30 Minutes NetWorking
No.RT07

30Minutes NetWorking

BSCI

第7回OSPF(3) NBMA

■ 隣接関係

スーパーインター博士

OSPFの隣接関係の復習をしておこう。

ハイパーネット助手

こんにちはパケットですね。

スーパーインター博士

うむ。何気にその名前を気に入ったようだな。
そうだ。Helloパケットを使う。

ハイパーネット助手

ネットワークのリーダであるDRとHelloを使ってお友達になって、DRにLSUを送るんですよね。

スーパーインター博士

そうだ。
受け取ったDRは、すべてのOSPFルータにLSUを送る。これを何と言った?

ハイパーネット助手

え〜っと。
フラッディングです。

スーパーインター博士

うむうむ。よろしい。

ハイパーネット助手

えへへ。

スーパーインター博士

さて、ここで問題なのは、「すべてのOSPFルータにLSUを送る」の部分だ。

ハイパーネット助手

問題? そこは問題なんですか?
バ〜ッとやってザザ〜ッとすべてのルータに送っちゃえばいいじゃないですか?

スーパーインター博士

現代の日本語教育を深く考える必要があるような表現で説明してくれるのはいいが、それはいったいどのような方法だ?

ハイパーネット助手

どのようなって。
え〜っと、こう、あの、そう、バババ〜ッと配布するわけですよ。

スーパーインター博士

「バババ〜ッ」はもういい。
…、つまりマルチキャストと言いたいんだろ?

ハイパーネット助手

あ、そうそう。
それですよ、博士。

スーパーインター博士

まったく。
ともかくだ、確かにマルチキャストですべてのOSPFルータに送るわけだが、このマルチキャストが問題なのだ。

ハイパーネット助手

マルチキャストが問題?
トラフィックが増えるから、とかそういう理由ですか?

■ NBMA

スーパーインター博士

いや、そういう問題ではない。
主にWAN技術でだが、ブロードキャストやマルチキャストが使用できないネットワークがあるのだよ。

ハイパーネット助手

ブロードキャストやマルチキャストが使用できないネットワーク?
ん〜、普通のダイヤルアップのことですか?

スーパーインター博士

普通のダイヤルアップならば、ブロードキャストやマルチキャストという言葉すらない。
ポイントツーポイント型のネットワークだから、届く相手はかならず1つで決まってるからな。

ハイパーネット助手

う〜ん、じゃあどんなネットワークなんですか?

スーパーインター博士

つまり、マルチアクセス環境でありながら、ブロードキャスト・マルチキャストが使えない。
フレームリレーや、X.25がこれに当てはまる。

ハイパーネット助手

ははぁ。

スーパーインター博士

さっぱりです、という顔だな。

ハイパーネット助手

わかります?

スーパーインター博士

うむ、ネット君はポーカーでカモにされるタイプだな。今度やろう。
フレームリレーを例とすると、フレームリレーでは論理的にはマルチアクセス環境なのだが、実際は直接接続の集合という形態をとっている。

フレームリレーNBMA

[FigureRT07-01:フレームリレーNBMA]

スーパーインター博士

よって、イーサネットのように「全員宛」「複数宛」をネットワーク上に流すことができない仕組みになっている。
どの回線に流す、というのを特定できないとデータを送れないのだよ。

ハイパーネット助手

む〜?

スーパーインター博士

例えば、Aのルータを例にとって見ると、今から流すデータは、赤の回線なのか、ピンクの回線なのか、緑の回線なのか、それぞれ特定してやらないとデータの転送ができない、ということだ。

ハイパーネット助手

一気に全員宛、ってのができないんですね。
いちいち指定しないと駄目、と。

スーパーインター博士

うむ。このように、直接マルチキャスト・ブロードキャストを送れないネットワークのことを、NBMAネットワークという。

ハイパーネット助手

えぬびーえむえー。

■ NBMAフルメッシュトポロジ

スーパーインター博士

まぁ、一口にNBMAといっても、トポロジによりいくつか違いがある。

ハイパーネット助手

トポロジにより違い?

スーパーインター博士

うむ。要約するとサブネットの全ルータと接続されるトポロジと、されないトポロジだな。

ハイパーネット助手

んん? つまり具体的には?

