが、腕を組み、出来る限り真面目な顔をして答えてやった。
「なんだか地面をのたうち回りたい衝動と戦ってるみたい。ほっといて平気よ」
=
これくらいの速度で一つ(最早健全を通り越している)
☆
2.空には勇者がいた!
要するに、大統領官邸に敵が入ってこなければいいんでしょー?とセルフィは腕を組んで言った。そのあまりにもちゃらんぽらんとした態度に、一握りを除いたエスタの高官達はSeeDへの依頼という己の行動を早くも後悔し始めていたが、口には出さなかった。口に出さずにSeeDに全面を任せて官邸内に引っ込むことにした。賢明な判断。
「それなら話は簡単だよね?」
「なにか名案があるのか」
「名案っていうか、古来より伝わる落とし穴とかどう?」
「…古来過ぎないか?」
「こういうメカメカしい技術に頼っちゃってるぞー!って人たちほど単純な罠にはひっかかるもんだよー!」
「…そういうものか?」
「そういうもんだよー!」
その言葉にそうだそうだと拳を突き上げるのはどこから紛れ込んだのか今回守るべき要人、エスタ大統領。ガルバディアの旧魔女派の人間に命を狙われているというのに妖精さん達の作戦会議に一緒に参加できることがよほど嬉しいのだろう。一緒に地面のしゃがみ込み、嬉々として地面に広げた地図に次々と指示を出していった。
こういうときだけ、悪戯を考えたりするときだけ、君は頭がいいよねえラグナ君と言う親友と無言を持って肯定する親友がその背中を見守る中、大統領とSeeDの若者達の作戦会議は続いた。会議というのもおこがましいかもしれないが。
「足下の草を輪っかに結ぶとか」
「この町のどこに草が生えてるんだよ」
「盲点だったなそれ」
「じゃあさじゃあさ首の高さに錆止めしたピアノ線張るとか〜」
「くつに画鋲を入れるとか」
「こら、そんなことしたら痛いでしょ!」
「いやその前にもっと痛いのが隠れてる!隠れてるから!」
「大統領!官邸にお戻り下さい!」
会議と呼ぶのもおこがましいにぎやかなそこへ半泣きのトーンで飛び込んできたのはエスタの罪も泣き一般市民。官邸の中に姿が見えないかと思ったらこんなところでなにやってるんですかと無理矢理引きずられ、
「えええこんな面白そうなことしてんのに俺だけ仲間はずれかよー!」
「なんのためにSeeDを呼んだのか少しはお考え下さい!」
「うわあ〜!タライが落ちてくるとか床を凍らせてつるっといかすとかアイデアいっぱいあるのによー!」
羽交い締めのまま建物の中へ姿を消していった。
そんな様子を大統領も大変だねえという目で見ていた面々は、そのまま何事もなかったかのように地図に向き直ると
「じゃ、この道からこの入り口までブリザガで凍らす、と」
「で、ここはタライね」
大統領のアイデアは尊重することだけは、してさしあげることにした。
依頼主への精一杯の礼儀。
曲がりなりにもプロですから。
「それじゃあラストは油巻いて、つるっといったところに黒板消し〜!」
要するに、大統領官邸に敵が入ってこなければいいのだから。
まあいざとなったら自分の一人ぐらい守ってみせてくれよと
強制退場させられた父親を思いながら、効率よりも面白さ優先の作戦会議を続ける班長が、そこにいた。
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半分寝ながら、気がついたら意味の分からない文章が
3.嘘の香りの香水をつけて歩いた日々
彼が学園長に挨拶に行っていたたかだか数分の間に、何か決定的な出来事があったらしい。戻ってきた彼が見たのは
混沌。
まさしく混沌としか言い様がない状況が待っていた。
話がかろうじて通じる一人を捕まえて聞いてみれば某国大統領が 今日は無礼講だろう! と振る舞った高級酒が猛威をふるったらしい。アルコールに耐性がある者、もしくは賢き者は我先にとこの事件現場から逃げだしたのであろう。周りを見渡せば我らがカードクイーンの姿はどこにもなかった。意外と逃げ足が早いんだな、キスティス。
目の前ではビデオカメラを回してパーティを記録すべき任務をおったバラムのにぎやか担当が、けらけら笑いながら軟弱スナイパー青年に捕獲され振り回されていた。無論、青年も笑い転げていた。
頭痛を感じて、彼もその場から逃げるが価値だと判断したが、ふとそれをとどめるかのごとく強い視線を感じた。
横目で見るとかの彼の魔女。
それに輝くは期待の光。
「ねースコールー」
彼女も少なからず、アルコールが効いていた。
