30 Minutes NetWorking
No.RT26

30Minutes NetWorking

BSCI

第26回Integrated IS-IS(4) DIS

■ 階層ルーティング

スーパーインター博士

さて、ネット君。話はちょっと戻る。
IS-ISの階層ルーティングの話だ。

ハイパーネット助手

はい。レベル0とか、レベル1とか、レベル2とかのルーティングですね。

スーパーインター博士

うむ。それぞれのルータはレベル1、レベル2、レベル1-2という役割がある。
これはそのままそのルータが持つトポロジデータベースを示す

ハイパーネット助手

え~っと。
例えばレベル1ルータは、レベル1のトポロジデータベースを持つってことですか?

スーパーインター博士

そうだ。レベル1データベースは、そのエリアとエリアの出口を定義する
つまり、レベル1ルータはそのエリア内のトポロジと他エリアへの出口を知っているということだな。

ハイパーネット助手

じゃあ、レベル2は?

スーパーインター博士

レベル2データベースは、エリア間情報を定義する
つまりドメインのバックボーンの情報しか持たない、ということだ。

ハイパーネット助手

ははぁ。でも博士。それって特に問題なんですか?

スーパーインター博士

うむ、OSPFを考えてみたまえ。OSPFルータは、ABRであれインターナルルータであれ、TSA内のルータ以外は他のエリアの情報も持つ。

ハイパーネット助手

あ~、そうでしたっけ。
TSA内のルータはLSAタイプ3以上が届かないから、他のエリアの情報を持たない。でも、それ以外のエリアのルータは持つ、でしたよね。

スーパーインター博士

そうだ。だが、IS-ISのエリア1ルータはどのエリアに存在していてもそのエリア内の情報しか持たない。これはどういうことだ?

ハイパーネット助手

エリア内の情報しか持たない。
つまり、IS-ISのエリアは全部TSAみたいなもの、ってことですか。

スーパーインター博士

そう、その利点は?

ハイパーネット助手

TSAのインターナルルータの利点?
えっと、ルーティングテーブルのサイズが小さくてすむでしたっけ?

スーパーインター博士

そういうことだ。レベル1ルータは完全にエリア内のみを把握する。他エリアはその出口となるレベル2、レベル1-2ルータに完全にまかせっきり、ということだな。

ハイパーネット助手

ははぁ。
ちなみにレベル1-2ルータはどうなるんですか?

スーパーインター博士

レベル1-2ルータは両方のデータベースをそれぞれ独立してを持つ
つまりレベル1・レベル2の2つのルータが合わさった形と解釈すればいい。

レベル1-2ルータの論理的ネットワーク構造

[FigureRT26-01:レベル1-2ルータの論理的ネットワーク構造]

スーパーインター博士

レベル1とレベル2では異なるアドバタイズを行う
同じエリア内にあるルータであっても、全く異なる行動をするのだよ。

ハイパーネット助手

完全に別物なんですね。

スーパーインター博士

そういうことだ。
ちょっと誤解を招く言い方だが、レベル1ルータはそれぞれのエリアに、レベル2ルータはバックボーンエリアに存在し、各エリア間のアドバタイズは行われない、と考えてもらえばいい。

ハイパーネット助手

ははぁ。なんかエリア1-2ルータがABRってのがわかるような。

■ DIS

スーパーインター博士

ネット君。IS-ISのエリア内のレベル1ルーティングだが。
これはOSPFのシングルエリアOSPFと似ている。

ハイパーネット助手

似ている。
どこらへんがですか?

スーパーインター博士

シングルエリアOSPFのアドバタイズは、ある一台のルータがフラッディングすることによって行われていたな。このルータは何と言う?

ハイパーネット助手

デジグネイテッドルータ。代表ルータ。DRですよね。

スーパーインター博士

うむ。それと同様の役割を持つものが、IS-ISにも存在する。
DISだ。

ハイパーネット助手

でじぐねいてっどいんたーめでぃえいとしすてむ?
Intermediate Sysytemは、IS、つまりルータだから。そのままデジグネイテッドルータのことになりませんか?

スーパーインター博士

うむ、そのままDRと同じだな。
役割も基本的には同じ。これは先のデータベース同期のところで話そう。

ハイパーネット助手

はい。

スーパーインター博士

DISに選ばれるのは、優先順位が高いルータか、MACアドレスが最大のルータだ。
DRはOSPFプライオリティ、ルータIDで選抜されるが、まぁ、似たようなものだ。

ハイパーネット助手

DISはIPアドレス(ルータID)でなく、MACアドレスで選ばれるんですね。

スーパーインター博士

うむ。ただDRと違うのは、adjacencyが異なる。

ハイパーネット助手

あじぇいせんし?
隣接関係でしたっけ。

スーパーインター博士

そうだ。OSPFの場合、DR・BDRだけと隣接関係を行う。

隣接関係・DR

[FigureRT06-02:隣接関係・DR]

スーパーインター博士

一方、IS-ISはすべてのLAN内のルータと隣接関係を結ぶ

隣接関係・DIS

[FigureRT26-02:隣接関係・DIS]

ハイパーネット助手

DISという代表ルータ、じゃない代表ISがあるのにですか?

スーパーインター博士

そうだ。

ハイパーネット助手

ええ~っと。OSPFのDRは隣接関係を減らす役割がありましたよね?
でもDISだと隣接関係を減らすことができないじゃないですか。

スーパーインター博士

できないな。
だが、これはこれでいいのだ。IS-ISとOSPFのフラッディングの差異がDISとDRの違いを生み出している。

ハイパーネット助手

フラッディングの差異?

スーパーインター博士

それはデータベースの同期のときに話す。先だ、先。
その前に違いをもう1つ。IS-ISにはBDRの役割を果たすルータは存在しない

ハイパーネット助手

ばっくあっぷでじぐねいてっどるーた。
DRがダウンしたらその役割を引き継ぐルータですよね。

スーパーインター博士

うむ。OSPFではDR・BDRとのみ隣接関係を結ぶ。
そのためDRがダウンした際は、一時的にルーティングを停止し、BDRがその役割を迅速に引き継ぎ、BDRを再選出する。

ハイパーネット助手

でした。
ルーティングの停止というタイムラグを無くすためにBDRがあるんでしたよね。

スーパーインター博士

だが、IS-ISではさきほどのフラッディングの違いの関係から、DISダウン時の一時的なルーティング停止がそれほど長い時間にならない。なんせ元から他のルータとも隣接関係を維持してるからな。

ハイパーネット助手

他のルータと隣接しているなら、DRにフラッディングをまかせっきりのOSPFみたいなことにはならないってことですか?

スーパーインター博士

そう思ってもらっていい。
なので、DISダウン時にはDIS以外のルータからDISが再選出される。

ハイパーネット助手

ははぁ。なのでBDRがいらない、と。

スーパーインター博士

そういうことだ。
なお、DISの選出はOSPF同様マルチアクセスネットワークの時に行われる。

ハイパーネット助手

OSPFもポイントツーポイントの時はDRがなかったでしたっけ。

スーパーインター博士

うむ。

ハイパーネット助手

じゃあ、フレームリレーのようなNBMAの時は?

スーパーインター博士

IS-ISではNBMAはないポイントツーポイントの集合として設定される。

ハイパーネット助手

はぁ。DISありのマルチアクセスネットワークか、DISなしのポイントツーポイントの2択ってことですか。

■ リンクステートパケット

スーパーインター博士

さて、IS-ISのルーティング情報の交換の話を始めるが。
まず、どのような情報がIS間で交換されるか説明しよう。使われるパケットはPDUと呼ばれる。

ハイパーネット助手

ぴーでぃーゆー。

スーパーインター博士

IS-ISで使われるPDUはいくつか種類がある。

LSPリンクステートパケットリンクステート情報の配布Level1 LSP
Level2 LSP
Hello PDUハローPDU隣接関係の確立と維持ESH
ISH
Level1 LAN IIH
Level2 LAN IIH
PtoP IIH
PSNPパーシャルシーケンスPDUリンクステート情報の要求・確認応答Level1 PSNP
Level2 PSNP
CSNPコンプリートシーケンスPDUリンクステート情報データベースの配布Level1 CSNP
Level2 CSNP

[TableRT26-01:PDU]

ハイパーネット助手

う? ううぅ?
LSPとHelloはなんとなくわかりますけど。PSNPCSNP

スーパーインター博士

主にDISとのデータベースの同期に使用されるPDUだ。

ハイパーネット助手

LSPとどう違うんです?