スーパーインター博士

フルメッシュ、パーシャルメッシュ、ハブアンドスポークだな。
つまり、こう。

NBMAトポロジ

[FigureRT07-02:NBMAトポロジ]

ハイパーネット助手

ははぁ、確かに全部と接続しているか、一部と接続しているか違いますね。

スーパーインター博士

うむ。さて、まずフルメッシュの場合だが。
この場合、すべてのルータと接続しているため、どうしてもDR・BDRが必要になる。

ハイパーネット助手

前回話していたやつですよね。隣接関係が多くなりすぎてしまうって。

スーパーインター博士

うむ。なので、DR/BDRを選出するわけだが、ネット君。DR/BDRの選出はどうやっておこなった?

ハイパーネット助手

えぇっと、Helloをマルチキャストで送って、「お友達」を……。
…マルチキャスト? NBMAってマルチキャストって使えないんじゃないんでしたっけ?

スーパーインター博士

そうだ。DR/BDRの選出にはまず、隣接ルータを探し、そこから選出と言う手順だが。
探すためのHelloが、マルチキャストが使えない。なので、ユニキャストを使うのだ。

ハイパーネット助手

ユニキャストって宛先を事前に知っておく必要がありましたよね?
あれれ? でもそれだと「お友達」を探すため「お友達」の宛先を知っておく必要があるわけで…・・・、矛盾してません?

スーパーインター博士

うむ。なのでNBMAフルメッシュではネイバーは手動で入力する必要がある。
マルチキャストによる自動検出ができないわけだからな。

ハイパーネット助手

ははぁ、なるほです。

スーパーインター博士

確かにこの方法、つまり事前にネイバーを手動入力しておけばいいのだが。
なんといっても、手動は手間がかかる。特に台数が多いと最悪だ。

ハイパーネット助手

10台越えたらもう面倒くさいですよね。

スーパーインター博士

まぁ、確かにそうだな。
なので、あたかもブロードキャストが使用できるかのように設定する方法もある。

ハイパーネット助手

へ? ブロードキャストは使えないんですよね?

スーパーインター博士

そこらへんはフレームリレーの設定次第だな。
つまり実際はフレームリレーだが、論理的にはイーサネットのようなブロードキャストが使えるネットワークとしてOSPFを使うこともできるのだ。

ハイパーネット助手

論理的にイーサネット?
でも実際はブロードキャストが使えないフレームリレー?

スーパーインター博士

そういうことだ。この場合、論理的にはブロードキャストが使えるので、DR/BDRは自動選出になる。
OSPFの設定とフレームリレー側の設定の両方が必要になる方式だ。

ハイパーネット助手

は〜。便利なのか面倒くさいのか…。

■ NBMAパーシャルメッシュトポロジ

スーパーインター博士

一方、すべてのルータと接していないパーシャルメッシュ、ハブアンドスポークトポロジだが。
この場合は、DRとBDRの選出はない

ハイパーネット助手

そうなんですか?

スーパーインター博士

フレームリレーというマルチアクセス環境下だが、実際はポイントツーポイントの集合体とみなして動作するからだな。
ポイントツーポイントだとDR/BDRはいらなかったろう?

ハイパーネット助手

そういわれればそうですね。
集合体……。

スーパーインター博士

ポイントツーポイントでは、普通にHelloが使える。
よって、ネイバーは自動検出ということになるわけだ。

ハイパーネット助手

う、う〜ん。
なんかこんがらがってきた。

スーパーインター博士

まとめよう。
まず、完全なマルチアクセス環境かどうかでDR/BDRの選出のあるなしが決まる

ハイパーネット助手

完全なマルチアクセス環境?

スーパーインター博士

つまり、イーサネットとほぼ同じ扱いができるかどうか、要はすべてのルータと接続しているかどうか、だな。
そして、ブロード(マルチ)キャストが使えるかどうかでネイバーの自動検出のあるなしが決まる。

ハイパーネット助手

ポイントツーマルチポイントはマルチキャストが使える?

スーパーインター博士

そうだ。扱いとしてはポイントツーポイントとほぼ同じだからな。
ここらへんもフレームリレーの設定が必要だがな。

ハイパーネット助手

なんとなく、わかったかな?

■ NBMAモード

スーパーインター博士

さて、実際にOSPFの設定を行う場合。NBMAでもどのトポロジかということを指定しなければならない。

ハイパーネット助手

そうですね。なんか全然違いますよね。

スーパーインター博士

この指定だが、ブロードキャストNBMAポイントツーマルチポイントポイントツーマルチポイントノンブロードキャストポイントツーポイントのどれかを指定する。

ハイパーネット助手

…どれがどれです?

スーパーインター博士

ふむ。相変わらず思考能力の低下が窺えるな。
わかるだろ?

ハイパーネット助手

わかりません

スーパーインター博士

うむ、いさぎよいのはいいが、ちょっとは考えたまえ
まぁいい。一覧表にしてみよう。

トポロジモードネットワークネイバーDR/BDR
フルメッシュブロードキャスト同一のネットワーク自動検出あり
NBMA同一のネットワーク手動設定あり
パーシャルメッシュポイントツーマルチポイントブロードキャスト同一のネットワーク自動検出なし
ノンブロードキャスト同一のネットワーク手動設定なし
ポイントツーポイント接続ごとに別のネットワーク自動設定なし

[TableRT07-01:OSPFネットワークモード]

スーパーインター博士

フルメッシュは、基本の「NBMA」と、ブロードキャストが可能な「ブロードキャスト」。

ハイパーネット助手

NBMAフルメッシュでもブロードキャストが使えるようにしたのが、「ブロードキャスト」なわけですね。

スーパーインター博士

うむ。さらに、パーシャルメッシュは、基本が「ポイントツーマルチポイント」だ。
これに、ブロードキャストが使えない「ポイントツーマルチポイントノンブロードキャスト」がある、ということだな

ハイパーネット助手

なるほど。

■ IOSでの設定

スーパーインター博士

さて、これをCiscoIOSで設定するときは、以下のように行う。

  • Router(config-if)#ip ospf network mode
スーパーインター博士

モードには以下のキーワードをいれること。

  • ブロードキャスト … broadcast
  • NBMA … non-broadcast
  • ポイントツーマルチポイント … point-to-multipoint
  • ポイントツーマルチポイント
    ノンブロードキャスト
    … point-to-multipoint non-broadcast
  • ポイントツーポイント … point-to-point
ハイパーネット助手

そのまま英語で入れればいいんですね。

スーパーインター博士

まぁ、そうだが。ハイフンを忘れるな。
そして重要なことはだ。デフォルトではNBMAモードになっている点だ。

ハイパーネット助手

ブロードキャストではないんですね。
それは要注意ですね。

スーパーインター博士

うむ。忘れるな
かつ、NBMA、ポイントツーマルチポイントノンブロードキャストではネイバーの手動入力も必ず必要だ

  • Router(config-router)#neighbor ip address
ハイパーネット助手

あれ、ルータ設定モードなんですね。モード設定はインタフェースモードだったのに。

スーパーインター博士

そうだな、なので順番的にはnetworkコマンドの後に必ず入力するのがいいだろう。
NBMAでのお約束で、network → neighborとな。

ハイパーネット助手

ははぁ。流れで覚えておくといいですね。

スーパーインター博士

うむ。
というわけで、今回はここまで。

ハイパーネット助手

了解。
30分間ネットワーキングでした〜♪

マルチアクセス
[Multiple Access]
多重アクセス。複数台が同時に同じネットワークに接続可能なネットワーク。
イーサネット、トークンリング、X.25、フレームリレーなどがこれにあたる。
フレームリレー
[Frame-Relay]
従来のX.25公衆パケット交換網や専用線接続に代わる高速データ通信方式。
ちなみにフレームリレーでもブロードキャスト・マルチキャストを可能にするオプションも存在する。詳しくは先の回で。
X.25
公衆データ網に専用線で接続しておこなうパケット交換プロトコル。
高品質なデータ転送が可能。
NBMA
[Non-Broadcast Multiple Access]
ポイントツーマルチポイント ノンブロードキャスト
[point to mulitpoint non-broadcast]
ATMのようなポイントツーポイントでもマルチキャストが使えない場合に使用する。
フレームリレーの設定
frame-relay map 〜 broadcast が必要。
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • ブロードキャスト・マルチキャストが使えないマルチアクセスネットワークをNBMAという。
  • ネイバーを手動で入力する必要がある。
  • OSPFではネットワーク環境を指定する必要がある。
    • ブロードキャストが使えないのならば、ネイバーは手動設定
    • マルチアクセス環境でないならば、DR/BDRはなし
  • ip ospf networkで指定する。デフォルトはNBMA。

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管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp