30 Minutes NetWorking
No.SW02

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第2回キャンパスネットワーク(2) 階層モデル

■ 3つの階層

スーパーインター博士

さて、Ciscoのいうキャンパスネットワークで、つまり現行の20/80ネットワークでのネットワークモデルを説明しよう。

ハイパーネット助手

ネットワークモデル?
OSI参照モデルのようなモデルですか?

スーパーインター博士

いやいや、そうではない。OSI参照モデルは「ネットワーク(通信)の仕組み」のモデル(型)だが。
今から説明するものは「ネットワーク設計」というか「機器の配置」というか、データの制御モデルだな。

ハイパーネット助手

データの制御。データをどう流すかってことですかね。

スーパーインター博士

どのレベルの機器をどのように配置して、どのような制御を行わせるか、というモデルだな。
Ciscoが定義するモデルは3階層からなる。

3層モデル

[FigureSW02-01:3層モデル]

ハイパーネット助手

アクセス層ディストリビューション層コア層の3つ、ですか。

スーパーインター博士

そう、その3階層からなるモデルだ。

ハイパーネット助手

中央、ディストリビューション層の「MLS」ってなんです?

スーパーインター博士

マルチレイヤスイッチだ。レイヤ3のルーティングの機能を持つスイッチのことだな。

ハイパーネット助手

ははぁ。ルータっぽいスイッチってことですか?

スーパーインター博士

スイッチっぽいルータ、だな。どちらかといえば。
ともかく、この3階層にはちゃんと意味がある。

  • 1.アクセス層
    • エンドユーザのいる層で、コリジョンドメインを形成する。
    • レイヤ2スイッチもしくはハブで接続される。
    • VLANでコリジョンドメインを分割する。
スーパーインター博士

アクセス層は、一番下位の、エンドユーザのPC同士を接続する層だな。

ハイパーネット助手

ユーザがいて、普通にLANとして使う層ですね。

スーパーインター博士

そうなる。
次が、ディストリビューション層だ。

  • 2.ディストリビューション層
    • アクセス層の各ネットワーク(サブネット)を集約する。
    • マルチレイヤスイッチ(L3)で接続し、ルーティング・フィルタリングを行う。
    • 部門単位で分割され、部門サーバなどが設置される。
    • 部門間接続、VLAN間接続などを行う。
ハイパーネット助手

アクセス層のネットワーク同士を繋げるわけですね。

スーパーインター博士

そうだ。キャンパスネットワークの中でもっとも重要な層だ。
多くの制御はココで行われる。

ハイパーネット助手

は〜。

スーパーインター博士

最後がコア層、見てわかるようにディストリビューション層同士を接続する層だな。

ハイパーネット助手

バックボーンッスね。

  • 3.コア層
    • ディストリビューション層の部門を接続する。
    • L2スイッチまたはルータで接続する。
    • キャンパスのアクセスが集中するバックボーンで、エンタープライズサーバなどが設置される。
    • フィルタリングなどを行わず、高速な転送を行う。
スーパーインター博士

最もトラフィックの集中する層であり、ここでフィルタリングを行うとボトルネックとなる可能性が高いので、通常は転送のみを行う層だ。

ハイパーネット助手

ははぁ。
…って、前にこれに似た図がでてきませんでしたっけ?

スーパーインター博士

キャンパスネットワークのサービスの話の時の図だな。
もちろん、この図も3階層モデルが頭にあっての図になっているわけだ。

キャンパスネットワークのサービス

[FigureSW01-03:キャンパスネットワークのサービス]

ハイパーネット助手

そうそう、この図ですよ。

スーパーインター博士

この図を層わけするとこうなるな。

3階層モデルにした場合

[FigureSW02-02:3階層モデルにした場合]

ハイパーネット助手

なるほどなるほど。

スーパーインター博士

さて、理想的に作られるキャンパスネットワークは、こののような3層構造になっていなきゃならん、というわけだな。

ハイパーネット助手

そうなんですか?

スーパーインター博士

そうでなければ、わざわざ説明しない。
つまり、アクセス層で発生するトラフィック、特にブロードキャストトラフィックは他のネットワークに影響しない。

ハイパーネット助手

え〜っと、ディストリビューション層のマルチレイヤスイッチがブロードキャストをとめるからですね。

スーパーインター博士

そうだ。そして、それぞれのネットワーク間でのトラフィックはコア層で転送される。
そのトラフィックは事前にディストリビューション層でフィルタリングされたものになる。

ハイパーネット助手

コア層はバックボーンになるから、余計なことをやる暇はない、と。

■ ブロックと冗長構成

スーパーインター博士

さて、ディストリビューション層のマルチレイヤスイッチで作られる単位のことをスイッチブロックという。

ハイパーネット助手

はい? どういうことです?