スーパーインター博士

LSPはリンク情報の通知だな。
あくまでもリンク状態の変更時などに使われるPDUだ。一方、PSNPとCSNPはその後の同期に使用される。

ハイパーネット助手

なんか、OSPFと違って変な感じですね。

スーパーインター博士

そう感じるのも無理はないな。
このPDUだが、固定長のヘッダ可変長のTLVから成る。

PDUの構造

[FigureRT26-03:PDUの構造]

ハイパーネット助手

てぃーえるぶい?

スーパーインター博士

細かく説明すると長いが、大体IS-ISヘッダとTLVには以下の値が入る。

IS-IS HeaderTLV
  • PDUタイプ・長さ
  • LSP IDとシーケンス番号
  • LSPの生存時間
  • NSAPのシステムID
  • 隣接IS
  • 隣接ES
  • 認証情報
  • IPサブネット(Integratedの場合)

[TableRT26-02:PDUのヘッダとTLV]

スーパーインター博士

IS-ISヘッダでのポイントはまず、シーケンス番号だ。

ハイパーネット助手

シーケンス番号? TCPでもありましたよね。

スーパーインター博士

うむ。IS-ISのシーケンス番号はTCPのものと違い一種のタイムスタンプの役割を持つ

ハイパーネット助手

タイムスタンプ?
それが作られた時間を示すものですよね。

スーパーインター博士

そうだ。シーケンス番号は時間ではないが、より新しいシーケンス番号を持つLSPが有効になる、ということだ。
古いシーケンス番号を持つLSPは情報が古い、ということだな。

ハイパーネット助手

ははぁ、それでタイムスタンプ、と。

スーパーインター博士

うむ。実はOSPFでもLSAにシーケンス番号がついているのだよ。
あとは、そうだな。IS-ISのLSPには有効期限が設定されている

ハイパーネット助手

LSPに有効期限?

スーパーインター博士

うむ、この有効期限が切れたLSPはデータベースから消去される。
デフォルトでは20分(1,200秒)だな。

ハイパーネット助手

消去されたらどうなるんです?
リンクが切れてしまいますよね。

スーパーインター博士

その場合は、データベースの同期が行われ、新たなLSPを要求する。

ハイパーネット助手

うぅ~ん。なんか「データベースの同期」って言葉があちらこちらででてますけど、どんなのなんです?

スーパーインター博士

うむ、ではそれは次回にしよう。
今回はここまで。

ハイパーネット助手

あらら。

スーパーインター博士

…。

ハイパーネット助手

どうしました、博士。

スーパーインター博士

今回はなんか真面目にやってしまったな、と思ってな。

ハイパーネット助手

いやまぁたまにはいいんじゃないですか?

スーパーインター博士

……、しっくりこないな。

ハイパーネット助手

はいはい。
30分間ネットワーキングでした~♪

DIS
[Designated Intermediate System]
代表中継システム。
PDU
[Protocol Data Unit]
PSNP
[Partial Sequence Number PDU]
Partialは「部分的な」「不完全な」
CSNP
[Complete Sequence Number PDU]
TLV
[Type,Length,Value]
有効期限
[Remaining Lifetime]
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • ルータのレベルによって持つデータベースが異なる。
  • ルータのレベルによってやりとりする情報が異なる。
  • OSPFのDR同様、LANにはDISが必要。
    • 優先順位が高い、MACアドレスが大きいルータがDISになる。
    • DISとは関係なく、LAN内すべてのルータは隣接関係を結ぶ。
    • BDRは存在しない。
  • LSP、Hello、PSNP、CSNPの4種類のPDUが存在する。
  • 固定長のIS-ISヘッダ、可変長のTLVからPDUはなる。

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管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp