蔵書一覧に戻る          索引パネルに戻る          トップメニューに戻る
我門 隆星 書評 (TX-R2932E-0001) : カラシニコフ自伝/世界一有名な銃を作った男
[書籍データ]
書籍コード: TX-R2932E-0001
著者名:ジョリー,エレナ(B)
書籍名: カラシニコフ自伝/世界一有名な銃を作った男
(VOL:0, DUP:0, A)
(再読中・再読前書評:)「自伝」であるにもかかわらず著者名が「カラシニコフ,ミハイル・チモフェヴィチ」とならないのは、パリ生まれのジャーナリストが本人にインタビューした内容を「聞き書き」したからである。
原題は『ラファールの中のわが人生』とでもなろうか。
ラファールは「嵐」「一斉射撃」などと訳せる。
ソ連共産革命によって富農としてシベリア送りにされ、脱走し、たたき上げの軍曹として「とくに工学部などの学歴もなく」銃の改造案を提示、史上名高い「AK47」突撃銃を発明してなおも激動のロシア国内情勢に巻き込まれていく様子は、「ラファールの中の人生」と題するにふさわしい。
訳者は彼の人生の中に、「銃の設計一筋に生きてきた」「ひたむきさに裏打ちされ」た「アーティスト」を見出している。しかし、それだけでは不充分というもの。
彼の周囲には人材が溢れている。AK47の制作にはチームワークの勝利、プロジェクト大成功といったエピソードが多いに満ちている。のみならず、多くの失敗も自ら告白している。
そして、その失敗にめげそうになった彼を叱咤激励する上司もいたのである。
「君のやっていることはそんなに簡単にできることじゃない。だからきっとここであきらめたほうが楽だと思っているのだろう。だが考えてみろ。ここに残ることで(略)一斉に使用されるような強力な銃を発明することができるかもしれないのだぞ。(略)君には(略)研究を続けてほしい」
なんと理想的な上司であることか!
さらに彼は、自らを敵視・侮蔑する上役をいつの間にか、ひたむきに数回、自身の味方に変身させている。

本書をミリタリーオタク向けの伝記と解してはならない。人材をどのように引きつけていくか、「戦国武将に経営ノウハウ・リーダーシップを学ぼうとする」輩には、まず本書を読んでほしい。
上司に向かって「あいつ(とんでもない出来ない君)には褒めるところがない」と嘆く数多の中間管理職どもには、本書を読み、自らの不明を恥じてほしい。
本書には、「プロジェクト×」を超えるぐらいの、プロジェクト成功の鍵が隠されていると思うからである。 
蔵書一覧に戻る          索引パネルに戻る          トップメニューに戻る