■ 隣接関係
OSPFの隣接関係の復習をしておこう。
こんにちはパケットですね。
うむ。何気にその名前を気に入ったようだな。
そうだ。Helloパケットを使う。
ネットワークのリーダであるDRとHelloを使ってお友達になって、DRにLSUを送るんですよね。
そうだ。
受け取ったDRは、すべてのOSPFルータにLSUを送る。これを何と言った?
え〜っと。
フラッディングです。
うむうむ。よろしい。
えへへ。
さて、ここで問題なのは、「すべてのOSPFルータにLSUを送る」の部分だ。
問題? そこは問題なんですか?
バ〜ッとやってザザ〜ッとすべてのルータに送っちゃえばいいじゃないですか?
現代の日本語教育を深く考える必要があるような表現で説明してくれるのはいいが、それはいったいどのような方法だ?
どのようなって。
え〜っと、こう、あの、そう、バババ〜ッと配布するわけですよ。
「バババ〜ッ」はもういい。
…、つまりマルチキャストと言いたいんだろ?
あ、そうそう。
それですよ、博士。
まったく。
ともかくだ、確かにマルチキャストですべてのOSPFルータに送るわけだが、このマルチキャストが問題なのだ。
マルチキャストが問題?
トラフィックが増えるから、とかそういう理由ですか?
■ NBMA
いや、そういう問題ではない。
主にWAN技術でだが、ブロードキャストやマルチキャストが使用できないネットワークがあるのだよ。
ブロードキャストやマルチキャストが使用できないネットワーク?
ん〜、普通のダイヤルアップのことですか?
普通のダイヤルアップならば、ブロードキャストやマルチキャストという言葉すらない。
ポイントツーポイント型のネットワークだから、届く相手はかならず1つで決まってるからな。
う〜ん、じゃあどんなネットワークなんですか?
つまり、マルチアクセス環境でありながら、ブロードキャスト・マルチキャストが使えない。
フレームリレーや、X.25がこれに当てはまる。
ははぁ。
さっぱりです、という顔だな。
わかります?
うむ、ネット君はポーカーでカモにされるタイプだな。今度やろう。
フレームリレーを例とすると、フレームリレーでは論理的にはマルチアクセス環境なのだが、実際は直接接続の集合という形態をとっている。
[FigureRT07-01:フレームリレーNBMA]
よって、イーサネットのように「全員宛」「複数宛」をネットワーク上に流すことができない仕組みになっている。
どの回線に流す、というのを特定できないとデータを送れないのだよ。
む〜?
例えば、Aのルータを例にとって見ると、今から流すデータは、赤の回線なのか、ピンクの回線なのか、緑の回線なのか、それぞれ特定してやらないとデータの転送ができない、ということだ。
一気に全員宛、ってのができないんですね。
いちいち指定しないと駄目、と。
うむ。このように、直接マルチキャスト・ブロードキャストを送れないネットワークのことを、NBMAネットワークという。
えぬびーえむえー。
■ NBMAフルメッシュトポロジ
まぁ、一口にNBMAといっても、トポロジによりいくつか違いがある。
トポロジにより違い?
うむ。要約するとサブネットの全ルータと接続されるトポロジと、されないトポロジだな。
んん? つまり具体的には?
フルメッシュ、パーシャルメッシュ、ハブアンドスポークだな。
つまり、こう。
[FigureRT07-02:NBMAトポロジ]
ははぁ、確かに全部と接続しているか、一部と接続しているか違いますね。
うむ。さて、まずフルメッシュの場合だが。
この場合、すべてのルータと接続しているため、どうしてもDR・BDRが必要になる。
前回話していたやつですよね。隣接関係が多くなりすぎてしまうって。
うむ。なので、DR/BDRを選出するわけだが、ネット君。DR/BDRの選出はどうやっておこなった?
えぇっと、Helloをマルチキャストで送って、「お友達」を……。
…マルチキャスト? NBMAってマルチキャストって使えないんじゃないんでしたっけ?
そうだ。DR/BDRの選出にはまず、隣接ルータを探し、そこから選出と言う手順だが。
探すためのHelloが、マルチキャストが使えない。なので、ユニキャストを使うのだ。
ユニキャストって宛先を事前に知っておく必要がありましたよね?
あれれ? でもそれだと「お友達」を探すため「お友達」の宛先を知っておく必要があるわけで…・・・、矛盾してません?
うむ。なのでNBMAフルメッシュではネイバーは手動で入力する必要がある。
マルチキャストによる自動検出ができないわけだからな。
ははぁ、なるほです。
確かにこの方法、つまり事前にネイバーを手動入力しておけばいいのだが。
なんといっても、手動は手間がかかる。特に台数が多いと最悪だ。
10台越えたらもう面倒くさいですよね。
まぁ、確かにそうだな。
なので、あたかもブロードキャストが使用できるかのように設定する方法もある。
へ? ブロードキャストは使えないんですよね?
そこらへんはフレームリレーの設定次第だな。
つまり実際はフレームリレーだが、論理的にはイーサネットのようなブロードキャストが使えるネットワークとしてOSPFを使うこともできるのだ。
論理的にイーサネット?
でも実際はブロードキャストが使えないフレームリレー?
そういうことだ。この場合、論理的にはブロードキャストが使えるので、DR/BDRは自動選出になる。
OSPFの設定とフレームリレー側の設定の両方が必要になる方式だ。
は〜。便利なのか面倒くさいのか…。
■ NBMAパーシャルメッシュトポロジ
一方、すべてのルータと接していないパーシャルメッシュ、ハブアンドスポークトポロジだが。
この場合は、DRとBDRの選出はない。
そうなんですか?