「あれ、私もやって欲し」
「パス」
「えー!」
「悪いが、パス」
「なんでなんで!?」
「…(あんな恥ずかしいこと、出来るか)」
「やってよスコー」
「パス」
「ケチー!」
「何とでも言ってくれ」
「スコールのことだからあんな恥ずかしいこと、出来るか。とか此処にしわ寄せてるんでしょうけど」
「…」
「いつももっと恥ずかしいことしてるんだから良いじゃない!」
腰に手を当て、仁王立ちで断言する彼の魔女。
その声はホール中に響き渡り
それまでざわめいていたホールが一瞬静けさを産んだ(ように彼は感じた)。
永遠にも思える静けさが止み。
いつの間にか肩車の陣形を取っていた酔っぱらいの男女が、彼の肩を叩く。
肩にのせられた小さいのと、肩にのせている大きいのが、同じ角度に首を傾げて口を開いた。
「ねえねえスコール」
「スコールはんちょ」
「もっと恥ずかしいことって」
「なになに?」
「もしかしてアレなこと?」
「アレでコレでナニなこと?」
「うわあはんちょもスケベだあ」
「やるなあスコールはんちょー」
きゃらきゃらと笑い声をあげて喜ぶ二人を恨めしそうに睨み付けながら、
歯を食いしばったような声で、彼は呪詛を吐いた。。
「みんな時間圧縮されてしまえ」
件の彼の魔女は、彼の隣で。何にも考えていなさそうな過去も未来も一緒くたにしたような表情でげらげら笑っていた。
=
そして14伝説へ
☆
4.鼻水少年の過去
「君もいろいろ大変だよね〜自業自得とは言え」
「あ?なにがだよ」
「スコールにこき使われ、キスティにこき使われ」
「言うなよ!」
「あんなに君のこと嫌ってたゼルでさえ『あいつって大変だよな』って同情してたよ」
「いらねえそんな同情!」
「あはははは!まぁいいじゃんそのおかげで今じゃみんな君のこと生温かい目で見守ってくれてるしー」
「見守るな!そんな気色悪い目で見守るな!」
「あはははははは!」
「そんな立ってられないほどおかしいか人の不幸が…!」
「あっ!こら〜!サイファー、まあたアービンいじめてー!」
「お前って女はいつも突然現れて意味不明なことを…!今の流れでどうやってそんな勘違いを」
「今度はなにしたの?おもちゃ壊したの?それともお菓子とったの?」
「とらねえよ!何年越しの勘違いだよ!」
「違うよセルフィ。サイファーとってないよ!ほんと!」
「ほんと?サイファーってばいつもいつもとってないっていうのにゼルのおやつ食べちゃうじゃん!アービン泣かしたらあたしが相手だよ!」
「お前、俺に勝てると思ってるのか!?」
「うん」
「だ、だめだよサイファーやめときなって!セフィ今とんでもなく強いんだから!何にもジャンクションしてない状態で魔法を連発できるんだから!」
「…お前は怪物か」
「これも修行のたまもの〜!それに、ピンチになったら仲間を呼ぶもん!」
「あー?呼べるもんなら呼んでみろよ」
「こんな事言ってるキスティー!」
「すみませんごめんなさい」
「反省したその心意気はよしっ!じゃっまたあとでね〜」
小さな彼女が手を振りながらエレベーターホールに向かうのを呆然として見つめながら、言いがかりをつけられた元不良が、呟いた。
「…ありゃ、なんだ。お前の騎士?」
「あはははは!」
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彼女に逆らうと ジ・エンド 食らいます
キスティに関わると目からビームまたはミサイルを食らいます
リノアに関わると口では言い表せない酷い目に遭います
☆
5.1925年僕は死神に出会った。
「というわけで〜今年の学祭でラグナ様を呼んで超科学国家エスタのヒミツとかばらしてもらおうと計画中なんだけど〜」
「おお、すげえ!豪華じゃねえか!」
「でしょでしょー?でもね、ラグナ様すっごい忙しいみたいなんだよねー。多分きちんと頼んだら喜んで学祭にも来てくれると思うんだけど」
「周りが許さないと」
「でね、考えたの!」
「何を?」
彼女はしゃがみ込んだまま二人の頭を寄せて、聞かれてはならないという風に辺りを見回し、声のトーンを落とす。聞かれたくないなら図書室なんかで学祭委員会なんかするなよとスコールは思いつつ、つき合いよく耳を傾けてやった。
彼女はこれ以上の名案などない!と顔で言いながら力一杯拳を振り上げた。
「ラグナ様捕獲だいさくせーん!」
「は?」
「なんだそりゃ!」
「だって拉致監禁しちゃえばこっちのもんでしょ!」
「いや、いいのかよ!いや、よくねえだろ!!」
「キロスとウォードが止めるんじゃないか?」
「あの二人には許可貰ってるよー!面白いからどんどんやりなさいって」
素晴らしい友人を持ってるな、あの男。羨ましくないけど。
よく考えれば大統領を拉致しようなどと言っている友人を持っている時点で彼も似たようなものなのだが、それには気がつかないフリをして、彼は静かに父親に同情した。
5秒の同情の後、さてやるか、と心を切り替える。
こんな面白そうなことを逃してなるものか。
「と、いうわけなんだけど。協力してくれる?」
「あの二人がいいっていうなら良いんだろうな。面白そうだし俺はやるぜ!」
「まあ、いいだろう」
「よっしゃー!じゃ、早速作戦説明〜!明日の正午、司令室に来てくれるように頼んであります!その時にあらかじめ潜んでいた学祭実行委員が飛びかかります!スコールは右、ゼルは左、あたしはエレベーター前から!以上!」
「了解っ!」
「了解」
頭を寄せ合ったままぐっと親指を尽きだし、三人はにやりと笑った。
その様子を後ろから見ていた図書委員の人々はこの学校の上の方の人たちってみんなあんなかよ、と少しばかり夢をなくしたりしていた
次の日、
「うわぁっなにするの妖精さんたちっ!きゃーやめてー!いたいけなおじさんをイジメないでー!若者達の反抗は窓ガラスを割ったりバイクを盗んだりで解消してー!」
という叫び声が司令室中に響き渡ったとか、渡らなかったとか。
=
シードさんにんぐみ の デルタアタック!
ラグナ は にげられない!
☆
6.初めて爪を噛んだ日
えーCC団定例会議を始めまーす
はい、みんな集まってくれてありがとう。今日は新しい称号について話し合おうと思うの
あーついにキングに勝利した人がいましたもんねー
凄いなああいつ。器用な奴だとは思ってたけどまさか司令官やりながら…なあ
あの子、暇さえあればっていうか暇じゃなくたってカードゲーム三昧だもの。ガルバディアガーデン乗り込むって時だって向こうの生徒と延々やってたのよ
マ ジ で す か !
俺たちが一生懸命戦ってるときになにやってんだ!?
いや、それくらいしないと頂点に上り詰めることは出来ないのよ!
う、うはぁ
なるほどー
でね、私を倒したのだから彼に新しいキングになって貰おうと思ったのだけど、それもつまらないから新しい位を授けようと思うんだけど。何か良い意見ある?
はーい!ボスはどうですか!
うーんいまいちインパクト薄いわねえ
親分!
ヤクザ?
帝王!
悪っぽい!
…神?
誰かがぽつりと呟いた言葉に、周囲の団員達はがっと示し合わせたように同時に立ち上がり、
…それだっ!!
お互いを指をさして叫んだ。
「あっ神だー!」
「おーい神ー今から飯行くんだけどお前はどうする?」
「今日のランチはハンバーグだよー神ー」
「…それは俺か。俺のことなのか?」
=
カードの神誕生
☆
7.「進」と、いう字を俺は嫌う
ぴんぽんぱんぽん
『あーこちらブリッジ。万年シード候補生サイファー・アルマシーくん、コーラと焼きそばパン買ってこい今すぐ買ってこい三分以内ダッシュで買ってこい。繰り返す。万年シード候補生サイファーくん今すぐ立ち上がってコーラと焼きそばパンだ。三分過ぎたら罰ゲーム。以上!』
二階エレベーター前で挑戦を受けてカードゲーム真っ最中であった彼は、そのあまりにも横暴な放送が途切れるや否や持っていたカードをぐしゃりと握りつぶした。
エレベーターの上、司令室のあるあたりを年少クラスなら速攻泣き出すであろう目つきで睨み付けて。
声の主は間違いなくSeeDの司令官その人。
相手をしていたアーヴァインがまた血が流れるんじゃないか、今度は顔の真ん中の傷だけではなくて、なんかもうさすらいのギャンブラーみたいなことになってしまう大決闘になるんじゃないか、傷は男の勲章って言うけどあんまり傷だらけだと女の子にモテなくなっちゃうよと的はずれな心配をしていると、彼はゆっくり立ち上がり、吐き捨てるように忌々しげに呟いた。
「風紀委員の俺に廊下走らせる気かあの野郎…!」
「問題はそこなんだ?!」
「この勝負はいったんストップだ。俺は決着をつけてくる」
「うん、それはかまわないけどさー」
一方的に言い捨ててそのままエレベーターで降りていく怒れる青年を帽子を振って見送って、残された青年はカードを片付けながら思う。
それでもおつかいはきちんと行くんだね、サイファー。
=
パシりパシられ
☆
8.コインは100枚なかったら嫌だ
ぴんぽんぱんぽん
『あーこちらブリッジ。万年シード候補生サイファー・アルマシーくん、ファンタグレープとどっさりみかんゼリー買ってこい』
「マジかよ!?またかよ!」
『ちなみにこれはキスティス・トゥリープ教官より勅命だ。よって繰り返さない。以上!』
「なあアーヴァイン。今サイファーの奴が血相変えて走ってったんだけどよー」
今し方見た光景を不思議そうに話す友人に、彼も不思議そうに答えた。
「どんな秘密を握られてるんだろうね、一体」
=
キスティス裏番長計画
☆
9.林檎に話しかけられ喜んだあたし
小さなエルはその人を見上げて言いました。
キロさんにも、ラグナおじちゃんにもようせいさんがいるんでしょ?エルにもようせいさん、来ないかなあ
言われた方は困りました。
何せ好きで妖精さんを住まわせているわけでもないし、いるときはいるときで頭の中がざわついて大変鬱陶しいのです。彼についている妖精さんは若い男の子の事が多いらしく珍しいことや初めて見るらしいことを目の前にすると本当に楽しそうだと言うことは分かります。
それでも何を言っているかは分からないし、なるべくならば出てきて欲しくありません。
どうにか諦めて貰わないと。
彼はそこまで一息で考え、近くの縁石に腰を下ろし少女と目線を会わせて言いました。
この妖精さんは、悪いことをした人にしか取り憑かないんだよ。ラグナくんはいいやつだから、妖精さんが間違えたんだろうねきっと
それを言われた小さなエルは思わず言葉を失いました。
目の前にいる変な服だけどとてもいい人のキロさんは、本当は悪い人なんでしょうか。
えっとね、キロさんのところにもようせいさんうっかりまちがってきちゃったんだよ!
そうかもね
えっとね、えっとね、キロさんがもしわるいひとでもエルはヒミツにしておいてあげるからね!ゆびきり!
それはありがとう
必死に自分をかばおうとする少女に子供って面白いなあと新鮮な気持ちになりながら、乞われるまま小指を出して彼女の好きにさせてやりました。
「お、お帰りエルー。キロスおじさんにへんなことされなかったかー!?」
「ただいまー!エルねえキロさんといっぱいおしゃべりしたんだよ!たのしかった!」
「へえ、何話したんだ?」
「それはねえ、エルとキロさんのヒミツだもん!ねー!」
「…このやろキロス!お前エルを餌付けでもしたな!」
「君じゃあるまいし、そんなことはしないよ」
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ウィンヒル共同生活編
☆
10.桜が咲いたのをあたしは知らない。
なあなあ聞いてよキロスくん
どうしたラグナくん体育座りでアリを見ているのは有意義な時間かい
エルに…
エルオーネがなにか?
エルに好きな人がいるんだそうな…
…………それだけ?
それだけ。
……よかったじゃないか。
いやね、俺もそう思うよ!?エルが幸せになれるなら俺だって嬉しいし全身幽霊で頑張るよ!?
…意味は分からないが、気持ちは良く伝わったよ、うん
でもなああの小さなエルが恋人なんか連れてきて腕なんか組んじゃってて 『わたしこの人と結婚するの』 なんて言われた日には泣いちゃうよ…!
うん。泣くだろうな。
結婚式には俺がスピーチなんか頼まれちゃうんだよ…エルはドレスがこれまた似合うんだ真っ白の何段もレースが折り重なってるやつでさ…俺はそれを見てまた泣いちゃうんだ…
いつにも増して妄想濃度が高いなあラグナくん。
だって!
だって?
『私の好きな人はおじさんも知ってる人よ』とかみょーに具体的で生々しいこと言われたんだよーーー!!
うわーんどうしよううちの妖精さん達の中じゃないだろうなあちょっと勘弁してくれようあの小さかったエルがさあデザート一口あげるともうそれだけでin天国みたいな顔してさあラグナおじちゃんありがとーだいすきー!って抱きついてきたエルがさあ俺はもう切なくて切なくて切なさ乱れ撃ちだよレイン助けてくれー!と嘆く男を、親友である彼は放置することにした。
やれやれ、また病気が始まったよと首をすくめた。
その場所から少しだけ離れたエスタの公園で、かの嘆きの大統領のもう一人の親友相手に”小さかったエル”が恋愛相談をしているとは、
そしてその内容が多少なりとも自分に関わることだとは、
さすがの彼も夢にも思わなかったが。
=
エルの片思い大作戦(?)(しかも世の中で一人だけという自信があるカップリングの)
ウォードは黙って肯いていてくれるだけでマイナスイオンを発生させます