■ キャンパスネットワーク
Ciscoのスイッチを語る上で、まず理解しておくべきことはキャンパスネットワークだ。
キャンパス? 学校のネットワークってことですか?
あぁ、確かに「キャンパス」というのは学校や病院の「構内」って意味だが。
この場合の、「構内ネットワーク」は学校だけに限らず、ビルやビル群をまとめた一定地域内のネットワーク、という意味だな。
LANのことですか?
いやまぁ、確かにLANのことだ。
そうだな、「いくつものLANをまとめたビル(もしくはビル群)の1つの企業ネットワーク」ってところかな。
はぁ、普通のLANの概念とどう違うんです?
う〜ん、そういわれればコレといってないが。
もともとLANという言葉がかなり広い意味を持ってるからなぁ。
そうですねぇ。「狭い範囲のネットワーク」ですからね。
まぁ、つまりだ。「構内」つまり自前でケーブル引いて構築できる範囲での、いくつものネットワークを持つ、わりと大き目のネットワーク群、ということだな。
なるほど。ってことは、もちろん使うのはLANテクノロジーってことですね?
そういうことだな。構内だから、レイヤ1・2はやはりLANテクノロジーを使う。
イーサネット、トークンリング、FDDI、場合によってはATM-LANなんかも使うだろう。
使いますか、ATM-LAN。
いや、普通は使わん。主力はやはりイーサネットだろう。
ですよね。
■ キャンパスネットワークの問題
さて、ネットワークの規模が大きくなってくるといろいろ問題が発生するな。
まずありえるのは、コリジョンだな。
「衝突」ッスね。
でも、コリジョンドメインを分割すればいいじゃないですか?
確かにそれはそうなんだが。
ネット君、コリジョンドメインの分割、つまりスイッチ(ブリッジ)ではとめられないものがあるな?
ブロードキャスト?
そう、レイヤ2もしくはレイヤ3ブロードキャストだ。
ARP、NetBIOSなどのL2ブロードキャスト、DHCP、RIPなどのL3ブロードキャスト。これは止められない。
じゃあ、ルータを使ってブロードキャストドメインを分割する?
それも手だが。もう1つの手法としては、VLANだな。
ぶいえるえーえぬ?
「ブイラン」だ。読み方は。
どちらにしろ、ブロードキャストドメインの分割は、ルータによるルーティングが必要となるということだな。
は〜。そうなんですか。
ともかく、まず重要なポイントはトラフィックの制御が必要、ということだな。
つまり、スイッチ、ルータによるコリジョンドメイン・ブロードキャストドメインの分割が必要、ということだ。
はいな。それはわかります。
もう1つが、そのスイッチ、ルータがネットワークの重要な位置をしめていることが問題だ。
つまり、故障するとすごく困る。
困りますね、確かに。
故障しない機械なぞ存在しない。
死なない人間などいないのと同じ事だな。
あ〜。確かに死なない人間はいませんからね。
……ホントにそうか?
いや、死にますって。
そうだな。ネット君でも血仙殺をくらえばさすがに死ぬだろう。
ともかく、ネットワークで重要な位置をしめるルータ・スイッチでも壊れるときは壊れる。さて、どうする?
どうするって…。他のを用意する?
まぁ、いいだろう。間違いではない。
複数の同じ働きをする機器を最初から組み込んでおき、故障した場合にそっちに切り替えるなどの冗長構成が必要だ、ということだな。
あ〜。なるほど。
■ 80/20・20/80ルール
さて、このキャンパスネットワークだが。
かつては80/20ルールというのがあった。
80/20ルール? なんですか、それ?
ローカル、つまり同一(サブ)ネットワーク内宛のトラフィックが全体の80%を占める、というルールだ。
サブネット外へのトラフィックは20%以下に収まる、というわけだ。
ははぁ、だから80/20。
[FigureSW01-01:80/20ルール]
従来型のネットワークでは、同一ネットワーク内のサーバ宛、つまりファイル・プリンタ共有型のアプリケーションがメインだったわけだ。
ふむふむ。
80/20ルールのネットワークでは、レイヤ2、つまりコリジョンドメイン内での制御がトラフィック制御の中心だったわけだ。
いかにしてコリジョンをなくすか、スイッチやブリッジの出番、ということだな。
スイッチやブリッジの重要度が高いってわけですね。
そうだ。ルータは必要最小限、つまり残り20%以下のトラフィックに対し輻輳などが発生しない程度の機能さえあればいい、ということになる。
ははぁ。
でも、「かつては」っていうんだから、今は違う、と。
そうだ。今は20/80ルールになっている。
20/80ってことは、逆ですよね。
サブネット内が20で、サブネット外が80?
そういうことだ。
[FigureSW01-02:20/80ルール]
現在はWeb型アプリケーションによる統合されたサーバ、というのが多い。もちろんファイル・プリンタ共有は残ってはいるが、その役割を減らしつつある、というところが現状だな。
は〜。
急速に普及し発展したインターネット技術がそのままキャンパスネットワーク内に盛り込まれた形になってるわけだ。
IISを使ってプリンタ出力、なんてやってるぐらいだからな。
なるほどなるほど。
ということは、スイッチとルータの重要度が逆転する?
そうなる。いままではローカルなトラフィックばかりに注目してきた。
サブネット内での帯域の増加や、スイッチによるコリジョンの減少などだ。
です。
だが、20/80ルールにより様相は大きく変わる。
サブネット間の帯域幅、ルータの機能などがまず必要だ。
そうですよねぇ、上の図だとバックボーンの負荷が大きくなるわけですよね。
うむ、それにどこに統合化されたサーバを置くか、という問題も発生する。
統合化されたサーバにはトラフィックが集中する。どこに置くかでそのレスポンスも異なってくるわけだ。
ははぁ。
■ キャンパスにおけるサービス
このような新しいキャンパスネットワークでは、3つのサービスが考えられる。
- ローカルサービス
- リモートサービス
- エンタープライズサービス
ローカルサービスってのは、さっきの言い方でいえばファイル・プリンタ共有型ってやつですよね。
そうだ、サブネット外へでないサービスだ。
トラフィックはそのローカル内に限定される。
リモートサービスってのは?
リモートサービスはサブネット外に存在するサーバが行うものだ。
なので、ルータを経由して出て行くことになる。
じゃあ、エンタープライズサービスは?
エンタープライズサービスは全ユーザ対象のサービスだ。
なので、ユーザのいるサブネット外にあり、すべてのユーザからアクセスが可能な位置に存在する。
リモートとどう違うんです?
リモートは、一部のユーザが使うためにサブネット外に置かれているサーバ、サービスだ。
[FigureSW01-03:キャンパスネットワークのサービス]
20/80ルールとあわせて考えると、現在ではエンタープライズサービスが主流になってきている、ということだな。
う、う〜ん。もうちょっと具体的に。
例えば、メール、ビデオ会議、インターネット接続、Webサービスを使ったファイル共有・データベース、などだな。
要は、そのキャンパス全体が必要とするサービスのことをエンタープライズサービスというわけだ。
そういわれれば、全体として使うものばっかりかな。
うむ。
さて、今回はここまでにしておこう。
はい。
次回は、キャンパスをどのような構成にするか、という話をしよう。
いぇっさ〜。
30分間ネットワーキングでした〜♪
- キャンパスネットワーク
- [Campus Network]
- VLAN
-
[Virtual LAN]
スイッチを使って、論理的にネットワークを分割する。詳しくは後述。
- ホントにそうか?
-
3 Minutes Networking No.5あたり。
甦ってます。
- 冗長構成
- STPやHSRP。後述。
- IIS
-
[Internet Information Service]
MicrosoftのWebサーバアプリケーション。
HTTP、FTPなどの統合型のアプリケーションでもある。
- ハイパーネット君の今日のポイント
-
- 複数の(サブ)ネットワークで構成される企業単位のネットワークをキャンパスネットワークという。
- キャンパスネットワークでは、トラフィックの制御と冗長構成を考える必要がある。
- ローカル内のトラフィック/ローカル外へのトラフィックの比率の問題がある。
- いままでは80/20ルールだった。
- 現在では20/80ルールである
- ルータやバックボーン、統合サーバの配置と構成が重要。