フレームリレーというマルチアクセス環境下だが、実際はポイントツーポイントの集合体とみなして動作するからだな。
ポイントツーポイントだとDR/BDRはいらなかったろう?
そういわれればそうですね。
集合体……。
ポイントツーポイントでは、普通にHelloが使える。
よって、ネイバーは自動検出ということになるわけだ。
う、う〜ん。
なんかこんがらがってきた。
まとめよう。
まず、完全なマルチアクセス環境かどうかでDR/BDRの選出のあるなしが決まる。
完全なマルチアクセス環境?
つまり、イーサネットとほぼ同じ扱いができるかどうか、要はすべてのルータと接続しているかどうか、だな。
そして、ブロード(マルチ)キャストが使えるかどうかでネイバーの自動検出のあるなしが決まる。
ポイントツーマルチポイントはマルチキャストが使える?
そうだ。扱いとしてはポイントツーポイントとほぼ同じだからな。
ここらへんもフレームリレーの設定が必要だがな。
なんとなく、わかったかな?
■ NBMAモード
さて、実際にOSPFの設定を行う場合。NBMAでもどのトポロジかということを指定しなければならない。
そうですね。なんか全然違いますよね。
この指定だが、ブロードキャスト、NBMA、ポイントツーマルチポイント、ポイントツーマルチポイントノンブロードキャスト、ポイントツーポイントのどれかを指定する。
…どれがどれです?
ふむ。相変わらず思考能力の低下が窺えるな。
わかるだろ?
わかりません。
うむ、いさぎよいのはいいが、ちょっとは考えたまえ。
まぁいい。一覧表にしてみよう。
トポロジ | モード | ネットワーク | ネイバー | DR/BDR | |
---|---|---|---|---|---|
フルメッシュ | ブロードキャスト | 同一のネットワーク | 自動検出 | あり | |
NBMA | 同一のネットワーク | 手動設定 | あり | ||
パーシャルメッシュ | ポイントツーマルチポイント | ブロードキャスト | 同一のネットワーク | 自動検出 | なし |
ノンブロードキャスト | 同一のネットワーク | 手動設定 | なし | ||
ポイントツーポイント | 接続ごとに別のネットワーク | 自動設定 | なし |
[TableRT07-01:OSPFネットワークモード]
フルメッシュは、基本の「NBMA」と、ブロードキャストが可能な「ブロードキャスト」。
NBMAフルメッシュでもブロードキャストが使えるようにしたのが、「ブロードキャスト」なわけですね。
うむ。さらに、パーシャルメッシュは、基本が「ポイントツーマルチポイント」だ。
これに、ブロードキャストが使えない「ポイントツーマルチポイントノンブロードキャスト」がある、ということだな
なるほど。
■ IOSでの設定
さて、これをCiscoIOSで設定するときは、以下のように行う。
- Router(config-if)#ip ospf network mode
モードには以下のキーワードをいれること。
- ブロードキャスト … broadcast
- NBMA … non-broadcast
- ポイントツーマルチポイント … point-to-multipoint
- ポイントツーマルチポイント
ノンブロードキャスト … point-to-multipoint non-broadcast - ポイントツーポイント … point-to-point
そのまま英語で入れればいいんですね。
まぁ、そうだが。ハイフンを忘れるな。
そして重要なことはだ。デフォルトではNBMAモードになっている点だ。
ブロードキャストではないんですね。
それは要注意ですね。
うむ。忘れるな。
かつ、NBMA、ポイントツーマルチポイントノンブロードキャストではネイバーの手動入力も必ず必要だ。
- Router(config-router)#neighbor ip address
あれ、ルータ設定モードなんですね。モード設定はインタフェースモードだったのに。
そうだな、なので順番的にはnetworkコマンドの後に必ず入力するのがいいだろう。
NBMAでのお約束で、network → neighborとな。
ははぁ。流れで覚えておくといいですね。
うむ。
というわけで、今回はここまで。
了解。
30分間ネットワーキングでした〜♪
- マルチアクセス
-
[Multiple Access]
多重アクセス。複数台が同時に同じネットワークに接続可能なネットワーク。
イーサネット、トークンリング、X.25、フレームリレーなどがこれにあたる。
- フレームリレー
-
[Frame-Relay]
従来のX.25公衆パケット交換網や専用線接続に代わる高速データ通信方式。
ちなみにフレームリレーでもブロードキャスト・マルチキャストを可能にするオプションも存在する。詳しくは先の回で。
- X.25
-
公衆データ網に専用線で接続しておこなうパケット交換プロトコル。
高品質なデータ転送が可能。
- NBMA
- [Non-Broadcast Multiple Access]
- ポイントツーマルチポイント ノンブロードキャスト
-
[point to mulitpoint non-broadcast]
ATMのようなポイントツーポイントでもマルチキャストが使えない場合に使用する。
- フレームリレーの設定
- frame-relay map 〜 broadcast が必要。
- ハイパーネット君の今日のポイント
-
- ブロードキャスト・マルチキャストが使えないマルチアクセスネットワークをNBMAという。
- ネイバーを手動で入力する必要がある。
- OSPFではネットワーク環境を指定する必要がある。
- ブロードキャストが使えないのならば、ネイバーは手動設定
- マルチアクセス環境でないならば、DR/BDRはなし
- ip ospf networkで指定する。デフォルトはNBMA。