スーパーインター博士

つまり、部署やフロアなどの1つの単位のことだ。欧米などではビル1つがスイッチブロックにもなる。
1つのサブネット、もしくは複数のサブネットから形成される単位だな。

スイッチブロック

[FigureSW02-03:スイッチブロック]

スーパーインター博士

まぁ、1つのサブネット、と考えてもらったほうが早いといえば早い。
そして、これをつなぐのがコアブロック

コアブロック

[FigureSW02-04:コアブロック]

ハイパーネット助手

あ〜、これはわかる。コア層のスイッチ群ですね。

スーパーインター博士

そうだな、バックボーンブロックと言い換えてもいい場所だろう。
これらの各ブロック内では冗長構成がとられるわけだ。

ハイパーネット助手

機器が故障した場合の代替でしたっけ。冗長構成。

スーパーインター博士

そうだ。
スイッチブロック内では、まずアクセス層のL2スイッチが故障した場合に備え、冗長構成がとられSTPが使用されるわけだ。

アクセス層スイッチの冗長化

[FigureSW02-05:アクセス層スイッチの冗長化]

ハイパーネット助手

あんまり変わってない気がしますけど?

スーパーインター博士

L2スイッチ間にリンクが張られているだろう。
それにより、L2スイッチとディストリビューション層のスイッチ間のリンクのどちらかが切れても大丈夫になるわけだ。

ハイパーネット助手

なるほど。

スーパーインター博士

さらに、L2スイッチからディストリビューション層のスイッチへはHSRPによる冗長化が図られる。

ディストリビューション層スイッチの冗長化

[FigureSW02-06:ディストリビューション層スイッチの冗長化]

ハイパーネット助手

壊れてないマルチレイヤスイッチを選ぶってことですか。

スーパーインター博士

まぁ、そういうことだな。STP、HSRPについてはまたいずれ話そう。
一方、コアブロックにも冗長化が行われる。正確にはコアブロックとの接続にだな。

コアブロックの冗長化

[FigureSW02-07:コアブロックの冗長化]

ハイパーネット助手

これはどうやって冗長化するんです?

スーパーインター博士

ディストリビューション層のマルチレイヤスイッチがルーティングするか、コア層のルータのHSRPをするか、だな。

ハイパーネット助手

スーパーインター博士

コア層がスイッチだった場合はルーティングする。

コアブロックの冗長化・スイッチ

[FigureSW02-08:コアブロックの冗長化・スイッチ]

スーパーインター博士

黒色のリンクと、青色のリンクはサブネットが異なる。通常はどちらか一方かロードバランシングしているが、Aがダウンしたならば、XにはYからのアップデートが青色のリンクを通ってこなくなるから…。

ハイパーネット助手

黒色のリンクを使う、と。ルータ間を2つのリンクでサブネットを変えてつなげている形になるわけですね。

スーパーインター博士

そういうことだ。もしコア層がマルチレイヤスイッチかルータだった場合はHSRPを使えばいい。

ハイパーネット助手

なるほどです。

■ Cisco機器の選択

スーパーインター博士

さて、ではどのような機器を選べばいいか、という話をしておかないとな。
もちろん、Cisco製品で、だ。

ハイパーネット助手

まぁ、ここでアライドテレシスのL3使いましょうとかいったら爆笑ですからね。 ▼ link

スーパーインター博士

そうなったら、CCNPという試験はずいぶんと懐が深いと関心するわけだが。まぁ、そうはいかん。

ハイパーネット助手

ですよね。

スーパーインター博士

製品の細かい特徴は、Ciscoのサイトでも見てもらうとして。
ここでは大雑把に説明しよう。 ▼ link

ハイパーネット助手

はい。

スーパーインター博士

アクセス層に使われるスイッチは、特にコレといった要件がない。VLANが使えて、トラフィック量に応じた帯域幅を持つスイッチだな。

  • 1.アクセス層
    • Catalyst1900、Catalyst2900XL、Catalyst4000、Catalyst5000
スーパーインター博士

一方、ディストリビューション層のスイッチは、レイヤ3スイッチでなければならない。

ハイパーネット助手

ルーティング機能が必要ってことですね。

  • 2.ディストリビューション層
    • Catalyst2900G、Catalyst3500、Catalyst6000
スーパーインター博士

コア層はより高速なトラフィック転送が必要になるわけだ。

  • 3.コア層
    • Catalyst6500、Catalyst8500
スーパーインター博士

まぁ、正直ちょっと古い資料からひっぱってきたので、最新の情報はCiscoのサイトを見てくれ。
要は数字が大きいほど高性能ってことで。

ハイパーネット助手

なんか、投げやりだ。

スーパーインター博士

重要なのは、どの層にどういう機能が必要か、ということだ。
要点をつかんでおくように。

ハイパーネット助手

はいな。

スーパーインター博士

うむ。
さて、今回はここまでにしておこう。

ハイパーネット助手

いぇっさ〜。
30分間ネットワーキングでした〜♪

欧米などでは
Ciscoの本とか読むと、どうも単位がでかくって想像できないことがやけにおおいです。
STP
[Spanning-Tree Protocol]
L2スイッチ・ブリッジの冗長構成によるループを防ぐ。後述。
HSRP
[Hot Standby Router Protocol]
Cisco社独自ゲートウェイ冗長化プロトコル。後述。
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • キャンパスネットワークは3階層の構造からなる。
    • アクセス層はエンドユーザがいるワークグループ。
    • ディストリビューション層はアクセス層を集約する。
    • コア層はバックボーンとして全社的に接続する。
  • 各層で冗長構成をとる必要がある。

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管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp